エレクトロニクスの分野では「LSB」(最下位ビット)という用語を何度も耳にしたことがあるでしょう。これはADCやDACのVref(基準電圧)またはフルスケール(FS) のどちらかに関連して扱われることが多く、読者に混乱を招くことがあります。
そのため、本記事は「LSB」の定義を理解するのに役立つでしょう。
ADC(A/Dコンバータ)が電圧をデジタル形式に変換する際、1つのデジタルコードは電圧範囲で構成されます。この電圧範囲が1つのコードに相当し、LSB、または最下位ビットと呼ばれます。
LSBとは、ADCが変換可能な最小レベル(ADCが検出可能な最小電圧増分)またはDACが出力可能な最小増分を指します。
ADCはアナログ信号をデジタル信号に変換するために電圧基準を必要とします。そのビット数に応じて、電圧基準を小さなカウント単位に分割します。
例:
これが8ビットADCの場合、カウント値は1、2、3、・・・256までとなります。

1カウントは1LSBに相当し、次のように定義されます。
LSB = Vref / 2^N
ここで、
- Nはビット数です。
フルスケール(FS) は以下の式を用いて計算されます。
- FS = Vref - 1 × LSB、または
- FS = Vref × ((2^N - 1) / 2^N)
例:16ビットA/Dコンバータを使用し、-5Vから+5Vの入力範囲における最下位ビット(LSB)を算出してください。
FS範囲 = 10ボルト(-5V ~ +5V)、
16ビット分解能 = 65,536ビット
LSB = 10/65536 = 0.0001525ボルト/ビット(153 µVolts/bit)
LSB単位で測定されたADC変換誤差
ADCにおいては、変換誤差はしばしばLSB(最下位ビット) を用いて表されます。
ADCに±2 LSBの誤差がある場合、内部の精度不足によりデジタル出力が理想値から最大2カウントまでずれる可能性があります。
例えば、 8ビットのA/Dコンバータが0.0Vから5.0Vの変換範囲を持ち、変換誤差が±2 LSBである場合、2.5V入力のAD変換範囲は、
LSB = 5v/ 256 = 0.0195V
2.5V入力時の理想的なデジタル値 (A/Dコンバータに誤差がない場合)= デジタル値 = Vin/ LSB
2.5/ 0.0195 =128 ⇒ 0x80 (hex)
誤差が±2 LSBの場合、出力は次のいずれかとなります。
128−2 = 126 ⇒ 0x7E
128+2 = 130 ⇒ 0x82
したがって、ADCは2.5Vの入力に対して理想値が0x80であるにもかかわらず、0x7Eから0x82の範囲を出力する場合があります。