ロボカップジュニアサッカー競技 - 小さなロボットとそれを支えるデバイス


Masao_Tsukamoto DigiKey Employee

はじめに

ロボカップジュニアサッカーライトウェイトリーグは小中高生を対象とし、サッカーロボットによるサッカー競技の1部門です。スピード感のあるサッカー競技が展開され、人気を集めています。図1のように、サッカーフィールド(122cm x 183cm)において1チーム2台のサッカーロボット(オフェンスとディフェンス)で競技が行われます。サッカーボールは赤外線を放射し、ロボットは赤外線を検知してボールを追いかけます。最大の特徴は、ロボットが人間の指示を受けずに、センサやカメラを使ってボールやゴール、敵のロボットを認識し、自ら戦術を判断して自律走行する点です。ロボット本体のサイズは直径22cm以下、重量は1.4kg以下と定められており、躯体構造の工夫や制御アルゴリズムの完成度が勝敗を大きく左右します。

この記事では、立命館守山高等学校サイテック部ロボットチーム「AIR」のサッカーロボットをご紹介します。また、ロボットに使用されている主要部品や、開発をサポートするDigiKeyの支援ツールについても紹介します。


図1: 1チーム2台(オフェンスとディフェンス)のロボットによるサッカー競技(出典:立命館守山高等学校

注目!: 立命館守山高等学校サイテック部ロボットチーム「AIR」は、2025年4月に名古屋で行われた全国大会第3位に入賞し、同年7月に行われたブラジルのサルヴァドールでの世界大会出場権を得ることができました。結果としては競技第3位、総合第3位という、初出場ながら非常に優れた成果を収めました。

図2に、ロボットチーム「AIR」の2台のサッカーロボット(オフェンスとディフェンス)、および赤外線ボールを示します。


図2: ロボットチーム「AIR」のサッカーロボットと赤外線発光ボール(出典:立命館守山高等学校

システム構成

小さなサッカーロボットには、ロボット工学の要素技術がふんだんに盛り込まれています。図3にシステム構成を示します。


図3: サッカーロボットのシステム構成(出典:立命館守山高等学校

メイン基板

メイン基板では、センサからの情報が処理され(ベクトル演算など)、ロボットの自律走行制御が行われます。MCUの高速処理がゲームの勝敗を左右します。このため、SparkFunTeensy4.1(DigiKey品番:1568-20359-ND )が採用されています。このMCUはArduino IDEでC++のプログラミングが可能ですので、使いやすいMCUの1つです。これまでのMCU(8ビット/16MHz)からTeensy4.1(32ビット/600MHz)に変更することにより、およそ38倍の高速処理が実現できています。

技術的なヒント: Teensy4.1は高速ですが、ヘッダピンに取り出せる物理的なGPIOは42本です。少ない訳ではありませんが、直接センサにアクセスするには十分ではありません。そこでTeensy4.1をメインMCUとし、2つのサブMCUが設けられました。1つはボールセンサ基板にMicrochipATmega32U4(DigiKey品番:ATMEGA32U4-AU-ND )が、もう1つはラインセンサ基板にMicrochipATmega2560(DigiKey品番:ATMEGA2560-16AU-ND )が設けられました。

ボールセンサ基板

赤外線発光ボールから放射される赤外線(940nm/40kHzパルス変調)は赤外線センサで検知されます。センサはVishayTSSP4038(DigiKey品番:TSSP4038-ND )が使われています。通常の赤外線センサ(人感センサなど)の場合、すべての赤外線に反応するのでボールを精度よく検知できません。TSSP4038 を使用することにより、ボールの赤外線のみに反応するようにできています。

技術的なヒント: 図4に示すように、TSSP4038 は赤外線発光ボールの赤外線(940nm/40kHzパルス変調)を受光し、BPFでノイズを除去し、それをパルス信号に復調してボールを検知します。よって、自然界に含まれる赤外線(非変調赤外線)には反応しません。


図4: パルス変調赤外線と赤外線センサ TSSP4038(出典:TSSP4038 データシート

ラインセンサ基板

ラインセンサ(フォトトランジスタ)でフィールドやゴールの白線が検知されます。フォトトランジスタはHarvatekB19H1LS(DigiKey品番:3147-B19H1LS–H9C000114U1930TR-ND )が採用されています。人間の目に近い受光帯域幅(390nm~700nm)を持っており、フィールドやゴールの白線検知に適しています。これまで4φ x 5mmHの砲弾型でスルーホールタイプのフォトトランジスタが使用されていました。ロボット躯体の同心円状に16個を配置する場合には問題ありませんが、48個を配置する場合には大きすぎます。このため、面実装の B19H1LS(0.8mm x 1.6mm x 0.88mm)に変更されました。非常に小型であるため、48個を配置することが可能となります。また、面実装なのでセンサの位置のばらつきが抑えられ、精度の良いセンシングが実現できています。

電源基板

リチウムポリマー(LiPo)電池の11.1V DCから5V DC電源が生成されます。DC/DC降圧コンバータとしてVin = 40V DCと高いため、Texas InstrumentsLM2576(DigiKey品番:LM2576T-5.0/NOPB-ND )が使用されています。従来の部品は、Vinmax = 14V DC定格でしたが、電池電圧に対して耐圧の余裕がなく、破損するリスクがありました。このため、耐圧に余裕のあるLM2576に切り替え、破損のリスクを軽減しています。

UnitV AI カメラ

UnitV AIカメラにより、フィールド、敵陣のゴール、および敵のロボットが認識されます。カメラにはM5StackU078-V-M12(DigiKey品番:2221-U078-V-M12-ND )が使用されています。これはデュアルコア64ビットRISC-V CPUとNNPを内蔵し、AI処理による画像認識機能を備えたカメラユニットです。以前はシュートの成功率が良くありませんでした。このカメラを搭載することにより、フィールドや敵のロボットを認識し、「敵よけ」を実現し、シュートの成功率を上げることが出来ています。

モータドライバ基板

モータドライバは、ギアモータ(減速機構内蔵ブラシ付きDCモータ)を駆動するHブリッジです。4個のTexas InstrumentsDRV8432(DigiKey品番:296-29573-2-ND )により4個のギアモータが独立制御されます。これまでPWM周波数が100kHzで、6Aピークのものが使用されていましたが、よりグレードの高い DRV8432(PWM 500kHz/2 x 7A連続/2 x 12A ピーク)を採用することにより、定格に余裕を持たせています。

開発ツール

DigiKeyでは、部品リストの作成、部品管理、プリント基板設計(KiCad)に関する無償のオンラインツールを提供しています。

部品表管理ツール

myListsは部品リストから部品情報(品番/入手性/数量/梱包形態/単価/合計金額など)の確認、見積作成、代替品提案などの部品管理を行い、発注までのすべてのプロセスをサポートします。例えば、必要な部品をDigiKeyサイト内で検索した後にわざわざメモする必要性がなく、ワンタップで部品リストに追加できます。myListsにはメイン画面とリスト画面があります。メイン画面には部品リストの一覧が示され、部品の追加や削除などはリスト画面で行います。図5にmyListsのメイン画面の例を示し、図6にリスト画面の例を示します。


図5: myListsのメイン画面の例



図6: myListsのリスト画面の例

プリント基板設計ツール

KiCadは、オープンソースの EDAツールです。回路図の作成、プリント基板のレイアウト設計、ガーバーファイルやドリルファイルの生成を行います。これらのファイルにより、プリント基板メーカーへの発注が可能です。DigiKeyではKiCad用の回路図シンボルとフットプリントライブラリ(KiCad Library/KiCad Partner Library)を提供しています。

まとめ

この記事では、世界大会に出場した立命館守山高等学校のサッカーロボットについて、その構成の概要と、採用されている主要な部品に焦点を当て、そこに込められた創意と工夫の一部を紹介しました。ここでは、ロボット躯体の構造設計、オムニホイールや各センサの位置ベクトルに基づくベクトル解析など、ロボットの「中核技術」に触れることはできませんでしたが、さらに、創意工夫と改善を重ね、世界大会優勝を達成されることを期待します。
この中で、DigiKeyは、信頼性のある幅広い部品のワンストップでの入手、さらにプリント基板設計支援ライブラリを含む一貫したサポートを提供しており、スピード感のある開発サイクルを実現するのに貢献しています。