LiDARの仕組みを学び、TIAとコンパレータの慎重な選択の重要性を理解する

著者:Digi-Keyの北米エディター
2022年10月20日
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LiDAR(光検出・測距)は、ハンズフリーの実現を夢見る自動車設計の分野で最も広く知られるようになりました。具体的には、デジタル制御された光信号を3次元スキャン装置から照射し、その反射信号を検出して環境を解析し、高度化する運転支援システム(ADAS)の開発をサポートします。夢想家たちは的確な考えを持っていましたが、現在の実装は、古典的な「コーヒー缶」方式(図1)とは大きく異なっています。

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図1:車載用LiDARセンサはADASにとって重要なコンポーネントですが、当初のコーヒー缶方式から劇的に進化しています。(画像出典:Research Gate)

初期の開発者は、360度写真を撮るのが良いと考えていましたが、このソリューションは少々値段が高く、本格的な商用化ができませんでした。現在、車載用途では前進と、要求に応じた後進、そしてたまに左右のマッピングができればよいので、より経済的な設計が可能になりました。

話がそれましたね。車載システムだけにフォーカスしても、LiDARの可能性を正しく理解することはできません。そこで、LiDARの仕組みを理解することから始めて、LiDARの全体像を見てみましょう。

トランスインピーダンスアンプがLiDARの中核を担う

LiDARは、光信号が発射されてから、物体から反射して戻ってくるまでの飛行時間(ToF)を計測することがキーポイントです。この技術は、レーザードライバからレーザーダイオードに送られるデジタル信号のラインで実にうまく機能します。LiDARシステムは、信号の周波数ではなく、信号のエッジを探しています(図2)。この検出方法は、優れたトランスインピーダンスアンプ(TIA)に依存しています。

図2:レーザーダイオードからデジタル光パルスが発せられ、その戻りパルスをTIAがとらえます。(画像出典:Analog Devices Inc./Maxim Integrated)

図2において、LiDAR信号の受信回路は、Analog Devices/Maxim Integrated製高帯域幅TIAのMAX40660と、超低ばらつき(ultra-low dispersion)の280ピコ秒(ps)高速コンパレータのMAX40025から構成されています。

MAX406600は、光距離測定チェーンのレシーバリンクを形成しています。車載用LiDAR向けに設計されており、低ノイズ、高ゲイン、低群遅延に加え、過負荷からの高速出力回復、入力電流クランプおよび入力換算ノイズ密度2.1ピコアンペア(pA)を特徴としています。ピン選択で25kΩと50kΩのトランスインピーダンスを持ち、0.5pFの入力容量で490メガヘルツ(MHz)(代表値)の広帯域を実現しています。

この光検出システムのフロントエンドは本質的に、光信号を効果的に捕捉するための慎重な設計選択と最適な実装で実現した光検出器です。これにより、静止物体や移動物体を検出するための独自の帯域幅とノイズの仕様を持つTIAを実現しました。MAX40660 TIAの広帯域幅は異なる物理的状態の詳細までとらえ、その低ノイズ特性は歪みレベルを下げます。

MAX40025高速COMPは、1ビット、アナログデジタルコンバータ(ADC)として機能します。オーバードライブ時の分散は25ピコ秒(ps)と極めて小さく、ToF距離測定アプリケーションに最適なコンパレータです。MAX40025では、TIA光信号はコンパレータの標準的な280psの伝搬遅延でクリーンな
「1 」または 「0」に変換されます。

移動距離に応じて、D1に入射する光は明るくなったり暗くなったりします。さらに、大気中の汚染物質や、システムをさらに混乱させるような幻灯もあるかもしれません。

これらの影響を補正するために、実世界でのLiDARシステムは複数分野の技術を効果的に使用しています。車載用途では、LiDAR、レーダーおよびカメラのセンサシステムを融合させる必要があります。ドローンとGPSによるマッピングは、建設プロジェクトの基礎づくりのために、研究者やエンジニアに3D画像の詳細を提供します。水深測定や海底用のLiDARマッピングは、海底構造物の位置を明確にするものです。これらのアプリケーションは、他の多くのアプリケーションと同様に、独自のLiDAR構築の要件を持っています。

LiDARと電磁波スペクトル

図2の光学系のフロントエンドでは、フォトダイオードD2が信号タイミングのために出射光を検知し、D1が戻り光を検知しています。この電磁光信号は、紫外線から赤外線までの範囲に及びます(図 3)。

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図3:電磁スペクトルは電磁放射の分布範囲であり、可視域はそのごく一部です。
(画像出典:Cosmos)

LiDARの多くは、 D1 、D2にアバランシェInGaAsシリコンを使用した赤外線レーザーシステムを採用しており、その光波長は1310nm(ナノメートル)から1550nmです。しかし、LiDARには、可視光信号を利用したものもあります。

おわりに

LiDARのアプリケーションは色々ありますが、LiDARはより直感的なADAS、そして最終的には完全なハンズフリー機能を実現するための重要な要素となっています。これらの技術の進歩に伴い、LiDARを支える部品に対する要求も厳しくなってきています。この記事で説明したように、MAX40660高帯域幅TIAとMAX40025 280ps高速コンパレータを中心としたLiDAR信号受信回路は、信頼できる車載用LiDARフロントエンドの基礎を形成することができます。


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