デジタルラジオモンディエール(DRM)は、従来のアナログAMラジオやFMラジオに代わるデジタル放送規格で、音質の向上、効率的なスペクトラム利用、およびデータサービスの強化を目的としています。DRMは幅広い周波数帯で動作するように開発されており、長距離放送とローカル放送の両方で特に効果的です。
DRMの技術的特長
- 動作モード:
- DRM30: 30MHz以下の周波数(AM、長波、短波)で動作し、長距離放送に最適です。このモードは特に遠隔地への到達やグローバルな放送を実施するのに有効です。
- DRM+: 30MHz以上の周波数(FMバンド)で動作し、CDに近い音質で高品質のローカルデジタル放送を提供します。
- スペクトル効率:
- DRMはCOFDM(Coded Orthogonal Frequency Division Multiplexing、符号化直交周波数分割多重)や階層変調のような高度な変調方式を使い、同じ帯域幅により多くのチャンネルを詰め込みます。これにより、複数の放送局が同じ周波数で同時に放送できます。
- 音質:
- DRMはアナログ放送より大幅に改善され、AM放送はFMに近い音質、FM放送はCDに近い音質を実現しました。AAC+コーデックの使用により、低ビットレートでも高い忠実度が保証されます。
- データサービス:
- DRMは、Journaline(テキスト)、Slideshow(画像)、およびEWF(Emergency Warning Functionality、緊急警報機能)の追加サービスをサポートしています。これらは音声と一緒に放送され、リスナーにリアルタイムの情報やマルチメディアコンテンツを提供することができます。
- エネルギー効率:
- DRM送信機はアナログ送信機よりも電力効率が高く、運用コストを削減できます。これは、放送範囲を維持または拡大しながらインフラを近代化しようとする放送局にとって特に有益です。
DRMの欠点:
- 普及率と市場浸透率: DRMはDAB(デジタルオーディオ放送)に比べて普及率が低く、特にFMとDABが支配的な都市部での普及率が低いです。
- 受信機の利用可能性: DRMをサポートする消費者向け機器は少なく、その利用は限られています。
- インフラ要件: DRMへの移行には、互換性のある送信機と受信機への投資が必要です。
CML MicroはDRM技術を採用し、放送受信機メーカーが統合できるようカスタマイズされた「アンテナからオーディオ」ソリューションを提供するDRM1000放送受信機モジュールを開発しました。それには完全なソフトウェアサポートが付属しており、MF、HF、およびVHF(バンドIとII)のAM、FM、およびDRM(DRM30とDRM+の両方)放送の最高レベルの受信をグローバルに可能にします。このモジュールのソフトウェアは、手頃な価格の小型ディスプレイと押ボタンを使用し、わかりやすいユーザーインターフェースで動作するように設計されています。
CML MicroのDRM1000とそのデモキットDE9180-2を組み合わせることで、DRM1000 AM/FM放送受信モジュールの機能を簡単にデモンストレーションすることができます。DRM1000モジュールは、最終製品と同じようにPCBに直接はんだ付けされて供給されます。
DE9180は、DRM1000の性能を十分に評価するための入力、出力、およびコントロールの機能を備えています。外部電源コネクタ、ヘッドフォンジャック、外部HF/VHFおよびMFアンテナ接続用ポート、内蔵スピーカ、電池ボックス、および16x2文字のOLEDディスプレイを備えています。さらに、12ボタンのキーパッドを装備しており、音量調整(上下)、選局、周波数帯の切り替え、4つのプリセット局メモリボタンへのアクセス、周波数スキャンの開始、およびその他のユーザー機能の管理が可能です。
まとめ
DRMは、特に長距離放送が不可欠な地域において、ラジオ放送を近代化するための技術的に信頼性の高いソリューションを提供します。DRMはDABに比べて普及に課題があるものの、複数の周波数帯域で運用できることと、スペクトルとエネルギーの効率的な利用が可能であることから、将来にわたって事業の継続性を考える放送事業者にとっては非常に魅力的な選択肢となります。