発振器のチュートリアル

著者:Pat Sagsveen
提供:Digi-Key Electronics
2017-11-09

発振器は、その出力端子間に交流信号を発生させるデバイスです。「発振」という用語は、「一定の速度で極性が反転すること」と定義することができます。発振器は、入力の直流電圧を出力端子で反転する交流電圧に変換することによって、このような信号を生成します。発振器にはアンプとフィルタ/カップリングネットワークが含まれており、正帰還ループで動作します。多くの場合、これらは密閉されたパッケージに入っています。これは、デジタルプロセッサの速度制御、クロック信号の生成、搬送波発生器や受信機の作成など、多くのアプリケーションに役立ちます。現在、水晶発振器、MEMS、電圧制御水晶発振器、温度補償型水晶発振器など、さまざまな種類の発振器が市場に出回っています。この記事では、主な発振器の種類、業界で使用される代表的な専門用語、そしてDigi-Keyのウェブサイトでの探し方について説明します。

発振器の重要なパラメータには、動作周波数、電源電圧、出力信号、周波数安定度などがあります。他にも考慮すべき点はありますが、主要なものはこのくらいです。これらはすべて、Digi-Keyウェブサイトの「発振器」ページで検索可能なパラメータです。希望する周波数がわかっている場合、適用できない他の選択肢をすべてフィルタリングすることが可能です。これは、「周波数」タブで希望の周波数をハイライトし、「フィルタの適用」ボタンを押すことで可能です。図1は、32.768kHzの発振器が必要な場合の例です。 図1では、周波数が右側にあり、フィルタの適用ボタンは中央下部にあります。

図1:Digi-Keyのパラメトリック検索エンジンで32.768kHzの発振器を選択(スクリーンショットはこの記事の投稿日時点で有効な情報です)

水晶発振器(XO)

発振器にはいくつかの種類があります。最も知られているものの1つが水晶発振器(XO)です。水晶振動子は、クロック信号を発生させる最も一般的な方法の1つで、これが「水晶発振器」の名前の由来です。水晶発振器は、単なる水晶片ではなく、特定の負荷に適した信号を作り出すために設計された回路でもあります。水晶は周波数を決定する素子で、周波数は固定されます。また、周波数だけでなく、出力の種類も重要なポイントになります。TTL信号のクロックを必要とする機器では、TTL出力の発振器を選択する必要があります。そのような発振器の例として、Abracon LLCASE-48.000MHZ-LC-T があります。

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図 2: AbraconのASE-48.000MHZ-LC-T 48MHz水晶発振器

ASE-48.000MHZ-LC-Tの製品ページ下部に「関連製品」という項目があり、発振器をテストするためのアクセサリが記載されています。Digi-Keyでは通常、図3に示すように、製品ページの下部に付属品をリストアップし、関連製品がある場合にお客様が簡単に探せるようにしています。 AXS-3225-04-10のハイパーリンクをクリックすると、アクセサリ製品ページが表示されます。

図3:AbraconのASE-48.0000MHZ-LC-Tの関連製品です(スクリーンショットはこの記事の投稿日時点で有効な情報です)

発振器はシリーズ化されていることが多く、同じような品番体系を持つ独自のファミリを形成しています。ASE-48.000MHZ-LC-Tは、このような品番体系に該当します。番号の付け方は、通常、発振器がどのシリーズに属するかを示すプレフィックスで始まります。その後に、通常MHzで表記される周波数の表記があります。動作温度は通常、オプションとなります。一般的な温度範囲は-20˚C~70˚Cか-40˚C~85˚Cの2種類です。周波数安定度は、一般にここで記載されます。Abraconが提供する用語集によると、周波数安定度は、動作温度範囲における「25˚Cでの測定周波数と比較した最大許容周波数偏差」です。ASEシリーズはCMOS出力しかなく、ドキュメントには記載されていませんでした。発振器は、ある特定の負荷を駆動するように設計されています。水晶振動子および発振回路は、ロジックレベルの出力信号を提供することができます。出力は、TTL、CMOS、HCMOS、クリップされた正弦波など、駆動対象のロジックニーズに合わせて設計された数種類があります。発振器のクロック出力を必要とするデバイスのドキュメントを確認するのが賢明です。これにより、発振器からどのようなロジック出力が必要なのかが分かります。図4は、ASEシリーズの品番体系を示したものです。

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図4:AbraconのASEシリーズの品番体系(画像出典:Abracon)

図4のような品番ビルダーを使って品番を構成できますが、その品番の在庫がどこにもないことがあります。それは、膨大な量の選択肢があるからです。メーカーには、構成可能なすべての品番を製造する能力がありますが、いくつかの品番は全く需要がありません。ご希望の品番が番号体系に適合していても、現在Digi-Keyで取り扱っていない場合もありますが、注文することは可能です。これをノンカタログリクエストと言います。Digi-Keyはその品番をもとに、メーカーに価格と在庫を問い合わせます。これらの製品はDigi-Keyの通常在庫品ではないため、最小発注量が適用されます。ノンカタログリクエストの場合は、0120-855-960にお電話いただき、ご相談ください。

MEMS発振器

MEMSを使った発振器は、水晶発振器と同じ結果をもたらしますが、その方法は異なります。MEMSとは、「MicroElectroMechanical Systems(微小電気機械システム)」の略で、共振周波数を持つ音叉のような働きをするダイの中にエッチングされたシリコンを使用します。水晶発振器は、製造工程で2つの技術が関わってきます。水晶チップは製造が難しく、コストもかかります。発振回路と組み合わせる必要があり、製造工程にも手間がかかります。そのため、コスト高とリードタイムが長期化することになります。MEMS発振器は、水晶よりも高度に自動化された製造で、コストが低いシリコン技術だけで構成され、完成品のコストダウンにつながります。 MEMS発振器は、水晶発振器よりも消費電流が少ないため、バッテリ駆動のアプリケーションに適しています。また、水晶発振器と比べて、激しい振動や衝撃に耐えることができます。MEMS発振器の一例として、 SiTIMESIT8008BI-73-18S-25.000000があります。

お客様がDigi-KeyのウェブサイトでSIT8008BI-73-18S-25.000000をご覧になっている時に、簡単に類似製品を見つけるコツは、商品ページの「製品属性」にアクセスすることです。例えば、SIT8008BI-73-18S-25.000000のようなMEMS発振器で周波数が違う製品が欲しいというお客様がいらっしゃったとします。各属性の右側のボックスをクリックすると、「製品属性」エリアからすぐにパラメトリック検索を行うことができます。MEMS発振器が必要で、スタンバイ機能とLVCMOS出力、1.8V電源、±50ppmの周波数安定度が必要な場合は、図5のようにそれぞれのボックスをクリックし、右下の検索ボタンをクリックします。この投稿を書いた時点では、 発振器ページに 264,150個のオプションがありましたが、関連するオプションは130個に一気に減りました。

図5:Digi-Keyの部品詳細ページで製品属性を選択し、類似部品を探す

電圧制御発振器(VCXO)

電圧制御発振器は、その名が示すように、入力電圧の変化に応じて周波数を変化させる機能があります。通常、出力周波数を変化させるために、可変電圧を印加できるコントロールピンがあります。「制御電圧」は出力周波数を制御する電圧で、メーカーは通常、その仕様についてドキュメントに明記しています。水晶に直列にバラクタダイオードを入れることにより周波数が制御されます。バラクタダイオードは、入力電圧に応じて内部静電容量が変化します。バラクタダイオードは逆バイアスされたダイオードで、空乏層の大きさによって静電容量が変化します。電圧をかけると空乏層が大きくなり、静電容量値が下がります。 これにより、最終的にユーザーは発振器の周波数出力を制御することができるようになります。これは、PLL(位相ロックループ)や温度補償が必要なネットワークなどで非常に有効です。制御端子へのフィードバックループを作ることで、電圧制御発振器の周波数を自動的に制御することができます。もう1つ、ドキュメントで確認したいのは、あらゆる環境条件、経年変化に対して制御可能な周波数範囲である「絶対プルレンジ」です。電圧制御発振器の例として、CTS-Frequency Controls357LB3I027M000を図6に示します。

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図6:CTS-Frequency Controlsの電圧制御発振器57LB3I02M000

温度補償型発振器(TCXO)

温度補償型発振器は、最終的に出力周波数を変化させる温度変化を補償するために作られたものです。これらは、ダイナミックな環境下でのアプリケーションに有効です。携帯電話は、一生の間に熱や寒さにさらされるデバイスの代表格です。スマートフォンに搭載されるマイクロプロセッサは、冬と夏の気候にさらされますが、どのような状況でも同じように動作することが期待されます。温度補償型発振器は、補償回路を使用して温度変化を調整するものです。これらは電圧制御発振器とオーブン制御発振器(OCXO)の橋渡しをするもので、一般的な温度制御発振器に比べて高価であり消費電力が大きくなっています。温度補償ネットワークは、一般的にサーミスタとバラクタを用いて作られます。バラクタは、補償ネットワークの出力電圧に基づいて、水晶振動子に対する負荷を変化させます。動作は電圧制御発振器に非常に似ていますが、温度補償のためにサーミスタを搭載しています。温度補償型発振器の一例として、 ECS Inc. InternationalECS-TXO-3225-147.4-TRを図7に示します。

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図7:ECS Inc. Internationalの温度補償型発振器ECS-TXO-3225-147.4-TR

結論

発振器については、ここで触れた以外にもたくさん紹介する内容があります。この記事では、発振器の種類によって、より良い用途がいろいろあることを説明しました。これらはすべて、クロック信号をデバイスに供給するという同じ目的を達成するために動作しますが、その方法はそれぞれ異なります。Digi-Keyが取り扱う製品の多くは、ここで紹介したさまざまなタイプの発振器を組み合わせて使用しています。これから発振器の世界に飛び込む学生や、まずはどこからDigi-Keyウェブサイトを活用していいか分からないエンジニアにとって、この記事が良いきっかけになることを願っています。

著者について

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Pat Sagsveenは、Digi-Key Electronicsのプロダクトマネージャーで、Digi-Keyのマーケットプレイスサービスおよびフルフィルメントサービスに加えて、企業の採用、新人研修、管理を担当しています。Bismarck State Collegeで電子工学と通信の応用科学準学士号を取得した後、2016年にDigi-Keyに入社しました。音楽への情熱から電子機器の世界に入り、電子機器への情熱からDigi-Keyに入社しました。

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