バック(Buck)電源は、高周波スイッチングトランジスタ(MOSFET)をオン/オフすることにより、高い入力電圧(VIN)をより低い安定した出力電圧(VOUT)に変換します。出力電圧は、スイッチングトランジスタのオン時間(スイッチングトランジスタがオンである時間)オフ時間(スイッチングトランジスタがオフである時間)によって決まります。
適応型オン時間制御には次のような利点があります。
- 入力電圧が変化しても出力電圧が安定しています。
- 広い入力電圧範囲で高効率です。
- 速い過渡応答を示します。
適応型オン時間制御の基本動作原理
ここでは、Microchipのスイッチングバックレギュレータ MIC24066T を例に説明します。
(画像出典:Microchip)
1. オン時間(TON)の決定:固定推定
内部オンタイムジェネレータは、VINとVOUTに基づいてほぼ一定のTONを生成します。
等価式は、TON(EST) = VOUT / (VIN × fSW) となります。
2. オフ時間の調整(TOFF): 適応型フィードバック
オフ時間は、次のロジックに従い、フィードバック電圧(FB)によって動的に制御されます。
- フィードバック電圧(FB)は、出力端子の抵抗分圧(R1/R2)を介して取り出され、内部の0.6V基準電圧(VREF)と比較されます。
- VFB < VREF(出力電圧が低すぎることを示す)の場合、エラーコンパレータが次のオンサイクルをトリガし、オフ時間は早期に終了します。
- VFB ≧ VREFFのとき、ローサイドMOSFETはオンのままで、オフ時間が続きます。
主な制約: フィードバックに基づいて計算されたTOFFが最小オフ時間(TOFF(MIN)、代表値300ns)より短い場合、TOFF(MIN))が強制的に使用されます。これにより、ブートストラップキャパシタ(CBST)にハイサイドMOSFETの次のターンオンに駆動電圧を供給するための十分な充電時間が確保され、駆動不足によるMOSFETの損傷を防ぐことができます。
3. 最大デューティサイクル(DMAX):最小オフ時間により決定
デューティサイクル(D)= TON / (TON + TOFF) 。TOFFは300nsより短くできないため、最大デューティサイクルはこの制約によって制限されます。式は次のようになります。
D_{MAX} = \dfrac{T_{S} \ - \ T_{off(MIN)}}{T_{S}} = 1 - \dfrac {300ns}{T_{S}}
(ここで、 T_{S} = \dfrac{1} {f_{SW}} で、スイッチング周期です)
注: 高周波数では、最小オフ時間の制約がボトルネックとなりやすく、出力電圧の調整幅が狭くなります。
最終まとめ:適応型オン時間制御の利点
- 入力電圧が変化しても出力電圧が安定しています。
- 広い入力電圧範囲で高効率です。
- 速い過渡応答を示します。
適応型オン時間制御は入力電圧が変化しても安定した出力を維持できますが、 FBリップルは振幅と位相の要件を満たす必要があり、そうでなければ電源の安定性に影響を与えます。
関連製品
- スイッチングレギュレータ:MIC24066T-E/QNA
- スイッチングレギュレータ開発ボード:EV69G45A(非絶縁型バック出力)
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