静電容量の周波数特性グラフを見ると、ある周波数になると容量値が急に無くなっています。実際に容量は無くなっているのですか。
実は、容量値は直接測定することが出来ないのです。そのためESR(等価直列抵抗)とXs(合成インピーダンス)を測定して、そこから容量値を近似式により算出しているのです。
この近似式は自己共振周波数近くまでは成り立つのですが、自己共振周波数周辺およびそれ以上の周波数領域では使えません。このことがグラフ上で容量が急に無くなったように見える原因です。実際には無くなっていないのでご安心ください。
理想のコンデンサでは、周波数が高くなるとインピーダンスは周波数に反比例して低くなりなります。しかし実際のMLCCは静電容量成分以外にインダクタンス成分や抵抗成分を含んでいます。
自己共振周波数を超える領域ではこのインダクタンス成分が支配的となるため周波数に比例してインピーダンスが下記に示すように高くなります。
共振周波数より十分に低い領域では、容量成分が圧倒的に大きく、インダクタンス成分は無視できるため、 Xs≒-1/(2πf*C) の近似式が成り立ちます。静電容量値はこの式から逆算されます。つまりC=-1/(2πf*Xs)です。しかし自己共振周波数以上の高周波領域ではトータルのインピーダンスZsは、インダクタンス成分によるインピーダンス 2πf*ESLが支配的になり、C=-1/(2πf*Xs)の式が使えず容量を求めることはできません。そのために自己共振周波数近傍およびそれ以上の周波数帯では、値の急変が起こり容量が無くなったように見えるのです。
情報は TDK FAQ と Digi-key Electronics から提供されました。