APDahlen Applications Engineer
このDigiKeyのワークベンチデモは、マイクロコントローラと産業用オートメーションを橋渡しするものです。本稿では、MicrochipのPICマイクロコントローラとTexas Instrumentsの XTR116 を使用したSPI制御の4-20mA電流ループを紹介します。また、本稿ではMIKROE 4-20 mA Clickボードのリファレンスデザインを解析します。この解析により、各部品が選定された理由が明らかになり、採用されている技術を評価したうえで、回路の必要な部分を次回設計するPCBへ直接取り込めるようになります。図1に、電源、プロセスメータ、PIC Curiosity開発プラットフォーム、および複数の4-20 mA Clickボードを含むワークベンチデモを示します。
主な要点
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マイクロコントローラは、絶縁された信号チェーン(MCU → デジタルアイソレータ → DAC → XTR116 トランスミッタ → ループ出力)を介してSPIデータを送信することで、産業用4-20mAループを駆動できます。
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MIKROE 4-20mA Clickボードは、単なるプラグインモジュールではなく、コンパクトなリファレンスデザインとして捉えるべきです。このボードは、絶縁、デジタル/アナログ変換、ループ電流変調、サージ保護、および極性保護を実現する方法を示しています。
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Fluke 789を使用したベンチテストでは、ループ電流は約±0.02mA以内の安定性を示すとともに、温度変化に起因するわずかなドリフトも確認できました。
この記事は、DigiKey Field Guide for Industrial Automationの一部です。
分類: Understand It → Industrializing Microcontroller-Based Designs
難易度:
Engineer — 難易度レベルの説明
著者: Aaron Dahlen | MSEE | Senior Applications Engineer, DigiKey
最終更新日: 2026年5月28日
図1: プロセスメータを使用して、マイクロコントローラベースの4-20mA電流ループの性能を検証しています。
前提となる記事
本稿は、XTR116 を用いたワークベンチデモを中心に詳しく解説した、アナログ4-20mAトランスミッタの記事の続編です。前回の記事では、XTR116 に関するいくつかの重要な事項を取り上げていますが、それらについては本稿では扱いません。
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電流ループ出力とセンサ/信号処理側との間にはガルバニック絶縁がありません。これは XTR116 の欠点ではありません。このクラスのほとんどの製品は、センサ側回路が電気的にフローティングするよう設計されています。実際にはこの構成には利点があり、Analog Devicesの ADuM1411 4チャンネルデジタルアイソレータについて検討する機会を与えてくれます。
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XTR116 は複数の回路機能を集約しています。4-20mAループ処理に加え、高精度電圧リファレンスと5V DCレギュレータも内蔵しています。これらはどちらもMIKROE Clickボードで使用されています。これらの電圧は、12ビットDACおよび4チャンネルアイソレータの出力側に不可欠です。
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多くの製品と同様に、XTR116 には外付けのパストランジスタが必要です。これは、電流ループがリニアアンプとして動作し、かなりの電力を消費するためです。最悪条件では、40V DCという非常に高い電源電圧で20mAを出力すると、0.8Wを超える電力を消費する可能性があります。前回の記事では、この用途に BD139 、あるいは TIP41 でも適切な選択肢であると提案しました。
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4-20mA出力には、コンデンサおよびTVSによるサージ保護が必要です。
ワークベンチの構成
図1に、以下の機器で構成したシンプルなワークベンチを示します。
- MicrochipのCuriosity MIKROボード
- PIC16F13145 マイクロコントローラ
- B&K PrecisionのDC電源
- Fluke 789プロセスメータ
PICは、5秒ごとにループ電流を0.1mAずつ増加させるようにプログラムしました。
ワークベンチでの結果
測定された電流は±0.02mA以内に収まりました。しかし、この測定系は十分に高い精度を備えているため、XTR116 に対する温度変化の影響も確認できます。XTR116 に指で触れるだけで、0.001mA程度のわずかな変動が生じました。温度が上昇すると、Flukeプロセスメータで測定したシステムの誤差がほぼゼロに近づくことが確認できたのは、大変興味深い結果でした。さらに大きな温度変化を与えるには、フリーズスプレーを使用するか、逆さにしたスプレー缶から液化した冷媒を数滴吹き付ける方法があります。
技術的なヒント: 誤差がほぼゼロになったことは喜ばしいことです。しかし、北極圏のような寒冷環境から蒸気配管の近くのような高温環境まで温度変化が大きい産業環境では、これはそれほど重要ではありません。設計者としては、XTR116 の電圧リファレンスが持つ温度係数を受け入れるか、あるいはより高性能なデバイスを採用するかのいずれかを選択することになります。
MIKROE Clickボードの信号経路
MIKROEボードの信号の流れは次のとおりです。必ず公式回路図を参照してください。
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Analog Devicesの ADuM1411:4チャンネルデジタルアイソレータであり、マイクロコントローラと産業用電流ループとの間にガルバニック絶縁を提供します。このうち3つのアイソレータは、CS_NOT、SCK、およびMOSIを含むSPI信号に使用されています。
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Microchipの MCP4921:12ビットDACであり、SPI信号をアナログ電圧に変換します。フルスケールの電圧は、XTR116 の電圧リファレンスによって決定される4.096V DCです。
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Texas Instrumentsの XTR116:4ー20mA電流ループトランスミッタです。これは入力電圧を受け取り、ループ電流を変調するリニアデバイスです。ここで「供給する」ではなく「変調する」と表現している点にご注意ください。これは、前提となる記事で説明したように、このトランスミッタ自体はループ電流を供給するものではありません。
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ループインターフェースおよび保護回路には、パストランジスタ、サプレッションコンデンサ、TVS、フルブリッジ整流器が含まれます。
SPI信号の絶縁
Analog Devicesの ADuM1411 は、空芯トランス技術に基づく4チャンネルのデジタルアイソレータです。kVレベルの絶縁性能を備えながら、Mbpsレベルの信号伝送を可能にします。図2では、3つのチャンネルが左から右へデータを伝送し、1つのチャンネルが右から左へデータを伝送していることが確認できます。これはSPI信号に適した構成です。マイクロコントローラからデバイスへ流れる信号は3つ(CS_NOT、SCK、MOSI)あります。また、デバイスからマイクロコントローラへ流れるMISO信号は1つです。なお、このアプリケーションではMISO接続は使用されていません。Clickボードの回路図を見ると、Vi_Dがグランドに接続されていることがわかります。
光結合は、高感度なロジック回路を過酷な産業環境から隔離するためによく用いられます。しかし、ここでは独自の技術が採用されています。その理由を理解するために、Analog Devicesのデータシートを参照してみましょう。そこには、高速データ転送、部品点数の削減、および低消費電力という点から、この技術が採用されている理由が説明されています。
ADuM1411 には、ガルバニック絶縁された2系統の電源が必要である点にご注意ください。マイクロコントローラ側にはVDD1とGND1があり、産業用ループ側にはVDD2とGND2があります。
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マイクロコントローラ側ドメインの電源は、マイクロコントローラの電源から直接供給されます。
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このアプリケーションでは、電流ループ側ドメインへの電源は、XTR116 の5V DC出力から供給されます。DACもこの電源から供給されます。
分かりやすく言えば、DACと XTR116 は、ADuM1411 による絶縁によって、マイクロコントローラに対してフローティングしています。これらのドメインは、決して電気的に接続してはいけません。そうしないと絶縁が破られ、その結果、高感度なマイクロコントローラが過酷な産業環境にさらされてしまいます。
図2: 各セクション間にトランス結合を備えた、Analog Devicesの ADuM1411 のブロック図です。
4.096V DC基準電圧によるDACの精度
Microchipの MCP4921 は、汎用性の高い1チャンネル12ビットDACです。SPI入力を備え、アナログ出力は0V DCから6番ピンに印加された基準電圧までの範囲で動作します。
前提となる記事では、XTR116 トランスミッタには、多くの回路が集積化されているため、多くの必要部品を省略できると述べました。これには、5V DCレギュレータと4.096V DCの高精度基準電源の両方が含まれます。この集積化の利点は、XTR116 の2つの出力を両方とも利用する DAC MCP4921 への接続によって、うまく実証されています。
なお、4.096 V DCは12ビットDACと非常に相性のよい基準電圧であることに注目してください。2のべき乗に対応したこの基準電圧では、1カウントが公称1mVに相当します。そのため、例えば XTR116 の電流出力を4mAに設定する場合、マイクロコントローラでは800という扱いやすい整数値で設定できます。
デモ用コード
Microchipの MCP4921 DAC用のヘルパー関数は、リスト1に記載されています。これは、浮動小数点数の使用を避けた、シンプルなMicrochip PICコードです。その代わり、ループ電流の値は「current_tenths_mA」変数に格納されています。「12.0」のような浮動小数点値の代わりに、整数の「120」が表示されています。SPI信号のオシロスコープのスクリーンショットを図3に示します。関連記事では、DigilentのAnalog DiscoveryとClickボードの接続方法について説明しています。
void MCP4921_Write(uint16_t dac_value)
{
uint8_t SPIBufferData[MCP4921_SPI_BUFFER_SIZE];
uint16_t command;
dac_value &= 0x0FFF; // Keep only 12 bits
command = 0x3000 | dac_value; // 1x gain, active output
SPIBufferData[0] = (uint8_t)(command >> 8);
SPIBufferData[1] = (uint8_t)(command & 0xFF);
CS_NOT_SetLow();
SPI1_BufferExchange(SPIBufferData, MCP4921_SPI_BUFFER_SIZE);
CS_NOT_SetHigh();
}
void C420MAT_SetCurrentTenths_mA(uint16_t current_tenths_mA)
{
uint16_t dac_value;
/* 4.0 mA -> current_tenths_mA = 40 -> DAC = 800
* 20.0 mA -> current_tenths_mA = 200 -> DAC = 4000
*/
dac_value = 20 * current_tenths_mA;
if (dac_value >= 800 && dac_value <= 4095) // FIXME: Add error handling code as opposed to silently holding the last known value.
{
MCP4921_Write(dac_value);
}
}
リスト1: Microchipの MCP4921 との通信に使用される関数です。
図3: SPI信号のオシロスコープ画面のキャプチャです。
次のステップ
産業用制御システムは、堅牢なマイクロコントローラベースの設計を探求するための格好の実験環境を提供します。検討すべき観点としては、回路の機能と、高感度なマイクロコントローラを保護するために用いられる絶縁手法の2つがあります。本記事では、XTR116 の高度に最適化された設計に加え、ADuM1411 が実現する絶縁機能についてもご紹介しました。
まずは、他のコンパクトなリファレンスデザインを検討してみてください。一例として、 MAX14912EVKIT# をご検討ください。一見、単純な8チャンネルリレードライバのように見えますが、予想外のアクティブクランプ回路が搭載されており、皆さんの眠っていた半導体理論の知識を呼び覚ましてくれることでしょう。
産業用制御システムの詳細
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著者について
Aaron Dahlen氏、元米国沿岸警備隊(USCG)少佐(LCDR)は、シーフリバーフォールズにあるDigiKeyのシニアアプリケーションエンジニアを務めています。エレクトロニクスおよび産業オートメーションに関する彼の知識と経験は、技術者およびエンジニアとして従事した27年間の軍歴と、その後10年以上にわたる教育経験を通じて培われました。
Dahlen氏は、ミネソタ州立大学マンケート校で電気工学修士号(MSEE)を取得しています。また、ABET認定を受けた電気工学プログラムで教鞭を執ったほか、電子工学技術プログラムのコーディネーターを務め、軍の技術者に対して部品レベルの修理技術を指導してきました。
現在は、ミネソタ州北部の故郷へ戻り、コンデンサ探しから始まった数十年にわたる旅を終えました。彼の物語はこちらからお読みください。


