ESD(静電気放電)イベントを吸収するために特別に作られたチップコンデンサもありますが、一般的に「ESD用コンデンサ」と呼ばれるものは、PCBのコネクタに直接配置された通常のチップコンデンサに過ぎず、コネクタで発生したESDイベントを吸収し、ESDイベントがPCB へと移動し、コンポーネントに損傷を与えないようにします。一般的には、小さい容量値(0.1uFが最も一般的)、0603サイズ(ESDによる破壊を避けるためには十分な大きさの物理的サイズが必要)、中電圧(50Vや100Vが最も一般的)のMLCCが使われます。例として、下の回路図のC3-C5は、すべて「ESD用コンデンサ」という目的を持っています。
ESD用 コンデンサは、一般的に信頼性の高い自動車用電子機器や産業用電子機器でよく見られるもので、多くの場合、PCB/ユニットの各コネクタピンを一つひとつ繰り返し試験して、ESDイベントによる損傷がないことを確認しています。このようなESDイベントは、特に車両や機械の製造時やメンテナンス時に、電気コネクタの抜き差しが行われている場合によく見られます。コネクタのピンは事実上外界にさらされているため、人間用と機械用のどちらのモデルでも ESD イベントは容易に発生する可能性があり、ESD用コンデンサの配置やその他の ESD 保護デバイスのコストは、壊滅的な(特に潜在的な人命の損失にもかかわる)、あるいは高額となる(プリント基板上のランダムな IC が ESD で焼けたためにエンジン制御ユニット全体を交換しなければならないなど)故障対応を避けるために支払う価値があります。
ESDイベント用として特別に作られた「ESD用コンデンサ」は、通常、破壊に対してより強固なものにするために、わずかに従来品と異なる多層構造で構成されています。通常はより高価ですが、より小さなサイズ(例えば0402)のチップコンデンサを基板上に配置することができるため、ピン数の多い設計で基板のスペースが限られている場合には、有効です。
では、なぜすべてのピンにESDコンデンサが付いていないのでしょうか?PCB上のいくつかのネットは、通常、ある種の高速デジタル通信信号であるため、余分な静電容量に耐えられません。前の図では、RS485ラインは信号が歪まないようにTVS(低容量)保護スキームを採用しています。実際のボードレイアウトは以下のようになります(画像提供:Texas Instruments SLLA292A)。
RS485 は、例えば USB のようなものに比べて高速度というわけではありません。特にUSB のような高速伝送用として、超低静電容量 ESD ソリューションもございます。