APDahlen Applications Engineer
DC制御リレーやコンタクタにパルス幅変調(PWM)駆動を使用することにより、エネルギーを節約することができます。リレーで消費されるエネルギーは、この簡単な技術で容易に半分にすることができます。 この記事では、リレーについて簡単に紹介した後、図1に示すようにArduino Nano Everyなどのマイクロコントローラを使用してPWM駆動信号を実装する方法を説明します。
図1: 写真はマイクロコントローラArduino Nano Every、MOSFETドライバ、およびリレー。
後方はDigilentのAnalog Discovery
リレー理論の復習
リレーは電気機械装置であることを思い出してください。大きな電磁石が特徴で、磁界を発生させてアーマチュア(可動鉄片)を動かし、アーマチュアが個々の接点を動かします。このワイヤコイルは、電源オフ時の誘導起電力など、関連するすべての特性を備えたインダクタです。また、RL時定数によっても制御されます。ここで、RL時定数は次式で示されます。
\tau = \dfrac{L}{R}
この時定数はリレーの基本的な特性であり、我々の省エネPWM技術の中心となるものです。時定数は、まずアーマチュアを作動させ、次にその位置を保持するのに必要な波形を決定するものであるため、時定数を理解する必要があります。
話を続ける前に、リレーにおける磁界の性質と、時定数とリレーがオンする時間の関係を説明したこれらの記事を復習しておくと役に立つでしょう。
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リレーにおける磁束の挙動 - エレクトロメカニカル / リレー - 電子部品およびエンジニアリングソリューション フォーラム - TechForum│DigiKey
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リレーが閉じるまでどのくらい時間がかかりますか?- エレクトロメカニカル / リレー - 電子部品およびエンジニアリングソリューション フォーラム - TechForum│DigiKey
リレー仕様の見直し
一般的なリレーのデータシートには、我々のPWM技術に役立つ情報が豊富に含まれています。この例では、図1に示すCIT Relay & SwitchのJ104D2C12VDC.20Sを取り上げます。関連する静的仕様は次の通りです。
- コイル電圧:12V DC、コイル電力:200mW、およびコイル抵抗:720Ω
- ピックアップ電圧:9.00V DC(定格電圧の75%)
- リリース電圧(ドロップアウト電圧):1.2V DC(定格電圧の10%)
- 「定格コイル電圧未満のコイル電圧を使用すると、リレー動作の不具合が起こる可能性があります。」
残念ながら、動的接点クローズ速度はデータシートには規定されていません。ただし、これは図2に示すように、実験的に容易に求めることができます。この例では、マイクロコントローラのコマンド信号(オレンジ色)と、それに関連するリレー駆動電流(青色)が、小さなシャント抵抗を横切って流れている様子を示しています。電流が約8msで定常状態(フルオン)になることを確認してください。5.5msでの電流の落ち込みは、アーマチュアの動きと、それに伴うエアギャップの減少による磁気特性の変化に関連するものです。リレーにおける磁界の挙動については、前述の記事を参照してください。
技術的なヒント: 静的(スタティック)と動的(ダイナミック)という用語の区別は、リレーにPWM技術を適用する場合に重要です。静的は静止しているものを表し、動的は動いているものを表します。例えば、静的な12V DCのコイル仕様は、電力、電流、およびコイル抵抗を用いて、回路理論の授業で習った基本的なオームの法則のテクニックを使って簡単に計算できます。初期電流の変化などの動的な要素には、さらに注意が必要です。図2に示すように8~10msの短い時間を除いて、電流は動的(常に変化しています)であることが分かります。リレーの機械的なクローズ時間もこの動的関係の一部とみなされます。ここで、クローズ時間はLR時定数により支配されます。
リレーのピックアップ電圧およびリリース電圧仕様の重要性
データシートの仕様から、初期ピックアップ電圧とリリース電圧という2つの大きく異なる電圧があることが分かります。リレーの磁気構造におけるエアギャップを考えれば、これは驚くべきことではありません。当初、励磁されていないリレーのエアギャップは大きく、アーマチュアのスプリングに抗して引っ張るには、かなりの磁界強度(より大きな電流)が必要です。しかし、いったんアーマチュアが閉位置になると、エアギャップはほとんどゼロになります。アーマチュアをこの位置に保持するのに必要な磁界強度は小さくなります。
この保持電力の削減が、リレーPWM技術の鍵となります。
図2: DigilentのAnalog DiscoveryによるマイクロコントローラのPWM信号(オレンジ色)とリレードライバ電流(青色:1/10の値)波形。PWM信号につながる10msのターンオン時間に注意。
技術的なヒント: 図2をよく見ると、リレー電流を直接測定していないことが分かります。その代わりに、リレーとそのフライバックダイオードに供給される電流を測定しています。回路理論から、インダクタの電流は瞬間的には変化しないことが分かっています。このため、コンデンサが電圧を時間で積分するように、電流を時間で積分しています。実際のリレー電流は、PWM充電サイクルの間の下降傾斜(放電)電流でギャップを埋めることになるのです。
PWMリレー駆動の2段階プロセスの説明
PWMベースの省エネ技術は2段階のプロセスです。この方法は、リレーのピックアップとリリースの仕様の違いに直接関係しています。そのステップは、
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ピックアップ: 最初のステップは、定格電圧でリレーを作動させることです。フルパワーでは、図2に示すように、リレーは最初の6msですぐに閉じます。電流が定常状態に達すれば、次のステップに移ることができます。図2では、この定常状態の電流は12V DC/720Ωとして計算され、約16mAになります。
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ホールド: この段階ではリレーをPWMで駆動します。図2に示すように、PWMのデューティサイクルは50%です。前の「技術的なヒント」で説明したように、これはリレー電流を直接測定したものではないことに注意してください。 そうではなく、図2は電源からリレーに供給される電流を示しています。その結果から、供給電流が定常状態から大幅に減少していることが分かります。このパルス信号によって供給される電流の真の実効値(RMS値)を確定するのは、皆さんにお任せします。
PWM技術に関する利点と問題点
PWM技術の主な利点は、エネルギー消費の削減です。この例では、デューティサイクルを50%にすることで電流が減少し、コイルで消費されるエネルギーが大幅に減少していることが分かります。追加の実験を重ねれば、デューティサイクルを下げて、さらに大きな省エネを実現できるかもしれません。
このエネルギー消費の削減には、いくつかのマイナス面もあります。
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不安定なリレー動作: データシートを注意深く分析すると、最低ホールド電圧ではなく「リリース電圧」が含まれていることが分かります。これらは同じものではありません。デューティサイクルを下げると、リレーが閉じた状態を維持できなくなる点が来るかもしれません。これは、振動のある環境で特に当てはまります。
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電磁干渉(EMI): 電気的干渉には2つの形態があります。
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ローカル干渉: PWM信号は、切り替えられる信号に混入する可能性があります。例えば、高次高調波を伴うPWMのコイル駆動は、アナログの小信号に干渉を引き起こす可能性があります。
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放射妨害: PWM駆動信号と高調波がプリント基板から放射され、近傍の機器に干渉を引き起こす可能性があります。
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技術的なヒント: 時定数を変更することでリレーの接点が閉じるまでの時間(動作時間)を短縮できます。 \tau = L/R であることを思い出してください。インダクタンスを変更することはできませんが、 Rを増やすことでリレーの動作時間を短縮できます。前述のリレーが閉じるまでの時間の記事では、これをL/2RまたはL/4Rとして紹介しており、数字は抵抗値の倍率を示しています。ここで、抵抗が4倍増加すると、インダクタンスによる閉鎖時間が1/4に短縮されます。欠点は電圧を4倍にする必要があることです。.
リレーPWM駆動信号用のArduinoマイクロコントローラコードの実装
PWMリレー制御用のArduinoコードを以下に示します。これは、図1に示すように2つのリレーを制御し、500msに1回、オンまたはオフの動作を発生させます。コードは比較的単純です。
これは、10msのdigitalWrite( )で始まり、リレーがアクティブ化されている残りの時間はanalogWrite( )が続きます。10msの時間で、リレー電流が完全にリレーを閉にし、定常状態の電流に達します。その後、PWMが作動してリレーの閉状態を維持します。
#define RELAY_1_PIN 3
#define RELAY_2_PIN 5
void setup() {
pinMode(RELAY_1_PIN, OUTPUT);
pinMode(RELAY_2_PIN, OUTPUT);
}
void loop() {
digitalWrite(RELAY_1_PIN, HIGH);
delay(10);
analogWrite(RELAY_1_PIN, 128);
delay(450);
digitalWrite(RELAY_2_PIN, HIGH);
delay(10);
analogWrite(RELAY_2_PIN, 128);
delay(450);
digitalWrite(RELAY_1_PIN, LOW);
delay(500);
digitalWrite(RELAY_2_PIN, LOW);
delay(500);
}
まとめ
2段階のリレー駆動技術は、わずか数行のマイクロコントローラコードで簡単に実装できます。リレーを駆動するためにすでに設置されているハードウェア上で動作します。ぜひこのテクニックを試してみることをお勧めします。また、このノートの最後にある問題と批判的思考を使う問題に答えることにも挑戦していただきたいと思います。
ご健闘をお祈りします。
APDahlen
著者について
Aaron Dahlen 氏、LCDR USCG(退役)は、DigiKeyでアプリケーションエンジニアを務めています。彼は、技術者およびエンジニアとしての27年間の軍役を通じて構築されたユニークなエレクトロニクスおよびオートメーションのベースを持っており、これは12年間教壇に立ったことよってさらに強化されました(経験と知識の融合)。ミネソタ州立大学Mankato校でMSEEの学位を取得したDahlen氏は、ABET認定EEプログラムで教鞭をとり、EETプログラムのプログラムコーディネーターを務め、軍の電子技術者にコンポーネントレベルの修理を教えてきました。彼はミネソタ州北部の自宅に戻り、このような記事のリサーチや執筆を楽しんでいます。LinkedIn | Aaron Dahlen - Application Engineer - DigiKey
問題
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PWM技術に必要な2つのステージについて説明してください。
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図2に示した活性化時間を10msから3msに短縮したらどうなるでしょうか?
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デューティサイクルがある閾値以下に低下した場合の、「不安定なリレー動作」とはどういう意味ですか?
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リレーのフライバックダイオードとは何ですか?なぜ、このアプリケーションで必要なのですか?
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図2はMOSFETドライバから見た電流です。電流をリレーコイルから見たように切り替えてください。
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PWMデューティサイクルの下限は何によって決まるのでしょうか?
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リレーのピックアップ電圧とホールド電圧にどのように関係しますか?満点を取るには、一般的な永久磁石を使用して、関係を説明してください。
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選択したリレーのL/4R回路の回路図をスケッチしてください。各種抵抗と動作電圧を必ず含めてください。
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前問で作成した回路の電力損失を計算してください。.
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リレーに関連する静的(スタティック)と動的(ダイナミック)の用語について説明してください。
批判的思考を使う問題
リレーのデータシートを探し、それぞれの仕様が静的か動的かを特定してください。
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図2の電流波形の落ち込みは何が原因ですか?折りたたんだ紙を使って、どのように仮定を証明できますか?
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「ブロッキングコード」とはどういう意味ですか?この記事で紹介したコードを改善するために、ノンブロッキングコードをどのように使うことができるでしょうか?
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TVSダイオードは、リレーがターンオフする速度を上げるために使用することができます。このアプリケーションにTVSダイオードを使用できますか?
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PWM信号に関連するEMIを最小限に抑えるためには、どのような注意が必要ですか?
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図2は、電源の観点から見た電流を示しています。 PWM信号に供給されるRMS電流を計算し、20年の製品寿命にわたるエネルギー節約量を計算してください。リレーが20年の25%アクティブであると仮定します。