ダイオードベースRFスイッチの動作:PINダイオードのデモ

APDahlen Applications Engineer

ダイオードは、RF周波数のスイッチとして使用することができます。この記事では、一般的な1N4148ダイオードを使用して、そのコンセプトを探ります。これにより、スイッチ回路の動作と限界をよりよく理解することができます。最後に、スイッチング動作のために特別に設計されたPINダイオードをご紹介します。

技術的なヒント: 1N4148は汎用ダイオードで、真のPINダイオードの便利な代用品です。DigiKeyの汎用PINダイオードのリストをぜひご覧ください。

まず、ダイオードの内部構造とバイアス関係の復習から始めましょう。順方向バイアスのダイオードでは電流が自由に流れることを思い出してください。これは図1では単純化してPN接合として表されています。ダイオードが逆方向バイアスになると、PN接合のPとNの間に絶縁物質領域が形成され、電流の流れが妨げられます。

Picture showing the insulation region formed in a reverse biased diode.

図1: 逆方向バイアスダイオードに形成される絶縁領域を示す図

ダイオードの動作は、区分定義を使って考えるのが便利です。

  • 順方向バイアスダイオードは低抵抗として働く

  • 逆方向バイアスダイオードはコンデンサとして働く

コンデンサは、誘電体で隔てられた2つの導体で構成されていることを思い出してください。この定義はP層、I層、およびN層に適用され、絶縁性の空乏層が導電性のP層とN層で挟まれています。静電容量値は、印加される逆方向バイアスによって非線形に変化します。また、接合サイズや空乏層のドーピングの関数としても変化します。一般的に、静電容量はpFのレンジで、抵抗は1Ωのレンジです。

1N4148を用いた実験

一般的な1N4148汎用ダイオードを用いた実験を行うことで、RFスイッチの動作をより理解することができます。図2は、MultiSim Liveによるシミュレーションです。画像をクリックすると、Multisim Liveのオンラインツールで回路を操作できます。しかしそのサービスに加入しない限り、回路の操作はできますが、回路を変更することはできません。

回路の中心は、抵抗R1、R2、ダイオードD1、およびDG1から供給される電圧源によって形成されます。ここでDG1は、1N4148に順方向バイアスをかけるために100V DCを供給し、また逆方向バイアスをかけるために-75V DCを供給します。R1とR2は、電源電圧をダイオードに供給し、PIN構造の絶縁部を拡大または縮小させます。コンデンサC1とC2が、それぞれダイオードをソースと負荷に容量結合していることに注意してください。これらのコンデンサにより、中心部に印加されるDC電圧はすべて無視されます。また、R1とR2は、適用されるRF周波数に適したインダクタに置き換えることができることに注意してください。

Schematic showing a series connected RF switch featuring a 1N4148 general purpose diode.

図2: 1N4148汎用ダイオードを用いた直列接続RFスイッチ

順方向バイアスの100Vが回路に印加されると、ダイオードの絶縁層が消滅し、約5mAの静止電流が流れます。ダイオードは、C1ノードとC2ノードを効果的に接続する閉じたスイッチのように機能します。この例では、ダイオードの抵抗は大変小さくなるため、この回路は挿入損失が小さいと言えます。

DG1がトグルされると、-75V DCの逆方向バイアス電圧がダイオードに印加されます。PIN構造の絶縁層が拡大し、ダイオードがコンデンサとして機能します。この例では、出力は994mVから2.6mVに低下します。このシミュレーションでは、次式で計算されるように非常に甘く見て51dBの差があることを示しています。

dB_{isolation} = 20log(\dfrac{994}{2.6}) \approx 51

これは十分に評価できますが、理想的とは言えません。出力はシミュレータのオシロスコープで見ることができます。この数字は、大声での会話とささやき声の違いのようなものです。このスイッチでは不完全で、入力信号が出力に漏れてしまいます。

回路の改良

回路の性能向上を試みる前に、逆方向バイアスが静電容量に与える影響を認識することが重要です。図3は、逆方向バイアスを変化させたときの出力電圧のシミュレーション結果です。図3の結果は、図4としてここに示した1N4148のデータシートと密接に関連しています。静電容量は、逆方向バイアス電圧の増加に伴って非線形に減少します。これは、逆方向バイアス電圧が小さいほど容量の変化が大きい非線形プロセスであることを確認してください。

図3: 逆方向バイアスの関数としての回路の出力電圧

1N4148ダイオードの場合、安全な動作条件を考慮すると、-75V DCがちょうどいいようです。データシートによれば、その設定値は、デバイスの絶対最大定格である100V DCの75%です。

Chart showing the N4148 diode's capacitance as a function of reverse bias.

図4: 1N4148ダイオードの静電容量を逆方向バイアスの関数として示すグラフ
1N4x48 - Small Signal Diode (onsemi.com)

ダイオードを直列に追加すれば、状況を改善できます。しかし、逆電圧が均等に分配されない可能性があるため、これは理想的とは言えません。複数のダイオード接合部の電圧をバランスさせる方法は、入力信号の出力への漏れを助長するだけです。

技術的なヒント: 逆方向バイアス電圧は、真のPINダイオードにとって重要な仕様です。500V DCを超える逆方向バイアス電圧仕様のダイオードを見つけることは珍しいことではありません。しかし、非線形応答に暗示されているように、高電圧で静電容量を小さくすることには、回路の複雑さは言うに及ばず、効果が逓減する点があります。

その他の方法としては、複合回路を使用する方法があります。この例では、単純な直列接続のダイオードを減衰器として使用しました。複合回路には、この直列減衰器と、出力電圧をさらに下げるための並列シャントがあります。

最後の推奨は、RFアプリケーション用に特別に設計されたPINダイオードを選択することです。これらのダイオードは、与えられた逆電圧に対してより大きな応答(より小さい静電容量)が得られるように設計されています。周波数がGHz帯にまで拡張されたハイパワーに対応するオプションも用意されています。PINダイオードに関する詳細な情報は、この記事の最後にあるリンクで見つけることができます。

よろしくお願いします。

APDahlen

P.S. PINダイオードについての詳細は、こちらをご参照ください。




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