加速度計:種類、用途および選び方のヒント

加速度計または加速度センサは、物体の加速度を測定する装置です。加速度とは、直線運動または角運動において生じる変化であり、測定可能な力となります。この力は、センサ内のさまざまな機械的配置のいずれかによって測定することができます。一部の加速度計では、重力の働きを測定することで、傾きも感知することができます。

加速度計の種類:
• 静電容量型加速度計
• 圧電型加速度計
• ピエゾ抵抗型加速度計
• 熱伝導型加速度計
• 電磁型加速度計
• サーボ型加速度計

静電容量型加速度計

これは、加速度を測定するために静電容量の変化を利用するタイプの加速度計です。一般的にプルーフマスと呼ばれる既知の質量が、コンデンサの2枚のプレート間に吊り下げられています。加速が発生すると、吊り下げられた質量が揺れ、コンデンサの2つのプレートからの距離が変わります。プルーフマス自体が金属構造であり、2つのコンデンサを直列に構成しています。このプルーフマスの位置の変化により、このように配置されたコンデンサに静電容量の変化をもたらします。

静電容量の原理: 2枚の導電板間の静電容量Cは、以下の式で与えられます。

                                image

ここで、

  • ϵ(イプシロン)は、プレート間の誘電体の誘電率
  • Aはプレートの面積
  • dはプレート間の距離


静電容量型( MEMS)加速度計

主な特長:

  • 静電容量型加速度計は、運動による力の作用によって生じる固定電極と可動電極間の静電容量の変化を検知することで加速度を測定します。

  • 高感度、小型、および低消費電力が、静電容量型加速度計の利点です。

  • 静電容量型加速度計は、スマートフォン、タブレット、ゲームコントローラなどの民生用電子機器におけるジェスチャ検出や自動画面回転に使用されます。

  • 湿度、温度、および長期的な振動は、これらのセンサの性能に影響を与える可能性があります。そのため、信頼性の高い測定を行うには、定期的な校正が必要です。

用途:

  • スマートフォンおよびタブレット: スマートフォン、スマートウォッチ、ゲームコントロールなどの民生用電子機器における画面の回転、ゲームコントロール、およびモーション検出

  • エアバッグシステム: 自動車の急減速を検知し、エアバッグの膨張を開始します。

  • 傾斜感知: 不均一な地形でも適切な操作ができるように建設機械や農業機械に使用されます。

  • リハビリテーション機器: 理学療法中の患者の動きを監視します。

  • 慣性航法システム: 航空機や宇宙船で、GPSが利用できない場合に、加速度を測定し、ナビゲーションを支援するために使用されます。

静電容量型加速度計を使用する場合:

  • 高感度要件: 小さな加速度を高精度で測定する必要がある場合、静電容量型加速度計を使用することができます。

  • 低周波加速度: 静的加速度(重力など)と動的加速度の両方を測定する必要がある用途には、静電容量型加速度計が適しています。

  • 電力効率が重要な場合: 低消費電力であるため、静電容量型加速度計は、携帯機器やウェアラブル機器に最適です。

  • コンパクトサイズが必要な場合: 静電容量型加速度計は非常にコンパクトで軽量であるため、スマートフォン、タブレット、あるいは医療用インプラントなど、スペースが限られた用途に最適です。

DigiKeyでは、例えばNXP USA Inc.の品番KITSTBLITE2EVMKITSTARTER1EVMおよび KITSTARTER2EVMなどの静電容量型加速度計を取り扱っています。

圧電型加速度計

これらは、加速度、振動、および衝撃測定の基礎として圧電効果を利用する加速度計です。加速による機械的ストレスは、センサ内の圧電材料を変形させ、その変形は電圧計で電圧として検出することができます。

圧電型加速度計では、圧電素子を使用して、加速度計本体にプルーフマスを接続します。

センサフレームが加速を受けると、慣性により、プルーフマスはそれが置かれている表面に力を及ぼします。この力は圧電材料にストレスを生じさせ、電圧を発生させます。この引き起こされた電圧を、加速を推定するために利用します。


圧電型(MEMS)加速度計

特長:

  • 優れた高周波応答: 圧電型加速度計は、数ヘルツから数キロヘルツの高周波を含む振動解析に使用されます。

  • 高い感度: これらのデバイスは動的な力に非常に敏感であるため、小さな振動や高周波信号の検出に最適です。

  • 広いダイナミックレンジ: 圧電型加速度計は、非常に低い加速度から非常に高い加速度まで、幅広い加速度を測定できるため、さまざまな用途に利用できます。

  • 信号の自己生成: 圧電効果により、センシング素子自体には外部電源を必要とせずに信号が生成されます。ただし、信号処理用の電子機器には電力が必要となる場合があります。

用途:

  • 振動解析と監視: 産業用機械の振動を監視し、メンテナンスの必要性を見極め、機械の故障や停止を防止します。

  • 飛行試験: 試験中に航空機の振動と加速度を測定し、構造の完全性と性能を確認します。

  • 地震検知: 地震学における地面の動きや振動を監視し、地震を検知および分析します。

  • カメラの安定化: 一部のハイエンドカメラでは、圧電型加速度計を使用して小さな振動を検知し補正することで、画像の安定性を向上させています。

DigiKeyで入手可能な圧電型加速度計
DigiKey品番 メーカー品番 メーカー
2770-780988-01-ND 780988-01 NI
2770-780989-01-ND 780989-01 NI
V22B-ND V22B Mide Technology Corporation
V22BL-ND V22BL Mide Technology Corporation
V21B-ND V21B Mide Technology Corporation
V21BL-ND V21BL Mide Technology Corporation
V20W-ND V20W Mide Technology Corporation
V25W-ND V25W Mide Technology Corporation

ピエゾ抵抗型加速度計

ピエゾ抵抗型加速度計では、加速度による機械的ストレスを受けると、デバイスの電気抵抗が変化します。 ピエゾ抵抗型デバイスの一端には、地震マスが取り付けられています。 センサが加速度を受けると、地震マスの慣性がピエゾ抵抗型デバイスにストレスを与えます。


ピエゾ抵抗型(MEMS)加速度計

特長:

  • 高い感度: ピエゾ抵抗型加速度計は感度が高く、わずかな加速度も検出できます。 精度が重要な用途に特に適しています。

  • 動的および静的加速度の測定: ピエゾ抵抗型センサは、動的および静的加速度の両方を測定できます。他の一部の加速度計とは異なり、ピエゾ抵抗型加速度計は、重力あるいは定常状態の力、衝撃、振動などを測定できます。

  • 広い動作温度範囲: デバイスの感度は温度によって変化しますが、幅広い温度範囲で動作します。

  • 電源要件: ピエゾ抵抗型センサは、圧電型加速度計とは異なり、動作には連続的な電源供給が必要です。

用途:

  • 自動車衝突試験: 自動車衝突試験で広く使用され、衝突時に車両や乗員が受ける加速度や力を測定します。

  • 振動監視: 特に低周波での機器や構造物の振動を監視し、潜在的な障害やメンテナンスの必要性を検出します。

  • 航空宇宙および防衛: 試験および運用中の航空機および宇宙船にかかる加速度と振動力を測定します。ミサイルおよび発射体の誘導システムに正確な照準と飛行経路制御を確保するための加速度データを提供します。

  • 医療: 心電図モニタなどの医療機器では、心拍や動きを検出するために使用されています。

熱伝導型加速度計

熱伝導型加速度計では、センサの空洞部における熱伝導が加速度測定の基礎となります。このセンサには、他の加速度計のような機械的な動きは一切ありません。ヒータ、温度感知抵抗器(熱電対)、密閉チャンバ、および作動ガスが熱伝導型加速度計の主要な構成要素です。温度感知抵抗器(熱電対)は、ガス温度の変化を測定するために密閉ガスチャンバ内に配置されています。

特長:

  • 感度: 静的および準静的な力を含む低周波加速度測定に優れています。

  • 安定した性能: 幅広い温度範囲で高い安定性を維持します。

  • 高い耐久性と信頼性: 接触する可動機械部品がないため、これらのデバイスは耐久性が高く、過酷な環境やメンテナンスを長期間必要としないアプリケーションに適しています。

  • 消費電力: 消費電力は非常に低く、省エネが重要な場合に適しています。

用途:

  • 重機の傾きや傾斜はこれらの加速度計で測定されます。

  • これらは、角度や傾斜の精密な測定が必要な傾斜計として使用されます。

  • 低周波振動が懸念される橋梁、ビル、タワーなどの大型構造物の振動監視に利用できます。

  • 車両の安定性を評価する際、例えば、低周波加速度データが必要な横転検知などに使用します。

  • 静的加速度を正確に測定する必要がある防衛および航空宇宙の用途で使用できます。

電磁型加速度計

電磁型加速度計では、電磁誘導の原理が加速度の測定の基礎となっています。これは、磁界内に吊り下げられたコイルに接続された地震マスから構成されています。センサが加速すると、地震マスが移動し、コイルも移動します。このコイルの動きは磁界と相対的なものです。この相対運動によりコイルを通る磁束が変化し、コイルの端子間に電圧が発生します。 センサ内部には安定した磁場を発生させる磁石が固定されており、スプリングは地震マスを初期位置に戻し、復元力を提供するために使用されています。

特長:

  • 低周波数の加速度に非常に敏感です。地震監視や構造健全性監視は低周波数の測定が必要なため、それらの用途に使用されます。

  • 電磁加速度計は、非常に低い力から非常に高い力まで、非常に広範囲の加速度に使用できます。

  • 耐久性に優れ、過酷な環境での使用に適しています。

  • デバイスの動作には外部電源は必要ありません。コイル自体が、地震マスと磁界の間の相対運動により電力を生成します。

用途:

  • 地震の規模を検知し測定する地震計で広く使用されています。

  • 機械の振動監視などの低周波加速度測定に使用されます。

  • 車両の動特性を監視するために交通システムで使用されます。例えば、列車が発する低周波振動を検知することで、軌道の状況を監視するといった用途です。

  • 低周波の地盤変動を検出する地球物理学的調査や環境モニタリングに利用することができます。

サーボ型加速度計

サーボ型加速度計は、サーボ機構により地震マスの変位をバランスさせ、加速度を測定する高精度の加速度測定デバイスです。地震マス、スプリング、検出デバイス(光学センサや静電容量センサなど)、サーボ機構、およびフィードバック回路が、サーボ型加速度計の主な構成要素です。

加速度が発生すると、慣性により地震マスが変位します。スプリングが地震マスを元の位置に戻します。光学式または静電容量式の検出デバイスが、加速度に比例する地震マスの変位を測定します。

フィードバックループにより、システム内の力のバランスが維持されます。位置センサ(検出デバイス)からの出力信号は増幅され、トルク発生器に送られます。トルク発生器は、地震マスを平衡位置に戻すための反作用力を発生させます。トルク発生器の出力は、センサが検出した加速度に直接比例するため、高い精度での測定が可能になります。


サーボ型加速度計

特長:

  • 感度: サーボ型加速度計は、優れた直線性と高感度を実現します。

  • 周波数範囲: これらのセンサは幅広い周波数に対応しています。重力のような静的な加速度や高周波の加速度も簡単に監視できます。

  • 安定性: ドリフトが最小限であるため、これらのセンサは長期間にわたって安定した性能が求められる用途に適しています。

  • 信号対雑音比: フィードバックループの採用により、高い信号対雑音比を実現しています。

用途:

  • 航空機、宇宙船、船舶、およびミサイルの航法システムに使用されます。

  • 橋やビルなどの大型構造物の傾きや振動を監視するために使用されます。

  • これらのセンサは、自動車産業における衝突試験で使用され、衝突時に車両が受ける力を測定します。

  • 正確な射撃制御を確保するために武器の安定化に使用されます。

加速度計の主な考慮事項および選択のヒント

加速度計には多くの種類があるため、最大限のパフォーマンスと信頼性を確保するには、特定のアプリケーションに最適な加速度計を選択する必要があります。

  • まず、加速度測定範囲の最小値と最大値を特定する必要があります。範囲が広いセンサを選択すると、分解能が低下する可能性があります。範囲が狭すぎると、データ値がセンサの測定可能範囲を超える可能性があります。

  • 感度は、最適な加速度計を選択する上で最も重要な要素の1つです。加速度の値が高い場合は、感度の低い加速度計が適していますが、加速度の値が低い場合は、感度の高い加速度計を使用するのが最適です。

  • センサ/加速度計の消費電力は、特定のアプリケーションに適したセンサを選択する際には念頭に置く必要があります。

  • センサのサイズと重量は決定的な要素です。より軽量で小型のセンサは、携帯機器に適しています。

  • 設置や統合が容易なセンサを選択すると、設置やメンテナンスにかかるコストを削減できます。

DigiKeyは、次のような、さまざまな加速度計および振動センサをサポートしています。

DigiKeyで入手可能な加速度センサ

DigiKeyで入手可能な振動センサ




オリジナル・ソース(English)