はじめに
前回の記事 「電源設計ガイド:効率的で信頼性の高い電源回路の構築方法」では、要件分析からレイアウト、試験に至るまで、電源回路の設計フロー全体を説明しました。この記事では、その基礎の上に立って、電源回路の性能向上、EMIの低減、および熱管理の改善に重要な役割を果たす実践的なテクニックと重要な設計上の考慮事項に焦点を当てます。
電源回路設計における重要な考慮事項
1. シミュレーションツールの使用
- 電源回路を設計する際には、LTspiceやPSIMなどのシミュレーションツールを使用して、回路の動作や安定性をシミュレーションすることができます。
- 設計と試験は段階的に行い、簡単なモデルから始めて徐々に複雑にしていく必要があります。
2. PCBレイアウトのベストプラクティス
- スイッチング電源のスイッチングループは、EMIを低減するためにPCBレイアウトで最小限にする必要があります。
- 寄生インダクタンスを最小にするため、入力コンデンサと出力コンデンサをスイッチング素子の近くに配置します。
- 電気ノイズを低減するために、専用のグランド層を持つ多層プリント基板を使用します。
3. 適切な電力制御モードの選択
- 電流モード制御は動的応答が速く、動的負荷に適しています。
- 電圧モード制御はよりシンプルで、定常負荷に適しています。
- PFM(パルス周波数変調)やPWM(パルス幅変調)スイッチングなどのマルチモード制御は、軽負荷時の効率を向上させることができます。
4. インダクタとコンデンサの選択
- 磁気飽和を防止するため、最大電流より高い飽和電流定格のインダクタを選択します。
- 電圧レギュレーションを改善するため、出力側には低ESRのコンデンサを使用します。
5. スイッチングノイズ対応
- スイッチング素子と並列にRCスナバ回路を追加し、電圧スパイクを抑制し、EMIを低減します。
6. 効率改善技法
- 従来のダイオードの代わりに同期整流を使用し、電力損失を低減して効率を高めます。
- ソフトスタート回路を内蔵し、電源投入時の突入電流を制限して部品を保護します。
7. 熱管理
- MOSFETや整流ダイオードは多くの場合、大きな熱源となるため、回路には放熱部品や放熱技術も追加する必要があります。
- ヒートシンク、サーマルペースト、多層PCB、および銅箔ベタを使用して、放熱性を向上させてください。
- 重要な電流経路を銅領域で補強して、インピーダンスを下げ、熱管理を強化してください。
8. 設計のトレードオフのバランス
- 優れた設計には、性能、効率、および信頼性の適切なバランスが必要です。
- 運用条件や優先事項に応じて、アプリケーションに合わせた調整を行ってください。