車載用LEDドライバの電力変換トポロジガイド

この記事は、LEDドライバに使用されるさまざまなスイッチングトポロジの利点、トレードオフ、および用途を説明することで、選択プロセスを簡素化することを目的としています。特定の半導体接合を利用することで、LEDメーカーは可視光域全体と赤外線および紫外線にわたる特定の色の光を作り出すことができます。

LEDからの出力は、端子電圧の小さな変動に関係なく、接合部における正確に安定化された電流に依存する、よく制御された光です。

車載用LEDシステムのスイッチングトポロジ

特定のスイッチングトポロジの実装は、完全なシステム設計に従って選択され、以下の要素を考慮しなければなりません。

• 最小入力電圧
• 最大入力電流
• 最大ストリング電圧
• シャーシリターン能力
• ショート時の出力能力
• LEDへの出力電流
• PWMによる調光

降圧(バック)コンバータ

バックコンバータDC-DC降圧レギュレータの一種で、高いDC入力電圧を調整可能な低い出力電圧に効率的に変換します。降圧型(またはバック型)LEDドライバは、LEDストリングのトータル電圧よりも高い電圧からLEDストリングの電流を安定化します。バックコンバータは、負荷電圧(すなわち、LEDに必要な電圧)が供給電圧の約85%を超えることがない場合に使用されます。バック型LEDドライバはシャーシリターンの能力を持ち、システムグランドに安全に接続することができます。

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図1:バックコンバータ(出典: Analog Devices)

以下は、バックコンバータを実装する際に注目すべきいくつかの重要な特長です。

  • 固定周波数動作
  • 優れたスイッチング制御および低抵抗スイッチによる高効率
  • アナログ調光範囲全体にわたり高精度
  • 優れたEMIのために、適切に設計されたスペクトラム拡散周波数変調方式

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図2:バックコンバータの例 LT3932

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昇圧コンバータ

ブーストコンバータ(または昇圧コンバータ)は、入力から出力への電流を減少させる一方、電圧を上昇させるDC-DCコンバータの一種です。スイッチオンの間インダクタにエネルギーを蓄積し、スイッチオフの間に負荷にエネルギーを放出することで、入力電圧をより高い出力電圧まで効率的に昇圧します。

昇圧(またはブースト)LEDドライバは、LEDストリングのトータル電圧よりも低い電圧からLEDストリングの電流を安定化します。これは、単一のストリング内で多数のLEDに電流を流す必要がある多くの車載システムで有用です。一般的な12V車載システムの動作範囲は6V~18Vで、6Vまで下がってもLEDドライバは動作する必要があり、多数のLEDから成るストリングを点灯し続けるために、大きな昇圧比となります。

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図3:昇圧コンバータ(出典: Analog Devices)

図4:昇圧コンバータの例 LT8356-1

昇圧コンバータを用いた昇降圧コンバータ

昇圧型(またはブースト型)LEDドライバの中には、LEDのカソードを電源に戻すように構成されているものがあります。この構成は昇降圧型と呼ばれます。トータル出力電圧はVIN(VBATTERY)となり、LEDストリングのトータル電圧に加算されます。

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図5:昇降圧コンバータ(出典: Analog Devices)

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図6:昇降圧コンバータ LT8386

昇圧コンバータを用いた降圧モード

昇圧型(またはブースト型)LEDドライバの中には、(標準的な降圧型のようにグランド基準ではなく)電源から降圧するように構成されているものがあり、その場合は降圧モード構成となります。この構成には降圧型と同じ制限があり、LEDストリングのトータル電圧は入力電源より小さくなければなりません。

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図7:降圧モードコンバータ(出典: Analog Devices)

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図8:降圧モードの例 LT3756-2

昇降圧コンバータ

電源電圧がLEDストリングのトータル電圧より高くても低くても、昇降圧LEDドライバはLED電流を安定化します。コンバータは、降圧モードでは入力電圧に接続されたハイサイドスイッチを制御し、昇圧モードでは出力側のローサイドスイッチを制御します。このトポロジは最も複雑ですが、最も柔軟性があります。VINとVOUTの範囲はコントローラICによってのみ制限されます。これはマトリクス用途に適した良い選択です。

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図9:昇降圧コンバータ(出典: Analog Devices)

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まとめ

車載用LED照明システムは、スイッチングレギュレータを使ってさまざまな方法で駆動することができます。用途に応じて、スイッチングトポロジと構成を選択することで、照明設計者は自動車全体のさまざまな照明要件に対応する完全なサブシステムを開発することができます。システムに適した電力変換スイッチングトポロジと構成を選択することで、複雑さ、効率、EMI、安全性などの要件が最適化されます。




オリジナル・ソース(English)