降圧コンバータ
降圧コンバータは、入力電圧を、より低い出力電圧に降圧する特別なタイプのSMPS(Switched-Mode Power Supply:スイッチング電源)です。電源管理や低消費電力のマイクロプロセッサ用に広く使用されています。降圧コンバータは、スイッチ(通常はトランジスタ)をオン/オフしてインダクタとコンデンサにエネルギーを蓄え、安定化して出力に供給することで動作します。
図1.0 降圧コンバータ
上図は、スイッチをオン/オフしたときの電流経路を示しています(太線で示します)。
- スイッチがオンの時、入力電圧はインダクタに接続されます。そして、入力電圧と出力電圧の差がインダクタを強制的に通電させ、インダクタを流れる電流を増加させます。
- オン時間の間、インダクタ電流は負荷と出力コンデンサに流れます(コンデンサはこの期間に充電されます)。
- スイッチがオフになると、インダクタに印加されていた入力電圧は取り除かれます。しかし、インダクタに流れる電流はすぐには変化しないため、インダクタにかかる電圧は一定の電流を維持するように調整されます。
- 電流が減少に転じると、インダクタの入力は負電圧になり、結果的にダイオードが導通するポイントに達します。インダクタの電流は、負荷を通ってダイオードを逆流します。
- コンデンサはオフ期間中に負荷に放電することにより、負荷に供給される総電流を補います(スイッチオフ期間の総負荷電流は、インダクタ電流とコンデンサ電流の合計です)。
降圧コンバータにおける連続動作と不連続動作
降圧コンバータは2つの状態で動作します。
- 連続:インダクタ電流はゼロになることがありません。
- 不連続:各サイクルの終わりにインダクタ電流がゼロになります。
ほとんどの降圧安定化用途では、全負荷での動作中にインダクタ電流がゼロになることはありません(これは連続モード動作と定義されます)。全体的な性能は通常、連続モードの方が優れており、所定の入力電圧とスイッチ電流の定格により最大の出力電力を得ることができます。
最大負荷電流が極めて小さい用途では、不連続モード動作用に設計する方が有利な場合があります。このような場合、不連続モードで動作した方がコンバータ全体のサイズが小さくなる可能性があります(より小さなインダクタを使用できるためです)。
低負荷電流値での不連続モード動作は通常、無害であり、全負荷での連続モード動作用に設計されたコンバータでも、負荷電流が減少するにつれて不連続モードになります(通常は問題を起こしません)。
代表的な用途例
次の図は、降圧コンバータLT8631の代表的な用途例を示しています。LT8631は電流モードPWM降圧DC/DCコンバータで、最大1Aの出力負荷に電流を供給する同期スイッチを内蔵しています。高電圧レールを5Vに効果的に変換するシステムレベルのソリューションに使用できます。
降圧コンバータの主な長所は、その簡単さと柔軟性です。以下の表は、降圧コンバータの主な考慮事項をまとめたものです。
利点 | 欠点 |
---|---|
降圧コンバータは、高い入力電圧を低い出力電圧に変換する効率が高いことで知られています。リニアレギュレータに比べ、熱の形でのエネルギー消費が少なくなります。 | 降圧コンバータは適切に動作させるために複雑な制御回路を必要とし、設計の複雑さと潜在的な信頼性の問題を増やします。 |
高効率のため、降圧コンバータは発熱が少なく、熱管理が重要な用途には不可欠です。 | 降圧コンバータはスイッチングによりEMI(電磁干渉)を発生させるため、追加のフィルタリングやシールドが必要になる場合があります。 |
降圧コンバータは、一般にリニアレギュレータよりも小型・軽量であり、サイズや重量が制限される用途に適しています。 | 降圧コンバータの設計によっては、リニアレギュレータと比べて出力電圧のリップルが大きい場合があります。これはノイズレベルを極力低減するよう要求される用途では問題となる可能性があります。 |
降圧コンバータは広い範囲の入力電圧に対応できるため、変動する電源や不安定な電源でも適切に動作します。 | 降圧コンバータは入力電圧を下げることしかできないため、入力電圧よりも高い出力電圧を必要とする用途には適していません。 |
降圧コンバータは過渡応答が速いので、負荷の変動に素早く対応する必要がある用途に適しています。 | 降圧コンバータの設計によっては、対応可能な最大電流に制限がある場合があります。大出力の用途では、より複雑な降圧コンバータ構成が必要とされる場合があります。 |
降圧コンバータは、入力電圧が変動しても安定した、よく制御された出力電圧を提供します。 | 降圧コンバータの部品の設計と選択は難しく、インダクタの選択、スイッチング周波数、制御ループの設計などの要因を慎重に検討する必要があります。 |
降圧コンバータは、エネルギー効率が重要なバッテリ駆動機器によく使用されます。電力損失を最小限に抑えることで、バッテリの寿命を延ばすのに役立ちます。 |