「02 コイル消費電力はどうしたら低減できるの?」でご説明しておりますが、コイルを保持電圧にすることで消費電力低減が図れます。また、定格特性維持のため、保持電圧での使用が必須のリレーがあります。ご使用前に高容量パワーリレーの保持電圧規格値について、各機種のデータシートをご確認ください。
保持電圧回路には推奨されるいくつかの方式があります。以下、紹介していきます。
CR方式は、コンデンサ(Capacitor)と抵抗(Resistor)から構成される電気回路で、保持電圧を実現するための、最もシンプルな構成です。コンデンサと抵抗を並列に接続して回路を構成します。コンデンサの充電状態に応じてコイルに印加される電圧が変化します。
コイル電圧が各機種の規定されている保持電圧内に収まるように抵抗値Rを決定してください。コンデンサと抵抗の値を適切に選ぶことで、保持電圧の持続期間や安定性を調整可能です。物理的な消耗部品がありませんので長期的なご使用が期待できる一方、コンデンサの劣化による故障に注意が必要です。
保持電圧CR回路の参考図
(1)コイルに定格電圧以上の電圧を印加する。
(2)C(コンデンサ)に流れる電流でリレーがONした後、R(抵抗)により電流を抑制する。
※C(コンデンサ)は定格電流以上の電流が40ms以上流れる容量、R(抵抗)は定格電流の50%以上の電流が流れるように設定します。
コイル定格電圧100%以上かつ40ms~3sの範囲内で印加してください。
シンプルな回路構造のため、回路設計が容易
R(抵抗)とリレーコイルの抵抗の比率で電圧が分圧されるため、スイッチ方式のようなシーケンス制御が不要
- 抵抗が入っているため、省電力効果が低下する
- 100msの間、定格電圧をリレーコイルに印加するために、回路へコイルの定格電圧100%よりも高い電圧印加が必要
- コンデンサの容量が大きくなる
コンデンサの充電状態に応じて、回路電圧は分圧される。100msの間、100%のコイル定格電圧をリレーコイルに印加し続ける必要があるため、100msよりも十分に長い時間で充電完了するコンデンサの容量を選択しなければならない
コンデンサの代わりにスイッチを使用して電荷を保持することも可能です。
スイッチ方式には2種類あります。
1つ目のスイッチ方式は、スイッチと抵抗から構成されるシンプルな電気回路構成です。スイッチと抵抗を並列に接続して回路を構成します。スイッチをONの状態で、回路に電圧を印加することでリレーコイルに定格電圧を印加します。100ms経った後にスイッチをOFFにすると、R(抵抗)とリレーコイルの抵抗により電圧が分圧されて、リレーコイルに保持電圧が印加されます。
スイッチによる保持電圧回路の参考図
(1)スイッチをONにすることにより、コイルに定格電圧を印加する。
(2) スイッチを開くと、R(抵抗)により電流を抑制する。
※スイッチOFF時、定格電流の50%以上の電流が流れるようR(抵抗)の値を設定します。
コイル定格電圧100%以上かつ100msから3sの範囲内で印加してください。
- CR方式よりもさらにシンプルな構造のため回路設計が容易
- 抵抗が入っているため、省電力効果が半減する
2つ目のスイッチ方式は、印加電圧(電源)を2つ必要とするため、スイッチも2つ必要な電気回路構成をとります。100ms以上の間、リレーコイルには定格電圧の100%以上を印加しなければならないため、電源投入時はコイル駆動スイッチと電圧切替スイッチの両方をONにします。リレーコイルには電圧が高い方の電源電圧(印加電圧A)が印加されます。100ms経過後に電圧切替スイッチをOFFにすると、コイル定格電圧50%(印加電圧B)の電源だけが回路とつながった状態になり、リレーコイルに保持電圧(50%)が印加されます。
スイッチによる保持電圧回路の参考図
コイル定格電圧100%以上かつ100msから3sの範囲内で印加してください。
- 抵抗がないため、省電力効果を最大限に発揮できる
- 電源が2個必要なため機器のサイズとコストがアップしてしまう
- 電源側の設計が複雑になる
PWM(Pulse Width Modulation)制御とは、半導体を使ったONとOFFの繰り返しによって電力を制御する方法です。高速のON/OFFスイッチングにより、より少ない電力で一定の電圧を維持します。
電圧OFFの時間が多くなればなるほど、電力消費を抑えることが可能です。1秒間により多く電圧信号のON/OFFを行うことで、OFFの時間を増やしつつ、一定の平均電圧を印加することが可能です。このON/OFFの比をデューティー比(duty比)と言います。
一般的なPWM制御回路では、ツェナーダイオードによる電力損失が発生し、デューティー比の大幅な低減が困難であるため、適用を推奨しておりません。ツェナーダイオードと並行してスイッチを実装し、PWM制御時はバイパスしてください。スイッチを先にOFF後に印加電圧をOFFにすることで、その後ツェナーダイオード+ダイオードによりリレーが正常にオフされます。
以下、パワーリレー G9KA の各デューティ比におけるコイル電流値を例にあげます。一般的なPWM回路 + ツェナーダイオードでは、リレーをONに保持するために必要なコイル電流を維持するためには、86%以上のデューティ比を必要とします。そのため、推奨PWM回路の保持状態よりも消費電力が上昇するため、リレーの発熱が大きくなります。また省電力の効果も低下します。
一方推奨PWM回路では、45%以上のデューティ比で保持に必要なコイル電流の基準を満たすことができます。
G9KA の例
Digikeyウェブサイトで G9KA シリーズをご覧になるには、ここをクリックしてください。
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高容量パワーリレー使用時の不明点をわかりやすく解説
セクション3/9
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