電源の温度ディレーティング:550Wの電源が230Wしか供給できない場合がある理由


APDahlen Applications Engineer

電源の出力電力は、使用条件によって変わります。機器を長期間にわたって安定して使用するためには、最終用途において電源がどのような条件にさらされるかを考慮した、より詳細な分析が必要です。簡単に言えば、機器の設計や冷却に対する配慮が、電源の動作寿命に多大な影響を及ぼします。

図1に示すXP Powerの CCR550PS12 を用いて、これらの制約条件について説明します。これは、最大定格出力550Wのカバー付きAC/DCコンバータです。XP Powerから、出力電力と発熱の関係を詳細に解析するのに十分なデータが提供されているため、この電源は解析に最適です。この仕様をより深く理解するために、XP PowerのYour Essential Guide to Power Supplies(電源に関する必須ガイド)を参照します。この154ページにわたる優れた参考資料では、電源の概要を紹介するとともに、高温時の冷却やディレーティングといった高度なトピックについても解説しています。

主な要点

  • 使用可能な電力と機器寿命は設計によって決まります。これは、定格電力をフルに利用するには条件があるためです。
  • 機器の板金製エンクロージャが十分な冷却能力を持つとは考えないでください。
  • 特にエンクロージャが密閉型の場合は、高温環境を想定して設計してください。
  • 理想的な条件を前提に設計しないでください。機器の寿命は数十年単位になることがよくあります。大量のほこりの蓄積やフィルタの不十分な保守によって、熱性能が低下する可能性があります。
  • 電源の銘板に記載された出力値は、適切な条件下でのみ得られます。ヒートシンクが不十分な場合、コンデンサの寿命、ひいては機器の寿命が大幅に短くなります。

図1: 筆者の作業台に置かれたXP Powerの電源の写真

CCR550の出力電力はどれくらいですか?

ここで取り上げる電源の出力電力は、冷却方式に完全に依存します。

  • 230W:自然対流冷却
  • 450W:伝導冷却
  • 550W:ファン冷却

これを具体的に理解するために、450Wの出力仕様について考えてみましょう。これは、熱抵抗1.0°C/Wのヒートシンクを使用することで実現できます。使用可能なソリューションの1つとして、自然冷却(ファンなし)時の熱抵抗が1.04°C/WのWakefieldの 127684 があります。このアルミニウム製ヒートシンクの設置面積は108平方インチ、高さは0.9インチです。

この自然対流式ヒートシンクの設置面積は、電源本体の約6倍にもなります!これは非常に重要な点です。なぜなら、設計者は機器のシャーシをヒートシンクとして使いたくなる傾向があるからです。極めて堅牢な金属製エンクロージャを除けば、この巨大な1.0°C/Wのヒートシンクよりも熱抵抗が高くなるため、明らかにこの方法では対応できません。なお、冷却ファンを使用することで、ヒートシンクのサイズを縮小できる場合があります。

図2: CCR550シリーズ電源のデータシート仕様

長期にわたって高温状態が続くと、どのような問題が生じますか?

高温になると、特に電解コンデンサなどの部品の故障が加速します。図3に示すように、ここで取り上げる電源は半ポッティング構造である点に留意してください。そのため、すべての部品は同じ温度になります。言い換えれば、コンデンサの温度は電源の金属ベースと同じになります。

XP Powerの資料では、コンデンサの状況について次のように明確に説明しています。

これらのデータシートには通常、主要な電解コンデンサの温度に基づく推定耐用寿命曲線も記載されています。電解コンデンサは、電源内で摩耗故障のメカニズムを持つ唯一の部品です。

XP Powerの資料には、次の有益な記述もあります。

すべての電解コンデンサの寿命計算は、アレニウスの式に基づいています。この式によれば、温度が10°C低下するごとに反応速度は半分になり、その結果、寿命は2倍になります。このため、温度は、最終用途全体の耐用寿命や保守間隔を左右する極めて重要な要素となります。

アレニウスの式については、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。その記事では「10°C2倍則」を紹介しており、これは温度が10°C上昇するごとに機器の寿命がおよそ半分になるという、有用な経験則を示しています。ただし、その記事では、リップル電流もコンデンサの寿命に影響を与えることを指摘しています。

出力コンデンサへの10°C2倍則の適用

Gemconの出力コンデンサを図3に示します。これらのGPHシリーズの導電性ポリマーアルミ固体コンデンサは、125°Cという最高動作温度において2000時間の寿命を有しています。簡易的な計算によると、約30年の耐用年数を確保するには、温度を55°C以下に保つ必要があります。なお、この計算には、リプル電流の計算や、スイッチング電源の高周波信号成分による自己発熱は含まれていないことに留意してください。また、55°Cという温度は、人が触れるには非常に高温で、これは、火傷をするほど熱いお湯のようなものです。

簡略化した10°C2倍則を用いると、電源の寿命は次のように表すことができます。

  • 125°Cで2,000時間(83日)
  • 115°Cで4,000時間(167日)
  • 105°Cで8,000時間(0.9年)
  • 85°Cで32,000時間(3.7年)
  • 75°Cで64,000時間(7.3年)
  • 65°Cで128,000時間(14.6年)
  • 55°Cで256,000時間(29年)

技術的なヒント: 鎖の強度が最も弱い部分によって決まるように、製品寿命はシステム全体を考慮した総合的なものとして捉えましょう。例えば、図4に示す固体ポリマーコンデンサは、この単純な推定値が示すよりもはるかに長い寿命を持つ可能性があります。Würth ElektronikのアプリケーションノートANP701には、次のような参考になる記述があります。

液体電解コンデンサでは、温度を10°C下げると、予想寿命は2倍になります(式2)。
ポリマー電解コンデンサでは、温度を20°C下げると、寿命は10倍になります(式1)。

なお、Würth Elektronikのアプリケーションノートでは、DigiKeyで入手可能な同様のコンデンサについても言及されています。

図3: XP Powerの CCR550PS12 に搭載された、半ポッティング構造の出力フィルタコンデンサ

短期間の極端な高温状態では、どのような問題が生じますか?

長期的な動作寿命は、主にコンデンサの劣化によって決まります。50°Cを超える環境での動作は望ましくないことは、すでに確認しました。しかし、図4を見ると、50°Cから80°Cにかけて定格が低下する傾斜が確認できます。このような極端な高温下での短期間の動作は、主に半導体の制約によって決まります。これは、高温で動作する半導体に適用される、典型的な線形ディレーティング曲線です。

実際、これはかなり注目すべき点です。多くの半導体は、25°Cを超える動作温度では、摂氏1度上昇するごとに一定の電力値だけ定格が線形に引き下げられるからです。XP Powerの電源でディレーティングが50°Cから始まるという事実は、設計マージンが大きいことを示しています。また、これは熱抵抗があるため、電源のシャーシ温度が半導体の接合部温度よりも低くなるという事実も反映しています。

もう1つの例として、青色の曲線(110V ACでの対流冷却)と紫色の曲線(220V ACでの対流冷却)の温度ディレーティング曲線を見てみましょう。電源の定格出力は、それぞれ230Wおよび260Wです。この2つの曲線の差は、整流後の電圧と、供給電圧が低い場合に流れる大きな電流に関連していると考えられます。これは、電流が増加すると損失が大きくなる(発熱が増加する)こと、あるいは単に、入力電圧が低いほど効率が低下することと解釈できます。

図4: XP Powerのデータシートに掲載されている温度ディレーティング曲線

電源の動作チェックリスト

最後に、機器設計に関する経験則をまとめておきましょう。

  • ファンの騒音は、特にAV機器や医療機器では、問題となります。電源をディレーティングして使用するか、回転速度の低い(静音性の高い)ファンを備えた大型のヒートシンクを採用するのが適している場合があります。

  • 汚れは冷却効率を低下させます。図5は、ほこりが蓄積したことで、古いファン冷却式電源の冷却効率が低下した極端な例を示しています。ほこりの蓄積を想定して、機器を設計してください。

  • 長い動作寿命を実現するには、温度を50°Cより十分に低く維持してください。そのためには、機器の寿命、サイズ、ファン冷却要件、およびヒートシンクのサイズの間で適切なバランスを取る必要があります。

  • 極端な高温環境下での間欠動作がやむを得ない場合もあります。ただし、間欠動作が実質的な連続動作とならないよう注意する必要があります。例えば、80°Cという上限付近で動作させると、機器の寿命が数十年から数年へと短縮されてしまいます。

  • 機器に温度検知機能を追加することを検討してください。私たちは誰でも、機器を小さなエンクロージャに設置し、意図せず空気の流れを遮ってしまうことがあります。過熱状態をオペレーターに通知することで、機器の寿命を延ばせる可能性があります。

図5: 古いファン冷却式電源へのほこりの侵入

著者について

Aaron Dahlen氏、元米国沿岸警備隊(USCG)少佐(LCDR)は、シーフリバーフォールズにあるDigiKeyのシニアアプリケーションエンジニアを務めています。エレクトロニクスおよび産業オートメーションに関する彼の知識と経験は、技術者およびエンジニアとして従事した27年間の軍歴と、その後10年以上にわたる教育経験を通じて培われました。

Dahlen氏は、ミネソタ州立大学マンケート校で電気工学修士号(MSEE)を取得しています。また、ABET認定を受けた電気工学プログラムで教鞭を執ったほか、電子工学技術プログラムのコーディネーターを務め、軍の技術者に対して部品レベルの修理技術を指導してきました。

現在は、ミネソタ州北部の故郷へ戻り、コンデンサ探しから始まった数十年にわたる旅を終えました。 彼の物語はこちらからお読みください。




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