ベンチトップ電源のグランド接続


APDahlen Applications Engineer

お使いのベンチトップ電源には、図1に示す B&K Precision 1550 電源のような緑色のグランド(アース)端子がありますか?

仮にグランド端子があるとして、いつ、どのように接続すればよいのでしょうか?例えば、図2は、電源と一緒によく販売されているジャンパ金具で接続可能な3つの場合について示しています。緑のグランド端子を赤の出力端子に接続した場合、電源は破損しないの でしょうか?グランド端子が未接続のままだと安全性に問題はないのでしょうか?

これらの疑問をよりよく理解するために、電源を開けて、アース線に関連する内部接続を調べます。その答えは、すべてのAC電源を理解し、安全に関する知識を向上させるでしょう。

図1: フロントパネル接続に重点を置いたB&K Precisionの1550単一出力電源の写真


図2: 電源グランド接続について3つの接続方法を示す図

電源に関する安全アース

まず明らかなことから始めましょう。接地とボンディングの詳細については、この記事では触れません。最新の規格については、UL(Underwriters Laboratories)やNEC(National Electrical Code)などの権威ある機関を参照してください。

とはいえ、B&K 1550を調べることで、いくつかのガイドラインを発見することができます。まず、おそらく最も重要なのは、露出した金属シャーシがアースされていることです。これは図3の左側のパネルにはっきりと示されています。ここには、IEC電源コネクタの背面が見えます。グランド接続(黄色のワイヤ)はシャーシにボルトで固定されています。端子ラグには、ワイヤラグとシャーシ間の低抵抗での接続を確実にするため、外歯菊座金が含まれています。

図3: シャーシにボルトで固定された入力のアース(左)とシャーシにスポット溶接されたフロントパネルのアース(右)の写真

技術的なヒント: 理想的な動作条件下では、安全アースには電流が流れません。しかし、機器や壁内配線が故障した場合、安全アースはACライン電流をフルに流さなければなりません。露出した金属シャーシのようなものに対するこの低抵抗は、ユーザーを保護します。低抵抗は、メインの回路ブレーカをトリップさせる大電流を供給するためにも必要です。ワイヤの抵抗が高いと、火災の可能性のある故障電流が継続することになり、特に危険です。

フロントパネルのグランド端子の接続は、図3の右側の写真に示されています。緑のストライプが入った黄色いワイヤがシャーシから小さな回路基板につながり、フロントパネルのバナナジャックに接続されています。ワイヤの端子ラグが金属シャーシにスポット溶接されているのが分かります。反対側はPCBにはんだ付けされています。

電源の絶縁

最初の質問に答える前に、図4を見てください。これは電源の1次回路基板です。これはスイッチング電源(SMPS:switch-mode power supply)です。60Hzの大型トランスの代わりに高周波トランスを搭載しています。その結果、従来のトランスによる構成よりも小型で軽量になっています。

この写真で重要なのは、赤い境界線です。これは、回路のACライン入力(上)と安定化DCセクション(下)の境界を示しています。トランス、フォトカプラ、および安全定格コンデンサなど、この境界線をまたぐものはわずかです。これは直接的に接続されていないため、良好な絶縁対策となっています。

この入力セクションと出力セクションの絶縁は、冒頭の質問の中心です。

図4: 入力セクションと出力セクション間の境界線が強調表示されているB&K Precisionの1550電源の1次回路基板

フローティング電源出力

適切な絶縁がなされていれば、電源のDCセクションはフローティングになります。理想的には、プラス端子とマイナス端子の間に内在する接続がないバッテリのように動作します。バッ テリのように、フローティング電源を他の電源に自由に接続することができます。例えば、36V DCのB&K 1550電源を2つスタック(直列接続)して、72V DCを得ることができます。

安全性 フローティング電源はすべての電流経路を排除するものではありません。高インピーダンスによるリーク電流が予想されます。実例として、私の古いノートパソコンを考えてみましょう。そのパソコンはリーク電流が非常に大きくて、裸足で充電しているときは、パソコンを使うことができませんでした。リーク電流を足の指で感じることができるからです!もしリーク電流を感じるなら、それはMOSFETやマイクロコントローラなど、保護されていない金属酸化膜半導体(MOS)デバイスのゲートを突き破って破壊するのに十分な高電流であることは間違いありません。もちろん、リーク電流を感じる場合は、何か深刻な問題が発生しており、早急な対処が必要です。

技術的なヒント: 電源の出力はフローティングですが、限界があります。例えば、1550電源が4つあったとしましょう。理論的には、1番下の電源のグランドをアースし、電源を直列接続することができます。これは、36V DCのバッテリを4つずつ重ねて、合計144V DCを供給するようなものです。実際には、電気的絶縁には限界があるため、十分に注意する必要があります。電源の最大連続DCオフセットについては、必ずデータシートで確認するかまたはメーカーに問い合わせてください。この例では、4台を直列接続した場合、上部電源のオフセットは108V DCです。

安全性 直列に接続される電源の数が増えれば増えるほど、安全上の危険があります。第1に、感電する恐れがある高電圧のOSHA(Occupational Safety and Health Administration:米国労働安全衛生局)の規制値を超えてしまいます。第2に、自己満足に陥り、電源の一部を切り忘れる可能性があるため、人為的な限界が生じます。ここでも感電の危険があります。あなたやあなたの周りで働く人々は、小型の電源ユニットを多数使用するのではなく、大型の電源ユニットを1台使用した方が安全かもしれません。

おわりに

あらゆることを考慮すると、例えば、緑色の端子(GND端子)を黒色の端子(マイナス端子)に接続するなど、安全アースにジャンパをしっかりと接続するのが最善の方法です。これは、電源をファンクションジェネレータやオシロスコープなどの外部テスト機器に接続する際に、より重要になるかもしれません。オシロスコープのプローブのアースラグがアースグランドに接続されていることに注意してください。高インピーダンスのリーク電流に対する注意は、MOS周辺で作業する際に非常に重要かもしれません。アースされていない電源を操作した結果は、適切にアースされていない作業台やアースストラップなしで回路を操作したのと同じかもしれません。唯一の違いはグランドループですが、それはまた別の日に議論しましょう。

ご健闘をお祈りします。

APDahlen

追伸:フローティング電源の応用例については、こちらの新しい記事をご覧ください。

https://forum.digikey.com/t/4060-url/40011




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