APDahlen Applications Engineer
非常停止押ボタンは、産業用制御機器やオートメーション機器の一般的なユーザーインターフェースです。この堅牢な装置は、機械やプロセスを安全な状態にするために、緊急時に「押され」ます。図1に示すSchneider ElectricのXB5AS8444のような、黄色いアクセントのある大きな赤いデバイスは識別が容易です。
この技術概要では、非常停止押ボタンの物理的および電気的特性を調べ、この重要な安全装置がより大きなシステムにどのように組み込まれるかについて簡単に説明します。非常停止押ボタンの特性は視認性、冗長性、および継続的な監視の観点から定義され、定期的なテストと検査が重要な考慮事項となります。
図1: SchneiderのHarmony XB5AS8444非常停止押ボタンの写真。左側は22mmのラッチ機構で、右側は2つのノーマリクローズスイッチです。
技術的なヒント: 非常停止押ボタンは、ノーマリクローズ接点を備えています。これは、スイッチ接点の連続監視を可能にする重要な要件です。これにより断線や短絡故障を検出し、欠陥のある機械を停止させることができます。スイッチがオープンのためか、ワイヤが断線しているためなのかを見分ける方法がないため、ノーマリオープンのスイッチは不適切です。
非常停止押ボタンの物理的特性
緊急時には考えている暇はありません。
この1つの考えが、非常停止押ボタンと関連機器の設計に盛り込まれています。非常停止装置のヘッドは赤色です。また、他のコントロールパネルのスイッチよりも物理的に大きくなっています。サイズと色により、スイッチを緊急時に簡単に見つけることができます。
スイッチには内部ラッチ機構が備わっています。一度押されると、非常停止ボタンはオフの位置のままです。人的要因の観点から見ると、スイッチは簡単に作動しますが、リセットするのは困難です。言い換えると、1回のプッシュ操作で緊急停止状態になりますが、今回紹介したSchneider Harmonyのデバイスのようなスイッチのほとんどは、機械的なラッチを解除するためには、ひねってから引くという2つの動作を必要とします。
技術的なヒント: 機械の設計には電気的な機能だけでなく、人的要因の考慮も含まれます。電気的には、スイッチはすべてのエネルギー源を取り除くという単純な機能を持ち、それによって直接的な危険を排除します。ただし、機械がリセットされたときに予期せぬ再始動が起こらないように注意する必要があります。これが、危険なセレクタスイッチ制御ではなく、ラッチ式の押ボタン式スタートストップコントローラが普及している理由の1つです。非常停止が解除された後に作動させなければならない別のスタートまたはリセット押ボタンを実装することによって、保護層を追加することが望ましいです。オペレーターの頭の中では、非常停止機能と機械の始動操作は全く別なものとして捉えています。
図2: 組み立てられたSchneider Harmonyの非常停止押ボタンXB5AS8444の写真。2つのノーマリクローズスイッチ接点ブロックがあることを確認してください。
技術的なヒント: 視認性、継続的な監視、および冗長性と同様に、非常停止装置の定期的なテストと点検は重要で、スイッチ本体の物理的な故障や接点ブロックの損傷や接触不良を防ぎます。
電気接続
図2に、組み立てられた非常停止押ボタンを示します。このスイッチは、2つのノーマリクローズのスイッチ接点ブロックZBE-102で構成され、販売されていることに注意してください。この事実は、非常停止スイッチにとって冗長性が重要な考慮事項であることを意味しています。
安全リレー
産業用制御とオートメーションの安全システムについての詳細な議論は、この記事の範囲を超えています。しかし、図3に示す代表的な安全リレーSchneider ElectricのSBAC14ACについて簡単に説明する必要があります。
非常停止スイッチに関しては、安全リレーが両方の非常接点スイッチブロックを連続的に監視します。断線やショートなどの故障はすぐに認識されます。そのとき、安全リレーが関連機器をシャットダウンし、安全上の危険を取り除きます。
技術的なヒント: 安全リレーは通常、独立した安全機構として実装されます。ここでいう独立とは、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)から切り離されたハードワイヤードロジックと解釈するのが最も適切です。これは、安全機能がソフトウェアからほとんど独立していることを意味するため、重要な考慮事項です。特別に設計された安全PLCを使用する場合、状況はより複雑になります。設計者は、機器を安全かつ整然とシャットダウンするために、制御面と安全面を分離することに細心の注意を払わなければなりません。
図3: Schneider Electricの安全リレーSBAC14ACは、冗長非常停止スイッチ接点の連続監視を行います。
まとめ
非常スイッチは、より大きな安全システムの一部です。スイッチ自体は、視認性と冗長性の観点から説明されています。安全システムが冗長接点を監視することで、システムの完全性が高まります。しかし最終的には、定期的なテストと検査なしに100%安全なシステムはありえません。
皆様のご意見をお聞かせください。ご意見ご感想は下記の欄にご記入ください。また、このノートの最後に掲載されている問題や批判的思考を使う問題に答えて、知識を試すようにしてください。
ご検討をお祈りします。
APDahlen
著者について
Aaron Dahlen 氏、LCDR USCG(退役)は、DigiKeyでアプリケーションエンジニアを務めています。彼は、技術者およびエンジニアとしての27年間の軍役を通じて構築されたユニークなエレクトロニクスおよびオートメーションのベースを持っており、これは12年間(一部、軍での経験を織り交ぜて)教鞭をとったことによってさらに強化されました。ミネソタ州立大学Mankato校でMSEEの学位を取得したDahlen氏は、ABET認定EEプログラムで教鞭をとり、EETプログラムのプログラムコーディネーターを務め、軍の電子技術者にコンポーネントレベルの修理を教えてきました。彼はミネソタ州北部の自宅に戻り、このような記事のリサーチやエレクトロニクスとオートメーションに関する教育記事の執筆を楽しんでいます。
注目すべき経験
Dahlen氏は、DigiKey TechForumに積極的に貢献しています。この記事を書いている時点で、彼は150以上のユニークな記事を作成し、さらにTechForumへ500にものぼる投稿を提供しています。Dahlen氏は、マイクロコントローラ、VerilogによるFPGAプログラミング、膨大な産業用制御に関する研究成果など、さまざまなトピックに関する見識を共有しています。Dahlen氏の産業関連記事は 産業用制御とオートメーションのインデックスでご覧いただけます。
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問題
以下の問題は、記事の内容を補強するのに役立ちます。
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非常停止アセンブリにノーマリクローズのスイッチ接点が使用されているのはなぜですか?
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非常停止アセンブリに2つのノーマリクローズのスイッチが使用されているのはなぜですか?
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正/誤:機械を停止させるすべての信号には、ノーマリクローズのスイッチ接点を使用すべきです。
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正/誤:機械を始動させるすべての信号には、ノーマリオープンの接点を使用すべきです。
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前の2つの正/誤の問題について説明しなさい。 ヒント: どんな問題が起きる可能性があるでしょうか?
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非常停止スイッチアセンブリからノーマリクローズの接点ブロックの1つが物理的に不具合になった場合の機械の応答について説明してください。
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各緊急スイッチの特性の重要性を説明してください。
A) 視認性
B) 継続的な監視
C) 冗長性
D) 定期的なテスト -
非常停止スイッチと組み合わせて使用する場合の安全リレーの目的は何ですか?
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非常停止に関連する、断続的にワイヤが接触不良になる症状について説明してください。安全リレーが使用されていると仮定します。
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緊急始動のラッチがリセットされると、機械が自動的に再起動するのはなぜ危険なのですか?
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安全リレーの冗長機能について、少なくとも2つ説明してください。
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なぜ非常停止スイッチには物理的なロックとキーがあるのですか?
批判的思考を使う問題
これらの批判的思考の問題は、記事の内容を発展させ、その内容や隣接するトピックとの関係を全体像として理解することができます。このような問題は、自由回答形式であることが多く、リサーチが必要であり、エッセイ形式で答えるのが最適です。
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非常停止スイッチ内部の物理的なラッチ機構が壊れたとします。機械はどのように対応すべきでしょうか?
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すべてを考慮すると、なぜ単純な非常停止回路を構築することが望ましいのでしょうか?
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「安全PLC」と安全リレーの類似点を調べ、説明してください。
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安全度水準(SIL)リスクアセスメントを実施する際には、どのような機械的要因と人的要因を考慮するのですか?