RFケーブルアセンブリの選択と使用のためのエンジニアへのガイド

著者 Kenton Williston
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2023-10-19

RFケーブルアセンブリは、航空宇宙や通信などの確立された分野から、自動車、産業、モノのインターネット(IoT)などの新しい使用例に至るまで、幅広いアプリケーションで使用されています。このアプリケーションの拡大により、新しいタイプのRFケーブルアセンブリが開発され、エンジニアはRFシステム設計を最適化する機会が増えています。

しかし、このような成長は設計プロセスを複雑にしています。非常に多くのアセンブリが市場に出回っているため、特定のアプリケーションに最適なアセンブリを選択するのは困難です。また、新しいアプリケーションでのRFケーブルの使用により、より多くの設計者、設置者、メンテナンス技術者が馴染みのない技術に直面することになります。スペースや環境への配慮とともに、それらの技術者たちは今では、周波数適合性、インピーダンス整合、電圧定在波比(VSWR)、磁気結合、そしてシールドに精通しなければならないのです。

RFシステムの性能と信頼性を確保するためには、エンジニアは注意深いアプローチと、オプションと待ち受ける潜在的な落とし穴についての明確なロードマップを必要とします。

この記事は、電気的特性、物理的構造、および典型的な使用例を含むRFアプリケーションの簡単な概要から始まり、RFケーブルアセンブリの選択、設置、および保守という複雑な作業へのガイドとなります。Molexの例を紹介し、重要な選択基準と使用基準を説明します。

拡大するRFケーブルアセンブリの使用例

RFテクノロジは多くの分野にまたがっており、それぞれに固有の課題があります。周波数範囲は数百ヘルツ(Hz)から数十ギガヘルツ(GHz)まで及びます。アプリケーションによっては堅牢性が要求されます。物理的なフットプリントが極端に限られたものもあります。使用例の多様性を説明するために、次の一般的なアプリケーションを考えてみましょう。

  • 航空宇宙と防衛:レーダーシステム、通信チャンネル、GPS
  • 自動車と輸送: インフォテインメントシステム、ナビゲーション、車両通信ネットワーク
  • 通信と放送:Wi-Fi、LTE、5Gネットワークを介した8K映像信号
  • 産業: IoTセンサ、自動組立ライン、遠隔測定
  • 医療: 遠隔患者監視システム、高度診断機器、ロボット手術装置
  • 試験と計測: 製造セットアップにおけるベンチ測定、フィールドテスト、品質保証

RFの利用が拡大しているため、より多くのエンジニアや設計者が高周波回路に携わるようになっていますが、その多くはこの技術の経験がありません。厳しい納期と予算に直面している彼らは、システムの信頼性と高いパフォーマンスを確保しながらタスクを簡素化するソリューションを必要としています。

そこで、RFケーブルアセンブリが登場します。これらのアセンブリは、エンジニアリングの労力を軽減しながら、指定された性能要件を満たすよう、事前に組み立てられたコネクタとケーブルで構成されています。既製のRFケーブルアセンブリを使用することにより、設計やプロトタイプ製作の時間とコストを節約し、生産の品質と効率を向上させることができます。

周波数適合性、インピーダンス整合およびVSWR

適切なケーブルアセンブリを選択するには、複数の要因を注意深く考慮する必要があります。まず、アセンブリはRF信号の周波数範囲に対応できなければなりません。これらの周波数帯域は、数百Hzから3~30GHz以上のマイクロ波(SHF)帯域までさまざまです(図1)。

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図1:RFケーブルアセンブリにはさまざまな設計があり、
特にコネクタのサイズとサポートされる最大周波数に
よって分類できます。(画像出典:Molex)

望ましい性能を達成するために、ケーブルアセンブリは、大きな信号損失や歪みなしに、適切な周波数範囲を取り扱う必要があります。例えば、米国映画テレビ技術者協会(SMPTE)では、2082-1ガイドラインに基づく厳しい信号品質要件を設定しており、クロック周波数の半分において損失を40デシベル(dB)に制限しています。

このような要求を満たす方法の1つは、最大12GHzの周波数で高いリターンロス性能を実現するMolexのBNCミニRFケーブルアセンブリを使用することです。この性能は、8Kスーパーハイビジョン映像のシリアル伝送の要件を上回っており、ハードウェアを変更することなく将来の帯域幅拡大が可能になります。

インピーダンス整合も重要なパラメータです。RF信号は、信号線に沿ったインピーダンスの不整合によって引き起こされる入射波と反射波による干渉の影響を受けやすくなります。信号損失を最小限に抑えるために、ケーブルアセンブリは接続される負荷と同じインピーダンス(通常は50または75Ωのいずれか)を持つ必要があります。最適なマッチングを得るために、コネクタとケーブルを一緒に設計することをお勧めします。

この実例は、ハイエンドの75Ωアプリケーション向けにMolexのBNCコネクタとBeldenの4794Rケーブルを組み合わせた0897629290アセンブリです。

試験および計測のような特に要求の厳しいアプリケーションでは、VSWRや挿入損失のような追加されたパラメータを慎重に検討する必要があります。VSWRとは、入射信号と反射信号の比のことで、RF信号がいかに効率よく信号源から負荷まで伝達されるかを示す指標となります。挿入損失は、信号がコネクタやケーブルで伝わる際に失われるエネルギー量です。図2は、それぞれの例をいくつか示しています。

図2:効率的な低損失マイクロ波ケーブルの VSWRと
挿入損失の例を示します。 (画像出典:Molex)

シールド、磁気結合、およびその他考慮事項

シールドも重要な考慮事項です。RF信号を伝送するケーブルは、アンテナのような役割を果たし、信号を放射したり受信したりして干渉を引き起こす可能性があります。この干渉を最小限に抑えるため、ケーブルは接地された金属ハウジングでシールドする必要があります(図3)。

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図3:典型的なシールドケーブルを示します。ケーブルの内側から順に、
コア導体、コアとシールドを分離する誘電体、金属編組シールド、
ケーブルジャケットとなっています。(画像出典:Molex)

シールド材料の選択は、要求性能、環境条件、予算の制約など、さまざまな要因に影響されます。例えば、銅はほとんどの周波数で高い効果を発揮しますが、比較的重くコストもかかります。一方、アルミニウムは軽くて安価ですが、効果は低く腐食しやすい傾向があります。

シールドの形態も考慮する必要があります。0897616761 MCXアセンブリのRG-136ケーブルのような金属編組は、優れた機械的強度と物理的保護を提供します。対照的に、ホイルシールドは一般的にアルミニウムをポリエステルやポリプロピレンのフィルムにラミネートしたもので、軽量、安価、フレキシブルな代替品となっています。他にも、スパイラル、テープ、これらの組み合わせなどのタイプがあり、周波数カバー範囲、柔軟性、寿命、機械的強度、コスト、終端処理の容易さなどの点で異なります。

また、考慮すべき特有のアプリケーション要件がある場合もあります。例えば、医療用アプリケーションでは、磁場の影響を受けるセンサが使用されることがよくあります。この場合、0897616791
MMCXケーブルアセンブリのようなソリューションが有効な選択肢となります。これらのアセンブリは、設計の適合性を高めるために非磁性バージョンで利用できるからです。

スペースの制約、環境上の危険要素、およびメンテナンス

物理的なパラメータを考慮する場合、スペースと配線の制限が主な障害となることがよくあります。狭いことで悪名高い防衛アプリケーションを考えてみましょう。ここでは、0897611760 SSMCXケーブルアセンブリのようなソリューションが実用的です。SSMCXコネクタは、市場で最も小型のコネクタの1つであり、スペースの課題と配線の制約に対応するため、垂直方向(バーチカル)と直角方向(ライトアングル)の製品が用意されています。

設計者は、アセンブリを選択する際、最小曲げ半径も考慮する必要があります。RFケーブルは複雑な構造のため、かなり硬くなる傾向があります。小さい曲げが必要な状況では、Molexのフレキシブルマイクロ波ケーブルアセンブリのような製品をお探しください(図4)。これらのケーブルは、小さい静的曲げ半径用に特別に設計されています。

図4:静的曲げ半径が小さいRFケーブルのサンプルを示します。(画像出典:Molex)

特に通信分野のような屋外用途では、極端な温度変化も問題になります。このような用途では、RFケーブルアセンブリで一般的な熱可塑性ジャケットは適していません。代わりに、より耐久性のある素材が必要となります。たとえば、前述のフレキシブルマイクロ波アセンブリでは、ジャケットにTemp-Flexフッ素化エチレンプロピレン(FEP)材料が使用されており、これはテフロンに似た丈夫な材料です。

振動や衝撃は、特に航空機のようなアプリケーションでは、設計を損なう可能性があります。信頼性の高い動作を保証するために、使用されるRFケーブルアセンブリの接続は、非常に安全でなければなりません。良い例は、I-PEXが特許取得しているMHF® LK コネクタロック機構を利用したMolexの 0732306110ケーブルアセンブリです(図 5)。

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図5:I-PEXのMHF LKコネクタシステムは、特許取得済みのロック機構を
使用し、確実な接続を保証します。(画像出典:Molex)

メンテナンスは設計プロセスの一部として考慮する必要があります。ケーブルアセンブリの平均故障間隔(MTBF)を確認し、最も注意が必要と思われるサブアセンブリや接続部に合理的にアクセスできるように、メンテナンスと修理が容易になるよう設計する方法を検討することが重要です。

設計者は、通常のメンテナンスの点検スケジュールの作成や、ケーブルアセンブリの修理や交換が必要になる可能性がある兆候を示すユーザーチェックリストの作成も検討し、複雑な問題を未然に回避する必要があります。一般的なメンテナンスの手順には、アセンブリの磨耗のチェックや、接続部に浸透して性能を低下させる可能性のある汚染物質を除去するための、ケーブルやコネクタのクリーニングなどがあります。

最後に、ケーブルアセンブリのメーカーを評価することが重要です。基準には、適切な認定、関連アセンブリの製造経験、設計の柔軟性をサポートする十分な製品オプション、そして性能の問題を回避するための品質保証プロセスが含まれます。たとえば、Molexは、8,100件以上の特許に支えられたイノベーションと、custom cable creator toolを含む品質と技術サポートに対する高い評価によって、ケーブルおよびコネクタ技術の開発をリードしてきました。

まとめ

適切なRFケーブルアセンブリを選択することは、周波数適合性、シールド、環境条件、スペースの制約、メンテナンスなどの要素を理解し、慎重に検討する必要があるため容易ではありません。今まで述べたように、専門知識、品質保証、技術革新をもたらす経験豊富なメーカーと協力することが、特にRFに不慣れなエンジニアや設計者にとって、これらの課題を乗り越える鍵となります。このようなパートナーは、ケーブルの選択、設置、メンテナンスのプロセスを指導することができ、機器やシステムが確実に最高の性能を発揮できるようにしてくれます。



著者について


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Kenton Williston

Kenton Williston氏は、2000年に電気工学の学士号を取得後、プロセッサ・ベンチマーク・アナリストとしてキャリアをスタートしました。その後、EE Timesグループの編集者として、エレクトロニクス業界を対象とした複数の出版物やカンファレンスの立ち上げに携わっています。

出版者について


DigiKeyの北米担当編集者



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