Bluetoothを使用したスマートフォンによるCrouzetのPLC制御


APDahlen Applications Engineer

Crouzet Millenium SlimはBluetoothインターフェースを搭載した小型のPLCです。これにより、Crouzet Virtual Displayを使用して、スマートフォン、タブレット、またはPCからリモート制御が可能になります。このBluetoothリンクにより、小規模の産業用システムを監視および制御することができます。

この技術概要では、古典的なスタート/ストップ回路の改良点について紹介します。図1に示すように、赤色のストップボタンと緑色のスタートボタンを使用したローカル制御を備えています。リモート/ローカルの切り替えスイッチは、Bluetoothベースのリモート制御を可能にするものです。最後に、リモート制御(動画1に示すようなスマートフォンベースのユーザーインターフェース)は、機器の状態を表示し、ユーザーがリモートで機器をスタート/ストップすることを可能にします。

注: 推奨部品リスト(単品販売)はこちらに示されています。

コードはここからダウンロードできます。RemoteLocalCell.gprs(69.9 KB)

図1: スマートフォンのディスプレイ(図に無し)を含むCrouzetのPLCのリモート/ローカル制御用テストプラットフォームの画像

動画1: ローカルおよびスマートフォンによるリモート制御のデモンストレーション

リモート制御の安全性

機器のリモート制御には、さまざまな安全上の問題があります。オペレーターが物理的に現場に存在せず、プロセスに注意を払っていないという事実は、最大の危険の1つです。どのようなコンピュータや無線制御システムでも、問題が発生する可能性があり、リモートリンクの完全性について疑問があります。また、サイバ ーセキュリティに関する考慮事項も数多くありますが、この記事の範囲を超えています。

とは言え、システムがすべての地域、州、連邦および各国の規制に準拠していることを確認するために、専門の産業制御エンジニアに相談してください。

ローカル制御の安全性

図2はシステムのファンクションブロック(FB)プログラムを示しています。これにはいくつかの巧妙なフェイルセーフの仕組みが含まれています。

  • パワーオンリセット:図の中央にはSTATUSブロックがあります。「Cold init」信号と「Hot init」信号は OR 処理された後、右上のSET/RESETブロックに送られます。これにより、予期しない電源投入による起動が防止されます。この重要なブロックでは、リセットがセットより優先されることに注意してください。

  • リモート切り替えスイッチ:システムは フェイルセーフによりローカル操作に戻るようにプログラムされています。例えば、ワイヤが断線した場合、リモート制御は無効になります。

  • ノーマリクローズのストップ押ボタン:赤色のストップ押ボタンはノーマリクローズスイッチ機構を備えています。ワイヤの断線によるフェイルセーフは、システムを停止さ せます。

  • どちらの位置からでも停止:リモートの押ボタンとローカルの押ボタンは常に有効です。これは、機器をストップさせるために筋肉の記憶を利用するという、ユーザーの自然な傾向を反映した人的要因への配慮です。別の言い方をすれば、ストップ機能は常に同じように動作します。

  • 黄色の安全装置:この記事は、PLCの機能を紹介するデモンストレーションです。外部の実験用電源から供給される低電圧24V DCが特徴です。必要な緊急停止、インターロック、または関連する安全装置は含まれていません。サイトおよび装置固有の安全性分析を実施して、安全上の危険性を判断する必要があります。これを使用して作業員の安全を確保し、すべての地域、州、連邦および各国の規制を遵守してください。

  • その他:安全に関するご意見をコメント欄に記入してください。何か見落としていることはありますか?

図2: Millenium Slim PLCのファンクションブロック(FB)プログラムのスクリーンショット。この機器の心臓部は、赤く塗られた表示部のすぐ上にあるSET/RESETブロックです。

技術的なヒント: CrouzetのPLCはファンクションブロック(FB)とシーケンシャルファンクションチャート(SFC)を使用してプログラミングされます。
図2の例は純然たるFBです。CrouzetのSFCについての詳細は、こちらの記事を参照してください。

ローカル制御

ローカル制御は、緑のスタートと赤のストップの押ボタンで構成されています。図2には、それぞれLocalStartPBとLocalStopPBとして識別された関連信号が示されています。ストップ押ボタンのノーマリクローズ接点を正論理信号に変換するためにインバータが使用されていることに注意してください。また、インバータは正論理のLocal信号(例えば、RemoteでなければLocal)を生成するために使用されていることにも注意してください。

図2の中央上部のANDゲートは、SET/RESETブロックのイネーブル信号を提供します。もし「Local信号とLocalStartPB信号の両方が「真」の時」、機器は動作状態になります。ストップ機能については、以下の技術的なヒントを参照してください。

技術的なヒント: 正論理という用語は、信号がアクティブなときに「真」になることを意味します。例えば、ノーマリクローズのストップ押ボタンからの入力を考えてみましょう。この信号は負論理で、押ボタンが押されていないときに「真」になります。この信号をインバータにかけることで、ボタンが「押されていない」ときは「偽」になり、「押されたとき」は「真」になります。そして、「LocalStopPB信号、RemoteStopPB信号、SysReset信号の何れかが「真」の時、SET/RESETブロックのRESETラインを通して機器はストップします」などの、明確でわかりやすいステートメントを作成できます。

リモート制御

リモート制御のメカニズムはローカル制御と同じです。図2の左下のブロックから始まります。ここでは、HMI(スマートフォンの画面)のAファンクションボタンとBファンクションボタンからそれぞれRemoteStartPB信号とRemoteStopPB信号が引き出されています。RemoteStartPB信号は、SET/RESETブロックのセット入力に送られる前に、Remote信号とAND処理されます。RemoteStopPB信号の動作については、上記の技術的なヒントで説明しています。

ストップ機能は、ローカルとリモートの両方で有効です。従って、ユーザーはどちらの方法でも機器をいつでもストップさせることができます。ただし、スタート機能はローカル/リモート切り替えスイッチの位置によって決まります。

表示画面

ハイライトされた表示部には4つの独立したセクションがあります。このロジックでは、常に1つの表示ブロックだけがアクティブになります。

  • ローカルと待機状態(Local control, Status:Idle)
  • ローカルと動作状態(Local control, Status:Running)
  • リモートと待機状態(Remote control, Status:Idle)
  • リモートと動作状態(Remote control, Status:Running)

各ブロックは、次に何をすべきかの指示とともに、固有のステータスメッセージをユーザーに提示します。図3に例を示します。システムはリモートと待機状態にあり、ユーザーがAボタンを押して機器をスタートさせるのを待っています。

図3: システムがリモートと待機状態での、代表的なユーザー画面。この画像は、Crouzet-Softシミュレーションによるものです。

おわりに

CrouzetのPLCは、スマートフォンベースのリモート制御を可能にする高度な機能を備えており、またプログラムが容易です。FB言語により、迅速で簡単にプログラム開発ができます。しかし、安全性の複雑さは残ります。産業用制御システムを注意深く分析する必要があります。すべてのコーナーケースを含め、ユーザーの安全に関してプロセスを理解する必要があります。

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ご健闘をお祈りします。

APDahlen

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著者について

Aaron Dahlen氏、LCDR USCG(退役)は、DigiKeyでアプリケーションエンジニアを務めています。彼は、技術者およびエンジニアとしての27年間の軍役を通じて構築されたユニークなエレクトロニクスおよびオートメーションのベースを持っており、これは12年間教壇に立ったことによってさらに強化されました(経験と知識の融合)。ミネソタ州立大学Mankato校でMSEEの学位を取得したDahlen氏は、ABET認定EEプログラムで教鞭をとり、EETプログラムのプログラムコーディネーターを務め、軍の電子技術者にコンポーネントレベルの修理を教えてきました。彼はミネソタ州北部の自宅に戻り、このような記事のリサーチや執筆を楽しんでいます。




オリジナル・ソース(English)