Pat Sagsveen著
寄稿:Digi-Key Electronics
2017年10月3日
電子機器は非常に精密かつ高速になりました。部品の高機能化に伴い、壊れやすさも増しています。FPGAを破損させるのは、大電力抵抗器を破損させるよりはるかに簡単です。エレクトロニクス業界は、回路にクリーンな電力を供給することに関して長い道のりを歩んできましたが、それでも潜在的にダメージを与える可能性のあるスパイク電圧がライン上に存在することがあります。また、回路にショートが発生し、過電流が流れて機器が破損することもあります。 そこで登場するのが、シンプルなヒューズです。ヒューズなら、電子機器全体よりずっと安く済みそうです。1ドルにも満たない部品が、数千ドルもする他の機器の破損を防ぐこともよくあります。この記事では、ヒューズを選ぶ際のさまざまな注意点、業界用語、およびさまざまな種類のヒューズの用途について説明します。
ヒューズは、回路の他の部分を保護する装置です。通常、インラインデバイスであり、一定量の電流を流すことができます。過大な電流が流れると、ヒューズは文字通り溶けてオープンになり、電流が流れなくなります。ヒューズの電気的な検討事項として最も重要なものは「定格電流」と「定格電圧」の2つです。定格電流は、通常の状態でヒューズに流せる最大電流です。ヒューズは通常、25°Cでの予期しない溶断を避けるため、25%のディレーティングをします。Littelfuseの「Fuseology」という記事の例では、25°Cの7.5アンペアの回路に10アンペアのヒューズを使用するとしています。定格電流の求め方は、次の式で表されます。
Digi-Keyのウェブサイトの「ヒューズ」セクションのパラメトリック検索に「定格電流」のタブがあります。図1は、「定格電流」タブの位置を示したものです。画像で見ると、右上に定格電流が表示されているのがわかります。適切な定格電流を選択するには、希望の定格が見つかるまでタブをスクロールするだけです。これをクリックして強調表示し、図1の中央下にあるフィルタの適用ボタンを押します。
図1.定格電流の位置
前述しましたように、ヒューズの定格電圧も非常に重要です。定格電圧は、過電流状態が発生したときに、ヒューズが安全に動作できる最大電圧です。ヒューズの定格電圧は、回路に存在する電圧より高くすることができますが、その逆はできません。AC120Vを使用する機器にAC250Vのヒューズを使用した場合、問題はありません。AC250Vの電源にAC125Vのヒューズを使用した場合、ヒューズが破損し、ヒューズが切れた際にアークが発生する可能性が高くなります。ヒューズでもう1つ重要なのは「遮断容量」です。ヒューズが溶断できる電流の最大レベルです。一般に、セラミックヒューズはガラスヒューズよりも高い遮断容量を持ちます。
また、サイズも見逃せない一般的な特性です。ヒューズのサイズに標準はありませんが、より一般的なサイズがあります。円筒形ヒューズの一般的なサイズとしては、5mm x 20mmのパッケージサイズがあります。パッケージサイズ5mm x 20mmのヒューズの例として、Littelfuseの0235001.HXPが挙げられます。一般的に多くの人がヒューズとして連想するのは、このようなものでしょう。両端に金属製のキャップが付いており、過電流状態が発生すると溶断する小さなワイヤが封入されています。図2は、0235001.HXPの写真です。
図2.Littelfuseのヒューズ0235001.HXP
このようなヒューズには、ホルダが必要です。そのヒューズに合ったホルダの探し方はさまざまです。そのひとつが、ヒューズのドキュメントを利用する方法です。0235001.HXPは、Littlefuseの235シリーズに属します。 235シリーズのデータシートの一番下に「Recommended Accessories(推奨アクセサリ)」という項目があります。ここに、このシリーズのヒューズに対応したさまざまな種類のアクセサリが記載されています。ホルダ、ブロック、およびクリップがあります。これらは、ヒューズを収納できるハウジングの種類です。図3は、データシートのこの部分を表しています。データシートには、Littlefuseのウェブサイトのページにつながるハイパーリンクがあります。
図3.Littelfuse235シリーズヒューズのデータシートの推奨アクセサリ(画像提供:Littelfuse)
「345_ISF」のハイパーリンクをクリックすると、Littlefuseのウェブサイト内にある、3種類のサイズのホルダを紹介するページに移動します。0235001.HXPは、5mm × 20mmのヒューズであることを覚えておいてください。Littlefuseの345_ISFのページには、5mm × 20mmのオプションを掲載するセクションがあり、これはページの2/3ほどのところにあります。これらのヒューズホルダにはすべて品番があります。図4は、リストの中の3455HS2です。
図4.Littelfuseの345シリーズヒューズホルダのウェブページで3455HS2の項目を強調表示(画像提供:Littelfuse)
3455HS2という品番をDigi-Keyの検索バーに入力すると、Digi-Keyのウェブサイトから03455HS2Hを検索することができます。Digi-Keyのウェブサイトでは、品番の末尾に「H」が付いています。これは、この製品が100個入りのパッケージでDigi-Keyに出荷されたことを意味する梱包形態のサフィックスに過ぎません。品番の前の「0 」は単なるプレースホルダで、品番とは関係ありません。
ヒューズに適したハウジングを見つけるもう1つの方法は、Digi-Keyのウェブサイトの「ヒューズホルダ」ページで検索することです。「ヒューズサイズ」のタブがあり、5mm × 20mm用のヒューズホルダを全て選択することができます。ヒューズホルダは複数のヒューズパッケージサイズを受け入れることがあるため、図5のように確実に適用可能なオプションをすべてハイライトし、フィルタの適用ボタンを選択します。0.197インチ径(5mm)が含まれているのは、ヒューズの中心部しか保持できないホルダがあるためです。このようなヒューズホルダを使用すれば、ヒューズの長さは関係ありません。例えば、Bel Fuse IncのFC-211-DDがあります。
図5.Digi-Keyの部品検索フィールドから5mmのヒューズサイズを選択
ヒューズホルダにも電気的定格があることに注意が必要です。ヒューズホルダで最も重要なことは、電圧と電流の定格が、実際に回路に存在するものよりも高い必要があることです。10Aのヒューズがある場合、20Aのヒューズホルダを使用すれば問題ありませんが、20Aのヒューズに10Aのヒューズホルダを使用すると、問題が発生する可能性があります。ヒューズホルダの定格電圧も同じ理屈です。
ヒューズに適切なホルダを見つけるもう1つの簡単な解決策は、Digi-Keyウェブサイトの関連製品タブを使用することです。0235001.HXPのページ下部には、関連製品のエリアがあります。これには、同じメーカーの製品が関連づけられています。 図 6 は、この関連製品エリアがどのようなものかを示しています。「もっと見る」の表示がある場合は、現在表示されているよりも多くのオプションが利用可能であることを示しています。
図6.Littelfuseの0235001.HXPヒューズの関連製品エリア
もう1つの一般的なヒューズのサイズとして3AB/3AGサイズがあります。これは1/4" x 1-1/4" 、つまり6.3mm x 32mmです。これらは5mm × 20mmのヒューズとよく似た外観になります。そのため、ヒューズを交換する場合は、ノギスで計測して、ヒューズのサイズが適切かどうかを確認することをお勧めします。3AB、3AGヒューズの例として、 EatonのBK/ABC-15Rがあります。品番はわかっているが在庫がなくて交換用ヒューズを検索する場合、Digi-Keyのウェブサイトから素早く簡単に検索する方法があります。BK/ABC-15Rの最も重要な点は、定格電流、定格電圧、サイズ、そして応答時間です。Digi-Keyウェブサイトの製品別ページには、「製品属性」と書かれたエリアがあります。これは属性の定義リストであるだけでなく、パラメトリックサーチもできるようになっています。各属性には右側にチェックボックスがあり、チェックすると「ヒューズ」ページ内の類似製品をすべて選択することができます。「定格電流」、「定格電圧 - AC」、「応答時間」、および「パッケージ/ケース」にチェックを入れ、下の検索ボタンを押すことで、類似の商品をまとめて検索できるようになります。検索ボタンを押した後、「在庫あり」ボタンを選択し、「フィルタの適用」を押すだけです。図7と図8はその様子を示しています。
図7. EatonのBK/ABC-15Rヒューズに関連するクイックフィルタの選択
図8.図7で選択したクイックフィルタに対して、フィルタの適用を押す前に「在庫あり」を選択.
また、ヒューズの面実装のオプションも多くあります。例えば、パナソニックのERB-RE1R00Vがそうです。このヒューズは、0603(1608メートル法)パッケージに収納されており、基板に直接実装できるようになっています。これは省スペースが求められるエンジニアにとって、嬉しいニュースです。自動車用ヒューズも非常に一般的で、大きく分けてブレードヒューズと栓形ヒューズの2種類があります。ブレードヒューズの例としては、Littelfuseの0299030.ZXNVが挙げられます。このタイプのヒューズは、ホルダに収まるようになっています。0299030.ZXNVの専用ホルダは0MAB0001Fです。図9、図10にそれぞれヒューズとホルダを示します。先ほどの例と同様に、ホルダのようなアクセサリは、通常、関連製品のエリアにあります。
図9.Littelfuseの0299030.ZXNV 299シリーズヒューズ
図10.図9のヒューズに対応するLittelfuseのヒューズホルダ0MAB0001F
自動車用ブレードヒューズは、定格電流に応じたカラーコードで表示されます。また、通常、ヒューズの上部に定格電流が印刷されています。図11に1Aから40Aまでの定格電流のカラーコードを示します。
図11.自動車用ヒューズのカラーコード(画像提供:Littelfuse)
まだ取り上げていないのが、ヒューズの応答時間です。高速遮断ヒューズは、動作中ずっと同じ電流が流れることを想定している製品に最適です。モータに接続された負荷のように突入電流がある場合は、低速遮断ヒューズの方が適しています。これは、一瞬だけ大電流が流れると、高速遮断ヒューズでは破壊されてしまいますが、低速遮断ヒューズでは一定時間、溶断されません。これは、Digi-Keyのウェブサイト上で選択可能なパラメータで、「応答時間」と表示されています。希望する応答時間を強調表示し、赤いフィルタ適用ボタンを押すことで、不適切なヒューズがすべて取り除かれます。
ヒューズは安全デバイスであるため、安全規格の承認が必要な場合が多くあります。Digi-Keyは、お客様が安全規格の認証でヒューズを検索できるパラメータを作りました。Digi-Keyのウェブサイトには認証の組み合わせがいくつかありますので、安全規格の認証を探す前に、まず他のパラメータを検索してみることをお勧めします。これは、最初に認証に基づいて選択すると、特定のアプリケーションで機能するいくつかの良いオプションが除外される可能性が高いからです。定格電流、定格電圧、およびサイズを最初に選択することで、より明確に利用可能なものを確認することができます。なぜなら、この時点で、安全規格認証の組み合わせは、大幅に限定されるからです。さらに説明すると、本稿執筆時点で、Digi-Keyのウェブサイトの「ヒューズ」のページには、約265種類の安全規格認証のセットが掲載されていました。例えば、5mm × 20mmのサイズで、CE、CSA、KC、PSE、SEMKO、UL、およびVDEの認証が必要な10Aの低速遮断ヒューズを探すとしたらどうでしょう。安全規格の認証だけで探すと、CE、CSA、KC、PSE、SEMKO、UL、VDEなどの認証の中から、強調表示すべきオプションを探すだけでも時間がかかるでしょう。他のパラメータを先に選択することで、認証リストが10個未満になります。
また、ヒューズには電流が流れることによって発生する熱エネルギーに関するパラメータがあります。これは I2tと呼ばれ、アンペア平方秒の単位で表されます。Digi-Keyのパラメトリック検索には、「溶融I2t”」と表示されたパラメータがあります。これにより、ユーザーは適切な溶融I2t 値を選択することができます。
サービス技術者が現場に行くと、ヒューズが飛んでいる機器に出くわすことがよくあります。ヒューズのような単純な電気部品が、より高価な回路を保護することができる一方で、ヒューズが飛ぶと機器が全く使えなくなることがあります。そのため、ヒューズキットを常備しておくのも悪くないかもしれません。幸いなことに、Digi-Keyはいくつかのヒューズキットを販売しています。Digi-Keyのウェブサイトには、「回路保護キット - ヒューズ」というページでヒューズキットの全セレクションをご覧いただけます。例えば、 Schurter, Inc.の0034.9871には、800mAから10Aまでの5mm x 20mmのヒューズが10個ずつ合計180個含まれています。図12は、0034.9871を示しています。
図12.Schurterのヒューズキット 0034.9871
Littelfuseの187.6085.9702のような自動車用ヒューズのキットは、3~80アンペアの合計475個のヒューズを含み、すべて32VDC 定格なので、自動車整備を行うサービスセンターにも大きな利点があります。図13は、187.6085.9702を示しています。
図13.Littelfuseの自動車用ヒューズのキット 187.6085.9702
結論
ヒューズは、過電流による破壊から回路を保護するためのシンプルなデバイスであり、また、破損を防ぐ安価な方法です。今日の世界では、回路は非常に複雑で、非常に繊細な部品が使われていることがあります。ヒューズには、さまざまなスタイルや形があります。これらはすべて同じ働きをしますが、ヒューズホルダに合う適切なサイズのヒューズを使用することが重要です。ヒューズのサイズに規格はありませんが、一般的なパッケージサイズとそうでないものがあります。ヒューズを選ぶ際に、とても重要な定格がいくつかあります。定格電圧と定格電流が最も重要です。ヒューズは室温で25%ディレーティングされます。つまり、7.5アンペアの回路がある場合、25℃では10アンペアのヒューズを使用すべきです。ヒューズの定格電圧は、回路の電圧より高くすることはできますが、低くすることはできません。要するに、シンプルなヒューズは、効果的に回路を保護する優れた方法なのです。
資料
- 「Fuseology(ヒューズ学)」から一部転載(2017年9月18日)
- 「Fast Fuses Versus Slow: How do You Choose?(高速遮断ヒューズと低速遮断ヒューズ:どのように選びますか?)」から一部転載(2017年9月18日)
著者について
Pat Sagsveenは、Digi-Key Electronicsのプロダクトマネージャーで、Digi-Keyのマーケットプレイスサービスおよびフルフィルメントサービスに加えて、企業の採用、新人研修、管理を担当しています。Bismarck State Collegeで電子工学と通信の応用科学準学士号を取得した後、2016年にDigi-Keyに入社しました。音楽への情熱から電子機器の世界に入り、電子機器への情熱からDigi-Keyに入社しました。