Kinetis Motor Suiteの入門ガイド

Derek Lehmann(記)、最終校正2017年6月24日

はじめに

NXPは、組み込みエンジニアやソフトウェアエンジニアが、モータ制御の専門家でなくても、モータを使ったアプリケーションに取り組めるように開発されたツール、Kinetis Motor Suite(KMS)を開発しました。KMSは、モータのパラメータやモーションシーケンスを素早く簡単に変更できるGUI環境です。モータアプリケーションやコーディングの経験は必要なく、KMS、NXPハードウェア、またはNXPソフトウェアの今までの使用経験も想定していません。

ハードウェア

KMSを使用するためのセットアップには、3つのオプションがあります。最も一般的なのはFreedomパッケージですが、タワーボードと高電圧開発プラットフォームも用意されています。

FRDM-KV31F-ND – MCU、 ARM Cortex M4 開発ボード

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FRDM-MC-LVPMSM-ND – 低電圧、3相モータ制御シールド

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FRDM-MC-LVMTR-ND – 24VブラシレスDCモータ(BLDC)、Linix 45ZWN24-40

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他のハードウェアオプション

TWR-KV31F120M-ND - タワーMCU

TWR-MC-LV3PH-ND - タワーモータコントローラキット

HVP-KV31F120M-ND - 高電圧MCU

HVP-MC3PH-ND - MCU内蔵高電圧モータコントローラ

入門ガイド

NXP’s Getting Started Guide to KMS

リンク先は、NXPのKV31FとBLDCを使ったKMSの入門ガイドです。一連のビデオを見るか、説明書を読むかを選択でき、ボードとモータのハードウェアセットアップ、KMSのインストール、初期接続、モータの速度制御の設定が網羅されています。NXPが提供する「Getting Started Guide」自体が優れたガイドですので、各セクションに関するちょっとした補足を以下に記しました。

Plug It In! ノート

    • ハートビート – RGB LED
      • 青/緑の点滅 - 正常
      • 赤/紫の点滅 - 故障
        • Motor Control Shieldには、DC24V入力用の5.5mm x 2.1mmの電源コネクタがあります。電圧範囲は18~30VDCです。この範囲を外れると、故障のフラグが立ちます。その他、モータの停止、モータの速度超過、過電流など、さまざまな故障が考えられます。

ソフトウェアの入手

    • 警告 – KV31Fは、工場出荷時にKMS専用の実行専用コードを搭載しています。このコードは一括消去が可能ですが、それを防ぐための保護が施されています。一括消去してしまうと、KMSはコントローラに接続できなくなります。

速度制御

    • モータの特性評価を行うときは、モータがいつベアシャフトであるか、またはシステムに接続されているかに注意してください。そうすることで、より正確なモータ特性を得ることができます。システムの慣性が増加した場合(例:車輪の取り付け)、モータの制御方法が変わり、最適なパフォーマンスを得るためにモータを再チューニングする必要があります。

特長

モータチューナ

Motor Tunerは、モータを立ち上げるための基本的な手順をガイドします。

モータマネージャ

Motor Managerは、Motor Tunerの機能の上位セットで、より多くの設定オプションを提供します。より多くのパラメータを変更することで、アプリケーションに特化したモータの動作を実現することができます。

リアルタイムデバッギング

内蔵のソフトウェアオシロスコープにより、内部変数のデータを可視化して保存することができ、アプリケーションエンジニアはアプリケーションを最適化するために、構成の検証や比較を行うことが可能です。

モーションシーケンスビルダ

モータの特定とチューニングを行った後、Motion Sequence Builderを使用して、グラフィカルな環境からアプリケーションのモーションシーケンスのコードを生成します。

アクティブディスターバンスリジェクションコントロール(ADRC)

KMSは、ADRC(Active Disturbance Rejection Control)制御方式を採用しています。PIやPIDのように複数の調整パラメータを持つのではなく、ADRCでは調整パラメータは1つしかありません。ADRC制御は、PI制御よりもオーバーシュートやラグが少なく、よりタイトな応答が得られるため、シングルパラメータチューニングが容易です。ADRCのもう1つの利点は、1つの速度や負荷に対してのみ最適なチューニングが可能なPIコントローラとは異なり、モータが動作し得る速度や負荷の可変範囲全体に渡ってうまく機能することです。

KMSおよびKinetis Design Studio

この記事を書いている時点では、KMSはKinetis Design Studio(KDS)でのみ動作するように設計されています。独自のアプリケーションを作成する最善の方法は、まず、Kinetis Motor Suiteのモータチューニング設定を行い、モータをチューニングすることです。次に、プロジェクトを保存したディレクトリに移動します。SDK(ソフトウェア開発キット)をKDSにインポートしてください。モータ制御プログラムを中心に、アプリケーションを編集・構築することができます。アプリケーションを変更してもKMSを使用してモータを調整可能にするためには、KMSの「load application image(アプリケーションイメージをロードする)」ツールを使用してボードをプログラムする必要があります。これにより、加速度、ジャーク(加加速度)、慣性などのモータ設定をKMSのGUIで簡単に変更することができるようになります。

KMS SDKを編集する際に注意すべき点は、RTOS(Real Time Operating System)を搭載していることです。すでに多くのクラスやタスクが設定されているので、それを活用すると便利かもしれません。機能をブロックしたり、割り込みを無効にしたりしないように注意してください。モータ制御システムの動作に影響を及ぼします。

その他のガイドと追加ドキュメント

KMSユーザーガイド - KMSUG.pdf(4.9 MB)- NXPが提供する、ダウンロード可能なKMSの包括的なユーザーマニュアル

Digi-KeyのKMS入門ガイド - Digi-Keyによるもう1つの入門ガイド

Adapting KMS for Custom Hardware - KMSを自分のプロジェクトで使用する際に役立ちます

Kinetis Motor Suite Lab Guide - MSをより使いこなすための追加のヒントとツール

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