APDahlen Applications Engineer
3線式スタートストップ回路とは何でしょうか?
3線式スタートストップ回路は、一般的に大型の産業用モータを遠隔操作で起動と停止を行うために使用されます。最小限の回路は、2つのプッシュボタンとモータスタータで構成されます。この定義は正しいですが、3線式回路はそれ以上のものです。実際、この回路によって具現化される原理は、産業用制御システムという大きな分野を理解するために不可欠であると言うことができます。シーケンス回路の構築に次いで、これはすべての産業制御およびオートメーションの学生が習得しなければならない回路です。
この記事では、図1に示すPhase Dockトレーナを使用して3線式回路を検討します。停止(赤)と起動(緑)のプッシュボタンと小型三相モータスタータを備えています。
図1: Phase Dockトレーナには、3線式モータスタータ回路のコンポーネントが収納されています。
モータスタータに関する補足情報
この記事は、モータスタータを紹介し、その重要で時には捉えにくいアプリケーションを探る、より大きなテーマの一部です。詳細については、以下の関連記事を参照してください。
なぜ回路が重要なのでしょうか?
3線式回路は一般的でよく知られた構成要素であるため、この回路は重要です。産業用では、ツインプッシュボタンのスタートストップモータスタータとして使用されています。さらに重要なのは、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)のラダーロジック(LL)言語が構築される構成要素の1つであることです。この回路を知ることで、産業用オートメーションや制御機器における後続の仕事の準備が整います。
回路はどのように機能しますか?
回路の配線図を図2に示します。プッシュボタンのクローズアップ画像は、図3のとおりです。3つの一般的なコンポーネントがあることに注意してください。
- 停止プッシュボタン: 赤色(停止)モメンタリプッシュボタンは、ノーマリクローズ接点を備えています。これは、図3の赤いスイッチブロックにNC(ノーマリクローズ)と表示されていることからも明らかです。
- 起動プッシュボタン: 緑色(起動)のモメンタリプッシュボタンのノーマリオープン接点は、図3のNOラベルで確認できます。
- モータスタータ: モータスタータは、図1に示す3つの部品から構成されています。これには、ベースとなる三相コンタクタ、過負荷ブロック(前面)、補助接点ブロック(上面)があります。図1をよく見ると、小さな赤い四角いプッシュボタンと小さな青い四角いプッシュボタンがあり、それぞれ「STOP」と「RESET」と表示されています。これらは、過負荷ブロックをテストし、モータに過負荷が発生した場合にデバイスをリセットするために使用されます。
図2: KiCadを使用して開発した3線式スタートストップ回路の配線図
図2に戻って、モータスタータの構成部品が3箇所に描かれていることを確認してください。M1と表示されたコイルは図の中央付近にあり、過負荷ブロック(Overload)は右側にあり、ノーマリオープンの補助接点(M1)は起動(Start)プッシュボタンと並列に接続されています。また、過負荷がなく、停止(Stop)プッシュボタンが押されていない場合にのみ、ラング(梯子の横棒)の導通が可能となる(M1コイルが駆動される)ことを確認してください。
メモリは3線式回路の重要な構成要素です。
この回路はラッチ(何かを所定の位置に保持する仕組み)を特徴としています。これは、リレーがノーマリオープン接点を介して自身のコイルに電力を供給し、リレー自身をラッチするフィードバックまたはメモリの1つの形態です。
コイルの作動
図2に戻ると、ラングに導通があるとM1コイルが作動することが分かります。ブール論理の言い方をすれば、M1コイルは、「停止ではなく、起動しており、過負荷でもない」ときに作動します、ということになります。一旦M1コイルが作動すると、M1補助接点(緑の起動プッシュボタン「Start」と並列)は閉じ、M1コイルに電力を供給するための代替経路が成立します。この経路は、オペレータが起動プッシュボタン(Start)を離した後も維持されます。
コイルの解放
M1コイルは、ラングに導通がある限りアクティブのままです。停止プッシュボタンを押すとシステムは停止します。同様に、過負荷ブロックによってモータの過負荷が検出されると、導通は遮断されます。
これらの動作が合わさって、一種の原始的なメモリを形成しています。M1補助接点には1ビットの情報が保持されています。このメモリビットは、最後に押されたプッシュボタンを「記憶」しています。
技術的なヒント: あらゆる制御システムにおいて、予期せぬ、あるいは意図的なオペレータの誤操作に対して、それがどのように反応するかを検証する必要があります。安全を優先し、ミスを積極的に軽減しなければなりません。この例では、オペレータはスタートとストップの両方の押しボタンを押す可能性があります。図2をよく見ると、停止ボタンが優先されていることが分かります。
3本のワイヤはどこにあるのでしょうか?
この回路の名前は、スイッチアセンブリに接続されるワイヤの本数に由来します。3本のワイヤは図3に明確に示されています。図2のワイヤの呼称を使用します。
- ラング1のワイヤ1は、停止プッシュボタン(Stop接点)を24V DCに接続します。
- ラング1のワイヤ2は、停止プッシュボタン(Stop接点)と起動プッシュボタン(Start接点)、および補助接点ブロックのノーマリオープンの補助接点(M1)を接続します。
- ラング1のワイヤ3は、起動プッシュボタン(Start接点)とモータスタータの補助接点M1(メモリ)を、コンタクタのM1コイルに接続します。
技術的なヒント: 理論的には、モータスタータを遠隔操作するのに必要な配線は3本だけです。実際には、特に120V ACシステムを使用する場合は4本の配線が必要です。4本目のワイヤは、リモートボックスの金属部分を接地するための安全アースです。この接地がないと、ボックス内で異常が発生した場合、オペレータが高電圧にさらされる可能性があります。リモートデバイスを含むコントロールパネルの配線は、該当する州および米国のすべての規制に従ってください。
図3: ノーマリオープン(緑色の起動用)とノーマリクローズ(赤色の停止用)のプッシュボタンにつながる3本のワイヤを示すクローズアップ画像
技術的なヒント: 2線式モータ制御回路を構成することは可能です。モメンタリプッシュボタンを使用する代わりに、セレクタスイッチを使用します。このスイッチは、家庭の壁に取り付けられた照明スイッチのようなもので、1つの位置がオンで、もう1つの位置がオフになっています。
2線式制御はシンプルで信頼性の高い回路ですが、回路が誤動作すると混乱を招きます。例えば、図2の過負荷(Overload)接点を考えてみましょう。これが開くと、モータを保護するためのモータ制御装置が無効になります。2線式制御では、物理的な「オン」スイッチの位置と、無効化されたモータの実際の状態との間に不一致が生じます。3線式スイッチでは不一致はあり得ませんので、このような問題は起こりません。この状況を別の観点からみると、原始的なソフトウェアが回路を制御していると言えます。必要であれば、ソフトウェアはモータの状態を変更することができるし、変更する用意ができています。勉強を続けるうちに、特に人間と機械の相互作用の複雑さを考慮すると、この区別はより重要になるでしょう。
まとめ
3線式スタートストップ回路は、産業用制御およびオートメーションシステムの基本的な構成要素です。この回路は、すべての学生が識別し、迅速に構築し、トラブルシューティングできるようにする必要があります。この例では、最も純粋なアプリケーションである小型モータスタータを使用しています。しかし、SPDT(単極双投)リレーを使用しても動作は同じです。実際、さまざまなコンタクタやリレーを使用して回路を組んでみることをお勧めします。その過程で、いくつかの配線ミスを引き起こすことは確実です。バグを解決しながら、真の学習が行われます。これは、ラダーロジックを使用したPLCベースの回路に移行する際にも役立ちます。
ご健闘をお祈りします。
APDahlen
著者について
Aaron Dahlen 氏、LCDR USCG(退役)は、DigiKeyでアプリケーションエンジニアを務めています。彼は、技術者およびエンジニアとしての27年間の軍役を通じて構築されたユニークなエレクトロニクスおよびオートメーションのベースを持っており、これは12年間教壇に立つことによってさらに強化されました(経験と知識の融合)。ミネソタ州立大学Mankato校でMSEEの学位を取得したDahlen氏は、ABET認定EEプログラムで教鞭をとり、EETプログラムのプログラムコーディネーターを務め、軍の電子技術者にコンポーネントレベルの修理を教えてきました。彼はミネソタ州北部の自宅に戻り、このような記事のリサーチや執筆を楽しんでいます。LinkedIn | Aaron Dahlen - Application Engineer - DigiKey