IGBTのタイプ入門:PT、NPT、FS、およびパワーエレクトロニクスの動向


APDahlen Applications Engineer

要約

記事の注目ポイント:

  • GBTはPT、NPT、およびFSのバリエーションがあり、単体またはモジュールで入手できます。

  • パワーエレクトロニクスの技術は連続的です。IGBTの右側には、最高出力のSCRとGTOがあります。左側にはMOSFETがあります。この分野では変動があり、IGBTは最高出力領域に拡大し、SiC技術によって可能になったMOSFETはIGBTの領域に拡大しています。

  • FSタイプのIGBTは、前のPTおよびNPTタイプの大部分に取って代わりました。DigiKeyの一般向けカタログによると、FSモジュールの入手可能性は以前の技術と比較してほぼ10倍に増えています。

  • IGBTは非常に強力なデバイスですが、ESDの影響を受けやすく、MOSゲートを損傷する可能性があります。


図1: DigiKeyが提供する最大級のIGBTモジュール、Infineon FZ2400R17HP4B2BOSA2の画像。このIGBTモジュールの定格は1700V、2400Aです。

絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)には、パンチスルー(PT)、ノンパンチスルー(NPT)、フィールドストップ(トレンチ)FSなどの種類があります。この技術概要では、IGBTファミリについて、現在および今後の動向に焦点を当てながら簡単に紹介します。

IGBTのルーツは1960年代後半に遡り、比較的新しい発明であることを認識することから始めましょう。この技術は1990年代に開花し、世紀の変わり目には大電力アプリケーションを支配するようになり、最高出力レベルを除くすべてのレベルでサイリスタを追い越しました。

新しい洗濯機から1000馬力の産業用ドライブに至るまで、モータドライブにはIGBTが使用されている可能性が高いです。メーカー各社は、この技術の電力限界に絶えず挑戦しており、図1に示す強力なInfineon FZ2400R17HP4B2BOSA2などのデバイスを生み出しています。このデバイスの設計最大定格は1700V、2400A、消費電力は13kWです。それでも、ゲート定格はわずか±20Vです。

技術的なヒント: ゲート端子への静電気放電によって最も強力なデバイスでさえ破壊される可能性があるため、IGBTの取り扱いには細心の注意が必要です。これは直感に反することですが、いくつかのIGBTモジュールは非常に大型でありながら、すべてのMOSFETに共通する金属酸化物ゲート構造を備えています。したがって、±20Vを超えると絶縁体は損傷します。この損傷はすぐには分からないかもしれませんが、デバイスの寿命は確実に短くなります。

IGBTおよびMOSFETの保管および取り扱いについては、常に静電気放電(ESD)手順に従ってください。

パワーエレクトロニクスの要件

パワーエレクトロニクスの要件は通常、以下の観点から決定されます。

  • 基本的な電圧および電流特性

  • 効率

  • ターンオンとターンオフの時間を含む速度

  • 短絡、過渡電圧、熱現象に対する耐久性

同時に、コースに応じたホース(馬)がある(「餅は餅屋」の意味)ことを認識する必要があります。家庭用のIHコンロに最適化された装置は、小型モータドライブや溶接機と同じ電気的および機械的要件を持っているわけではありません。したがって、半導体設計者は、特定アプリケーションの性能を最適化するために、特定のデバイス属性を優先します。その結果、それぞれのニッチなアプリケーションに対応した多種多様な IGBT が誕生しました。

長年にわたり、IGBT技術はこのようなニッチな機会に明確に焦点を合わせて改良されてきました。設計者はPTデバイスから始め、NPTを追加し、ニッチアプリケーションのための様々なデバイスでFSが続きました。この上昇傾向は、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などの新技術が利用可能になったことで、今後も続くと思われます。また、MOSFETとIGBTアプリケーションの境界線が曖昧になっていることにも触れておくべきでしょう。高電圧および大電流アプリケーションではIGBTが依然として優勢ですが、MOSFETもそれほど遅れをとっているわけではありません。

IGBTの物理

PT、NPT、FS IGBTの基本的な物理構造を調べてみましょう。PTとNPTはN層とP層の厚さやドーピングなどに違いがありますが、類似した構造であることがわかります。その名前に暗示されているように、FSは電界特性を変化させるためのトレンチ状の構造を含んでいます。これらの内部物理および半導体理論の議論は、この記事の範囲を超えています。いくつかのチュートリアルがありますので関連リンクをご覧ください。

DigiKeyが提供する製品

PT、NPT、およびFS IGBTの違いをよりよく理解するために、DigiKeyの製品について私なりに調査を行いました。最初に始めたとき、スイッチング速度(ターンオンとターンオフ)、飽和電圧、設計最大電流値に関して明確なデータ傾向を特定できるものと考えていました。

私は、VCEが1000Vの範囲にあり、定格電流が100Aのデバイスに焦点を当てることから始めました。残念ながら、これはさまざまなファミリの間にかなりの重複があったため、アプローチとして適切とは言えませんでした。別の言い方をすれば、「平均的な」IGBTを見ることに価値はありません。

IGBTの動向

その代わりに、限界を調べたらパターンが分かるでしょう。

  • 普及率:アクティブな製品の観点から見ると、FSデバイスはディスクリートIGBT とモジュールIGBTのどちらも優勢です。これは特にIGBTモジュールに当てはまり、FSデバイスは他のテクノロジよりも10倍くらい多くなります。

  • 電圧:FSデバイスは、VCE(最大)の点では中間に位置するようです。PTとNPTがそれぞれ4500Vと3000Vであるのに対し、FSで入手可能な最高のものは約1800Vです。

  • スイッチング時間:各カテゴリにはかなりの重複があります。ただし、FSデバイスのオン時間は遅くなる傾向があります。 PTはオフ時間が速い傾向があります。 NPTおよびFSデバイスはPTの半分の速度でオフになります。

  • MOSFET:ニッチなアプリケーションの調査を続けると、IGBTとMOSFETアプリケーションの境界線は曖昧です。例えば、図2に示すWolfspeed CAB400M12XM3はIGBTからそれほど離れていません。このSiC MOSFETモジュールの設計最大電圧は1200Vで、ドレイン電流は400Aです。

図2: Wolfspeed CAB400M12XM3 MOSFETモジュールの画像。このSiCモジュールの定格は1200Vおよび 400Aです。

おわりに

この記事を書き始めたときは簡単そうに思えました。私がやりたかったのは、DigiKeyのロジスティクスの観点からPT、NPT、およびFSタイプの違いを示すことでした。数時間後、「平均的な」1000V 100A IGBTの特性間に大きな重複が見つかったためそう単純な話ではなく、私たちは普及率と設計の最大極限という観点で意味のある違いを見つける必要に迫られました。

PTは高速ですが、FSが普及しています。

意外な展開として、特に新しいSiCおよびGa半導体技術が成熟するにつれて、MOSFETとIGBTが密接に関連していることがわかります。10年後に振り返れば、刺激的な状況の変化を見ることができるでしょう。

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ご健闘をお祈りします。

APDahlen

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著者について

Aaron Dahlen氏、LCDR USCG(退役)は、DigiKeyでアプリケーションエンジニアを務めています。彼は、技術者およびエンジニアとしての27年間の軍役を通じて構築されたユニークなエレクトロニクスおよびオートメーションのベースを持っており、これは12年間教壇に立ったことによってさらに強化されました(経験と知識の融合)。ミネソタ州立大学Mankato校でMSEEの学位を取得したDahlen氏は、ABET認定EEプログラムで教鞭をとり、EETプログラムのプログラムコーディネーターを務め、軍の電子技術者にコンポーネントレベルの修理を教えてきました。彼はミネソタ州北部の自宅に戻り、このような記事のリサーチや執筆を楽しんでいます。




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