ヒューズ

ヒューズ

この記事は、ヒューズの特性評価に使用される様々なパラメトリック属性と、部品選定におけるその重要性について解説しています。ここでは、シングルユースヒューズ(使い捨てヒューズ)のみを対象としており、自己復帰型やサーキットブレーカなどの同様の保護部品については別の記事で説明します。

Digi-Keyのシングルユースヒューズ製品のリストは、2つの製品ファミリに分かれています。 ヒューズファミリには、プリント回路基板用、小型家電製品のヒューズホルダ用、車載用などがあり、より一般的な製品です。電気、特殊ヒューズファミリは、あまり一般的ではない性質の製品で、特に高い遮断電流定格、爆発の危険性のある環境での使用、UL クラス指定、一般的ではないフォームファクタ、あるいは非常に特殊な使用例向けなどの特徴によって区分されています。

取り付けタイプ

「取り付けタイプ」属性は、アプリケーションにおいてヒューズが機械的に保持され、あるいは電気的に接続される機構を表します。これは、特定の1つのデザインではなく、一般的なスタイルまたはフォームを示す非特定のパラメータです。 同じ取り付けタイプのデバイスでも、機械的に交換できる場合とできない場合があります。.

ボルトマウント

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図1.ボルトマウントヒューズの一例(ノンスケール:縮尺は一定ではありません。)

ボルトマウントヒューズは、機械的固定と電気的接続にネジ式ファスナを使用するように設計されており、大電流アプリケーションで最も一般的に見られます。この接続方法は、電気接続部に手を触れずにヒューズを交換するのには適していないため、特に高電圧レベルにおいて、故障が非常に少ないと予想される用途に限られることが多いようです。

フリーハンギング(インライン)

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図2.インラインヒューズの一例(ノンスケール)

フリーハンギングヒューズは、配線のある個所に永久的に設置されるように設計されており、通常、電気接点以外に機械的な取り付けのための規定はありません。一般的な用途としては、ソーラーパネル設置や車載用などがあります。この取り付け方法では、簡単に交換することができないため、通常、故障が極めて少ないと予想されるアプリケーションに使用されます。

ホルダ

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図3.ヒューズホルダと組み合わせて使用することを想定したヒューズの一例(ノンスケール)

最も一般的なヒューズ取り付けタイプで、機械的な保持と電気的な接触をするホルダと共に使用し、ほとんどの場合、電気接点に触れることなくヒューズを交換できるように設計されています。このため、通電したままヒューズ交換が比較的容易に行えるので、ある程度の頻度で故障が予想される用途に好んで使用されています。

ホルダ、面実装

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図4.面実装用ホルダにあらかじめ挿入されたヒューズの一例(ノンスケール)

比較的ユニークなヒューズ取り付けタイプで、小型のセラミックヒューズをあらかじめ面実装型ヒューズホルダに挿入しておくことで、交換可能なヒューズアセンブリを1回の製造工程でプリント基板に容易に配置できるようにした製品です。永久的に取り付けられている同様の製品と比較して、故障が発生する可能性が高く、交換可能なヒューズに変更する追加コストが認められるようなアプリケーションにおいて、回路基板レベルで使用されます。

面実装

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図5.面実装ヒューズの一例(ノンスケール)

面実装ヒューズは他の面実装部品の取り付けに使用されるのと同じはんだ付け、または接着機構を使用してプリント回路基板に直接、永久的に取り付けるように設計されています。このような取り付けは一般的に永久的なものと考えられているため、通常、故障が非常に少ないと予想される用途に使用されます。他の面実装品と同様に、スルーホールやボルトマウントなどの実装タイプに比べ、低電圧・低電流で使用される傾向があります。

スルーホール

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図6.スルーホールヒューズの一例(ノンスケール)

スルーホールヒューズは、ホルダ付きヒューズの変形製品であることが多いですが、ホルダは無くプリント基板に形成された穴に挿入した後、はんだ付けによって永久的に取り付けるタイプです。このようなデバイスの多くは、組み立ての際にはんだを使用するため、過剰な熱を加えることで破損したり、ヒューズの特性を変化させたりすることが十分考えられます。この点については、メーカーが推奨していることに十分注意することが重要です。

定格電流

ヒューズの定格電流は、ヒューズが溶断することなく流せる最大電流を表し、該当する規制機関により定められた手順で測定されます。重要なことは、UL/CSA(北米)とIEC(欧州)の規格が、いくつかの一般的なヒューズのスタイルで異なっていることです。一般にUL/CSA仕様のヒューズは定格電流の135%で1時間以内に溶断しますが、IEC仕様のヒューズは公称値の150%で最低 1時間保持することが期待されます。このことから、IEC規格のヒューズは一般的に公称電流値まで使用できますが、UL規格のヒューズは公称定格の75%以下で連続使用できるよう設計することが推奨されます。ヒューズがどのような仕様で製造されているかは、デバイスのマーキングからは必ずしも明らかではないので、データシートをよく確認してください。例えば、IEC規格のヒューズは、UL規格の部品でもあり、そのように表示されることがあります。しかし、最も一般的な小型電気製品用ヒューズサイズ(5 x 20mmおよび1/4 x 1 ¼")のうち、そのほとんどが製造されている電気仕様は、サイズを表す単位(mm表示はIEC、インチ表示はUL)と一致する傾向にあります。

アプリケーションの変数(特に温度)は、ヒューズが溶断する実際の電流レベルに影響します。高品質ヒューズのデータシートには、この影響を考慮するために公称定格電流(通常、25°Cの温度で示される)をどのように調整すべきかの情報が記載されています。図6にその一例を示します。25%ディレーティングの記載があることから、UL規格の製品であることがわかりますが、その通りです。
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図7.Littelfuse 452シリーズのデータシートからの温度ディレーティングの抜粋

これらのディレーティングの推奨は、ヒューズの金属疲労と呼ばれる現象による不要な溶断を避けるためのものです。ヒューズは溶断するまでにかなりの熱を持つため、日常的にヒューズの定格電流に近づけすぎると、ヒューズが劣化し、望まない条件下で溶断してしまうことがあります。

ヒューズタイプ

ヒューズタイプ属性は、製品の一般的なフォームファクタや構造様式をカジュアルな言葉で表現しており、多くの場合、特定のアプリケーション環境や製品の特徴に関連します。例えば、「車載用」ヒューズは、一般的に自動車用に使用されるスタイルのものであり、「視覚表示付き」ヒューズは、溶断したことを特に目立つように視覚的に表示するように設計されたものです。

ガラスカートリッジヒューズとセラミックカートリッジヒューズは、同じような定格で同じようなサイズのものが一般的に販売されていますので、その区別はわかりにくいことが多いようです。一般に、セラミックヒューズは、同等のサイズおよび公称定格のガラスヒューズよりも高い遮断容量を持ち、重大な故障時に破裂する危険性が低くなっています。一方、ガラスヒューズは簡単な目視検査でヒューズが溶断したかどうかを(通常は)判断できる利便性を備えています。この差異は重要で、深刻な故障の際にガラスヒューズが破裂すると、さらなる回路故障を引き起こし、機器の重大な損傷につながる可能性があります。このため、セラミックタイプをガラスヒューズに置き換えるべきではありません。

定格電圧(ACおよびDC)

ヒューズの定格電圧は、そのヒューズが使用される回路の最大AC電圧またはDC電圧を示します。AC定格は公称実効電圧値、DC定格はDC値です。AC電圧とDC電圧の両方の定格を持つデバイスの場合、この2つの数値は多くの場合異なりますが、同じ場合もあります。直流回路での故障遮断は、一般的に同等の交流回路よりもアーク放電のため深刻なケースとなります。交流回路では電流が逆流するため、ヒューズエレメントが溶断するときに形成されるヒューズ内のアークを鎮めるのに役立ちます。

しかし、最終的には、ヒューズの定格電圧は、あるデバイスの特定の特性を示すというよりも、そのデバイスが使用するためにテストされ、認証された限界を示すものです。安全関連保護部品であるヒューズは、世界中の様々な規制機関が制定した規格の対象となっており、各機関は様々な地理的、用途的な管轄権を有しています。定格を超える電圧で回路に使用すると、ヒューズエレメントが溶断した後、端子(またはその残りの部分)間にアークが発生し、ヒューズが正常に溶断しない危険性があります。このようなアークが形成された場合、その実効抵抗は非常に低く、ヒューズには溶断前とほぼ同じような故障電流が流れてしまいます。このため、ヒューズの電圧定格は加算式ではありません。例えば、250Vのヒューズを2個直列に接続しても、480Vの回路を保護することはできません。

応答時間

ヒューズの応答時間属性は、過電流状態に反応してヒューズがどれだけ早く溶断するかを定性的に表しています。突入電流、モータの起動負荷、および同様の現象は、しばしば長期的に許容される範囲を超えた短時間の大電流を引き起こします。このような用途では、日常的な安全状態での不要な溶断や、ヒューズの金属疲労による望まない溶断を避けるために、低速遮断ヒューズが使用されます。このような瞬時の電流サージが予想されない電子機器や家電製品では、過電流状態への応答時間を速くするために高速遮断タイプが使用されることがあります。例として、図7はLittelfuseの312および313シリーズのヒューズ製品の特性を示しており、どちらも3AGサイズのガラス製ヒューズで、応答時間が速いものと遅いものがあります。電流が2Aの場合、1Aの高速遮断ヒューズは約0.3秒で溶断すると予想されますが、低速遮断ヒューズは溶断するのに20秒近くかかると思われます。
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図 8.Littelfuseの312(高速遮断)および313(低速遮断)シリーズヒューズの特性の比較

パッケージ/ケース

ヒューズのパッケージ/ケース属性はデバイスの物理的なフォームファクタを記述し、「取り付けタイプ」および「ヒューズタイプ」パラメータと組み合わせて使用することで、既存のアプリケーションと機械的に互換性のある置き換えヒューズを特定するのに役立ちます。3AG(1/4" x 1¼")とそれより少し小さい5mm x 20mmサイズはAC電源の電気製品で最も一般的であり、ATO/ATCスタイルのブレードヒューズは車載用で最も一般的です。

定格電圧での遮断容量

このパラメータは、ヒューズがその最大定格動作電圧において、安全に遮断できる電流量を示しています。短絡故障の状態では、電流が正常値の何倍も流れることがあります。このような故障を安全に遮断するためには、ヒューズが遮断しなければならない最大電流量よりも大きな遮断容量を持つものを、電源、ケーブル、および回路のすべての要素の特性を考慮して選択することが重要です。

定格電圧がACかDCかによって遮断容量が異なる場合があります。記載されている値が、特にどちらかを指していない場合もあります。特に、AC/DC両用として記載されているデバイスについては、データシートを参照し、記載されている遮断容量がどちらの電圧定格に適用されるかを確認する必要があります。

溶融I2t

溶融I2tは、特定のデバイスにおいてヒューズエレメントを溶断するために必要なエネルギー量を示すパラメータであり、特定の大きさと持続時間の電流サージをヒューズが安全に流せるかどうか、ヒューズが溶断する前に不良回路に通過させるエネルギー量はどの程度か、などの推定に使用されるものです。これは、応答時間属性(同じ定格電流の場合、高速遮断ヒューズは低速遮断ヒューズよりもI2t値が小さい)に対応する定量的なもので、工学的に有用ですが、目的の製品を迅速に選択するにはあまり便利ではありません。一般的には、短時間(約8ms、60Hzでおよそ1/2サイクル)でヒューズエレメントを溶かすのに必要な電流量が確立するまで、所定の設計のヒューズに徐々に大きな電流パルスを印加することで測定されます。

承認機関

この属性は、ヒューズが承認された様々な認証機関を列挙しています。安全基準や認証プロセスは世界の管轄区域によって異なり、ヒューズが組み込まれた製品を合法的に販売する場合に、どのような承認が必要であるか、あるいは受け入れられるかについては、地域/国により政策が異なる場合があります。

用途

電気用ヒューズや特殊ヒューズは主に、ハンドヘルドマルチメータや潜在的な爆発性環境での操作など、ユニークで一般的ではない要件を持つアプリケーション用に設計されています。このような用途が製品に記載されている場合は、用途属性に反映させ、特殊な製品であることがすぐに分かるようにしています。このデータは、一般に認められた技術仕様ではなく、宣伝文句に基づくものであるため、おおざっぱなガイダンスとして理解し、過度に依存しないでください。例えば、ある用途向けと表示されていても、他の用途にも適している場合があり、どの用途に適しているかということは、必ずしもヒューズに表示されているとは限りません。

ヒューズの公称定格電流を識別しやすくするために、多くの種類のヒューズ(主に車載用)が異なる色で生産されています。色分けは必ずしも全てのヒューズのスタイルで統一されているわけではなく、曖昧な部分もあり、情報自体に矛盾が生じる可能性があります。したがって、色分けは目安として有用ですが、ヒューズに表示(マーキング)されている電流定格を参照する方が信頼性が高いです。

クラス

UL規格では、さまざまな状況での用途に適したデバイスの特性を示す、いくつかのヒューズクラスが設定されています。この規格は、物理的な形状、遮断定格、遅延特性などを規定し、用途に応じた製品を容易に入手できるようにするとともに、不適切なヒューズ交換によるリスクを最小化することを目的としています。

ULのクラス指定を受けている製品は、限流タイプのヒューズが一般的(ただし、これに限定されません)で、600V以下で動作する地域配電網のフィーダー回路や分岐回路の保護に使用され、その定格電流は数千アンペアにも及びます。同じ規格の中でも、小型家電や自動車など、一般消費者に最も身近な用途で使用されているヒューズは、補助的な保護を提供するものとして分類されており、一般的にULのクラス指定はされていません。

ここでいう「限流」とは、短絡故障時にヒューズが溶断する過程で、最悪ケースの電流を制限するヒューズの動作のことを指します。これは、ヒューズの通電部周辺に特殊な砂を充填し、溶融したヒューズの残滓の間で発生するアークを冷却、消弧することで実現されるのが一般的です。




オリジナル・ソース(English)