ロジックレベルシフトの基礎

ロジックレベルシフトの基礎

通信やGPIOにおけるハイ/ローロジックレベル電圧の混在

Don Johanneck
2021-08-05
タグ エンジニアリング   電源管理   電源および回路保護   半導体および開発ツール

概要

最新のデジタル機器の設計は、より小さく、より速く、より効率的になってきています。主力の5Vロジックに3.3V、2.5V、1.8V、さらにそれ以下の低電圧規格が加わり、その結果、電圧が異なるシステムを確実に効率よく通信できるようにする手法が必要とされています。設計者は、これらの異なるプラットフォーム間で、ロジック1またはロジック0の伝送を確実におこなう方法を実現しなければなりません。

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2値または2段のロジック電圧間の変換/分離により、回路の動作が予測しやすくなります。設計者は、3.3V の信号を 5V のピンに接続すれば「動作するはずだ」と考えるかもしれませんが、あらゆる条件下で常に動作するとは限りません。逆に、3.3V、5Vトレラントピンに5Vを供給すれば、たいていの場合うまくいきますが、この方法は部品を追加したり、場合によっては過剰電圧を「除去」するため、より高価になります

代替手段はありますか?

アクティブ素子のトランスレータ/レベルシフタは、一般的なレベル変換問題を解決し、反転、プッシュプル出力、トライステート、差動機能などの便利な機能を追加することもできます。しかし、それほど複雑でなく、より広いロジック電圧レベルや双方向通信を可能にするものについてはどうでしょうか?小型ディスクリート部品のMOSFETを使用すると、高速で効率よくレベル変換を実施することができます。I²CやGPIOピン間直接接続などの通信用のレベルシフトは、これらの安価な半導体といくつかの受動素子を追加により実現されます。適切なMOSFETを選択することにより、12Vや18Vといった高いロジック電圧に対応でき、例えば車載回路のモニタリングなどにも利用できます。

注: Hsモード(高速)のI²Cでは、NXPの PCA9306双方向トランスレータなど、より洗練されたコンポーネントが必要になる場合があります。

例: BS170(NチャンネルエンハンスメントモードFET)

BS170は、低電圧、低電流のスイッチングアプリケーションに適した信頼性の高い高速スイッチング性能を提供しながら、オン時の抵抗を最小にするように設計されています。図1は、基本的な通信やGPIOのロジックレベルシフトを行うために必要な接続を示したものです。


図1:基本的なシングルバスのMOSFETによるレベル変換回路

MOSFETの両側のロジックハイレベルは、高速モード(400 kHz)のI²C信号や他の高速デジタルインターフェースの変換を行うそれぞれの電源へのプルアップ抵抗で実現されます。MOSFETのゲートは低電圧の電源レベルに保持されます。どのデバイスもバスラインをプルダウンしていない場合、MOSFETのソースのバスラインは低電圧用プルアップ抵抗により低電圧電源に接続されています。MOSFETのゲート・ソース間電圧(VGS)は閾値電圧を下回り、MOSFETは導通していません。これにより、MOSFETのドレインのバスラインは、高電圧用プルアップ抵抗により高電圧電源に接続されます。MOSFETの両側のバスラインはハイに保たれますが、それぞれの電圧レベルは異なります。図2を参照してください。


図2:ロジックハイのレベル変換

低電圧側のデバイスがMOSFETのソースのバスラインをグランドにプルダウンし、ゲートが低電圧電源に接続されたままであれば、VGSは閾値電圧を超えて、MOSFETは導通し始めます。このとき、MOSFETのドレイン側のバスラインも同様にグランドにプルダウンされます。図3を参照してください。


図3:低電圧のデバイスにより駆動されるロジックローのレベル変換

高電圧側のデバイスがMOSFETのドレインにおいてバスラインをグランドにプルダウンすると、MOSFETのボディダイオードは、ダイオードを通して低下する小さな電圧により、ソースも部分的にプルダウンすることができます。図4を参照してください。


図4:高電圧のデバイスにより駆動される近似的なロジックローのレベル変換.

MOSFETのソースが部分的にプルダウンされると、VGSは閾値電圧を超えて上昇し、MOSFETはボディダイオードを実質的にバイパスして導通を開始します。図5を参照してください。


図5:高電圧のデバイスにより駆動される完全なロジックローのレベル変換

3つの状態は、ドライバセクションとは無関係に、バスシステムの両方向に転送されたロジックレベルを示します。MOSFETの能力に応じて、高電圧電源と低電圧電源の多くの組み合わせが可能です。ロジックレベルの不一致がポイントツーポイントGPIO、センサ出力、または双方向マルチライン通信のいずれで起こるとしても、MOSFETのレベルシフタは役に立つツールです。図6は、2つのMOSFETを使用してレベル変換された2ラインの双方向通信回路の実装を示しています。


図6:2ライン双方向レベル変換データ通信回路

アイソレーション

高電圧側のデバイスがパワーダウンしたり、高電圧電源で電力喪失が発生した場合に、ロジックレベルが乱れないようにするため、MOSFETを「ドレインツードレイン」で追加実装して、高電圧のロジックバスラインを分離することができます。


図7:レベル変換データ通信回路のアイソレートされたバスライン

開発ボード

ロジックレベル変換をより詳しく学ぶには、いくつかのメーカーがMOSFETやロジック変換デバイスと必要な周辺パッシブデバイスを搭載した開発ボードを製造しているので、これを使用すると、短時間で接続して実験することができます。

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まとめ

MOSFETとプルアップ抵抗を適切に選択することが、この単純で効果的なロジックレベル変換方法を成功させる鍵です。一般的なデバイスのデータシートには、実験に必要な情報が記載されています。BS170のプルアップ抵抗は、ほとんどの場合、4.7KΩから10KΩの範囲で良好に動作します。専用のロジックレベルコンバータICは、I/O端子と電源電圧入力端子間に15kVのESD保護などの特別な機能を備えている場合があります。

筆者について

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Digi-Key Electronicsのテクニカルコンテンツ開発者であるDon Johanneckは2014年から同社に勤務しています。最近は現職で、動画の説明や商品コンテンツの執筆を担当しています。DonはDigi-Keyの奨学金プログラムを通じて、Northland Community & Technical CollegeでElectronics Technology & Automated Systemsの応用科学の準学士号を取得しました。趣味はラジコンのモデリング、ビンテージマシンの修復といじくりまわしです。

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