APDahlen Applications Engineer
この教育用資料では、LEDとDigilentのAnalog Discovery測定器の高度な機能を使用して、フルブリッジ整流器の基本的な動作をデモンストレーションで説明します。従来の1N4001整流器は、高効率の赤色LEDに置き換えられています。DigilentのAnalog Discoveryは、ファンクションジェネレータとオシロスコープの両方の役割を果たします。LEDとDigilent測定器の高度な機能を組み合わせることで、学生は電源を操作し、図1に示すようにダイオード電流を可視化することができます。機器全体のセットアップを図2に示しています。
動画1では、学習者がLEDを観察できるよう、DigilentのAnalog Discoveryで低速のAC信号を生成するように設定することに重点を置いて、実験を紹介しています。また、コンデンサの充電波形、整流器の故障(オープン)、全波整流と半波整流、DigilentのAnalog Discoveryの差動オシロスコープ入力の使用など、さらなる実験も示しています。
フルブリッジ整流器とはどのようなものですか?
フルブリッジ整流器は、ACをDCに変換する電源装置の基本となる回路ブロックです。 ブリッジ回路に配置された4つの半導体ダイオードで構成され、AC入力信号を脈動DCに変換します。そこにフィルタコンデンサを追加して脈動DCを平滑化することにより、基本的な電源が形成され、安定したDC信号を供給します。
図1: フルブリッジ整流器の動作を可視化するためにLEDを使用することができます。 任意の時点において、電流はどちらかのダイオードペアを流れます。
技術的なヒント: LEDは順方向の電圧降下が大きいため、効率的な整流器ではありません。例えば、ジェリービーンズ1N4001などのダイオードでは0.7V DCの電圧降下かもしれませんが、典型的な赤色LEDでは、その値は約1.9V DCで、ずっと大きくなります。ダイオードで失われる電力は、順方向電圧降下と電流の積として計算されることを思い出してください。したがって、順方向電圧の小さいダイオードが好まれます。
脈動する(平滑されていない)全波整流電圧を見るときは特に、この大きい電圧降下に注意してください。ダイオードペアが導通していないとき、波形は平坦な領域を表示します。
動画1: DigilentのAnalog DiscoveryとLEDによる可視化について詳細をご覧ください
図2: DigilentのAnalog Discoveryとブレッドボード上のLEDによるフルブリッジ整流器を含む、フルブリッジ整流器のテストのセットアップ
技術的なヒント: DigilentのAnalog Discoveryはテスト用計測器のシリーズで、動画では旧モデルが使われています。また、最新のAnalog Discoveryは図2に示されています。この実験には、Professional mixed signal model 2230も使用でき、いずれの場合も、測定器にはDigilentのWaveFormsソフトウェアを使用します。
フルブリッジ整流器はどのように機能しますか?
フルブリッジダイオードは、図3に示すように配線された4つのダイオードで構成されています。ブリッジは通常、トランスの2次巻線出力によって駆動されます。この実験では、トランスの代わりにDigilentのAnalog Discovery波形発生器(黄色ワイヤと黒のワイヤ)を使用しています。
電源がAC波形の正の半サイクルを生成すると、ダイオードD2とD3が図1(左)に示すように導通します。その後、負の半サイクルでダイオードD1とD4が導通します。
この動作は、数学的な区分的観測を使って要約することができます。
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正の半サイクルのダイオードペア2と3の場合、 V_{OUT} = V_{in} - (2 * V_{Diode})
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負の半サイクルのダイオードペア1と4の場合、V_{OUT} = - V_{in} + (2 * V_{Diode})
D1とD3はどの時点でも同時に導通することはありません。同様に、ダイオードD2とD4が同時にオンになることもありません。同時にオンになると電源が短絡してしまうからです。60Hz(アメリカの商用周波数)のサイクル変化はダイオードのターンオンおよびターンオフ時間に比べて遅いため、この貫通電流は通常、問題にはなりません。ただし、設計者は逆バイアス電圧に耐えるダイオードを選択する必要があります。このアプリケーションでは、ピーク逆電圧(PIV)は入力のピーク電圧に等しくなります。実際には、入力電圧の変動、部品の許容誤差、およびノイズスパイクに対応するため、約2の安全係数を追加します。
図3: フルブリッジ整流器実験の回路図。多機能なDiscovery測定器は信号発生器として1ヶ所、差動入力オシロスコープとして2ヶ所、合計3ヶ所で使われています。
技術的なヒント: 図3の電流制限抵抗は、オリジナル動画と比較すると新しい位置に移動しています。この変更により、故障(ショート)した整流器や不適切に設置された整流器をシミュレートするなどの追加実験を行うことができます。電流制限抵抗は、過負荷状態によるDiscovery測定器への潜在的な損傷を軽減します。
技術的なヒント: DigilentのAnalog Discoveryは、差動のオシロスコープ入力を備えています。この機能により、学習者は回路のグランドから独立したフローティング信号を測定できるため、ラボ作業が効率化されます。例えば、図3のDiscoveryの黒は、従来のオシロスコープのプローブが接続される回路グランドです。差動オシロスコープ入力では、回路グランド(黒ワイヤ)と電源リターン(白ストライプのある青ワイヤ)の間のダイオードの電圧降下を考慮することなく、電源の出力(青ワイヤおよび白ストライプのある青ワイヤ)を測定することができます。
LEDを使用したブリッジ整流器の動作の可視化
従来のブリッジ整流ダイオードをLEDに置き換えると、電流の流れを可視化できます。その秘訣は、LEDの動作が見えるようにAC波形を遅くすることです。動画1と図4は1Hzでの動作を示しています。LEDが十字状に交差して交互に点滅しているのがよく分かります(図1の左と右)。
図4: DigilentのWaveFormsインターフェースの表示。信号発生器の制御信号は下の画面に表示され、デュアルチャンネルオシロスコープの波形は上の画面に表示されています。オシロスコープでは、フルブリッジ整流器の入力(オレンジ)と出力(青)が表示されています。
直接関連するデモンストレーション
LEDを使ったフルブリッジ回路は、さらなる学習の機会を提供します。動画では、以下のようないくつかのアイデアが紹介されました。
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ダイオードの損失(オープン故障)
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フィルタコンデンサの有無による動作の比較
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フィルタコンデンサの階段状電圧の初期充電波形
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動作周波数がリップル電圧に与える影響
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フル充電のコンデンサ(無負荷)
図3に示し、技術的なヒントで説明したように100Ωの抵抗器を再配置すれば、さらにいくつかのデモンストレーションを行うことができます。この変更は、Digilentの測定器を再び意図しないショートから保護するために必要です。新しい実験には以下が含まれます。
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ダイオードの故障(ショート)
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ダイオードの誤った接続
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回路の過負荷による影響
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負荷のショート
さらに、オシロスコープの基本操作のスキルを強化できるという利点もあります。例えば、コンデンサの初期充電電圧の波形を捉えるには、シングルスイープ機能を使用するのが最良の方法です。
おわりに
このデモンストレーションは、学習者がブリッジ整流器について深い理解を得るのに効果的な方法です。LEDに加えてDigilentのAnalog Discoveryの組み合わせにより、学生は視覚によるLED回路の操作や、DigilentのWaveFormsソフトウェア上のオシロスコープ表示など、複数の方法で回路と対話することができます。
次にやるべきことは、ハイサイドMOSFETドライバに搭載されている倍電圧回路やブートストラップ回路などの関連回路を探究するために、このテクニックを使用することです。
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APDahlen
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著者について
Aaron Dahlen氏、LCDR USCG(退役)は、DigiKeyでアプリケーションエンジニアを務めています。彼は、技術者およびエンジニアとしての27年間の軍役を通じて構築されたユニークなエレクトロニクスおよびオートメーションのベースを持っており、これは12年間教壇に立ったことによってさらに強化されました(経験と知識の融合)。ミネソタ州立大学Mankato校でMSEEの学位を取得したDahlen氏は、ABET認定EEプログラムで教鞭をとり、EETプログラムのプログラムコーディネーターを務め、軍の電子技術者にコンポーネントレベルの修理を教えてきました。彼はミネソタ州北部の自宅に戻り、このような記事のリサーチや執筆を楽しんでいます。