産業用制御回路におけるソース型/シンク型構成の実例


APDahlen Applications Engineer

なぜソース型とシンク型という用語が重要なのでしょう?

ソース型とシンク型という用語は、産業用制御回路やオートメーション回路でよく見られる回路構成を示します。ソース型構成では、電流は制御デバイスから供給されますが、シンク型構成では、制御デバイスは負荷をグランドに接続します。この定義は十分ではありますが、この概念の基本的な性質を捉えるには不十分です。図1に示すBanner Engineeringのタッチボタンなどの単純なデバイスから、最も複雑なプログラマブルロジックコントローラ(PLC)に至るまで、これらの概念が調達の決定に大きく影響するため、その重要性はいくら強調してもし過ぎることはありません。この概念は、密接に関連するPNP型およびNPN型と呼ばれるセンサにも適用されます。PNPはソース型、NPNはシンク型の同義語であることがわかります。

この技術概要では、Banner EngineeringのタッチボタンK30に焦点を当てた簡単なアプリケーション例を紹介します。このデバイスが選ばれたのは、「バイポーラ」出力を持っているからで、この例では、シンク出力とソース出力の両方を持つデバイスを意味します。

図1: Banner EngineeringのタッチボタンK30ABTRGHQおよびMalloryのパネルランプFL1P-22NA-1-Y24VとB&K PrecisionのDC電源1550の写真

シンク型とソース型を考えるときに混乱が生じるのはなぜでしょう?

おそらく、歴史的な理由と命名法の2つの理由が考えられます。歴史的な観点から言えば、Benjamin Franklinと J.J. Thomson.にまで遡ることができます。これには、極性の最初の発見と、その後約200年後にノーベル賞レベルの電子の発見と電流の流れに関する「正しい」理解が含まれます。

歴史の問題点

残念ながら、この歴史的な違いにより、いくつかの興味深い問題が残されています。原則として、テクニシャンは一般的にThomsonの洗練された用語で教えられるのに対し、エンジニアはFranklinの用語で電流の流れを考えるように教えられます。実際、従来の電流の流れ(Franklin)で書かれた教科書と電子の流れ(Thomson)で書かれた教科書の両方が存在します。並べて比較すると、すべての電流の方向が反転し、磁場の法則が右手から左手に反転していることがわかります。

ソース型とシンク型という用語の意味を理解するためには、エンジニアとテクニシャンの間にあるこの認識の違いを解消する必要があります。良くも悪くも、私たちはFranklinが正しいと言うでしょう。電流はプラスからマイナスへ流れ、磁界の方向は右手の法則で定義されます。これでほとんどの産業用電子機器の作業には十分です。もしあなたが半導体理論の授業を受けたり、真空管技術を研究しているのであれば、この状況を再確認し、Thomsonが正しいと主張することができるでしょう。別の言い方をすれば、最初に用語を定義した者が勝つということです。

直流回路では、電流はプラスのソースからマイナスのリターンに流れます。

命名法の問題

ソース型とシンク型の概念を探求する際には、コントローラと負荷を注意深く区別する必要があります。

  • コントローラ: デジタル回路の場合、コントローラはスイッチまたはスイッチ接点を含むものです。

  • 負荷: 負荷は、コントローラによって制御される部品です。負荷はコントローラに応答します。

エレクトロニクスの初心者がシンク型とソース型の概念に戸惑うのも無理はありません。電流の流れる方向を誤解したり、コントローラや負荷という用語の適用を誤ったりするだけで、その概念全体が失われてしまいます。次の例を考えてみてください。

例1:

スイッチとリレーコイルで構成される回路があるとします。このとき、スイッチはコントローラであり、リレーコイルは負荷となります。

例2:

センサとPLC入力端子があるとします。この場合、センサはコントローラであり、PLC入力回路は負荷となります。用語と対象には細心の注意が必要です。大局的な視点に立つと、PLCはコントローラだと言いたくなります。しかし、この焦点を絞った状況では、デジタル入力を持つPLC入力回路が負荷となり、センサがコントローラとなります。この状況では、センサがPLCの入力を制御します。このことは負荷として機能する入力抵抗でPLCをモデル化するのに役立ちます。

BannerのタッチボタンK30ABTRGHQによるシンク型およびソース型コントローラの出力

図1と動画1にあるBannerのタッチボタンは、各出力タイプを1つずつ搭載しているため、シンク型とソース型を調べるのに理想的なデバイスです。このデバイスのデータシートにある配線図を図2に示します。これは産業用制御の典型的な回路図です。シンク負荷とソース負荷を容易に特定できることを前提としています。後ほど示すように、白線(+24V DCへのレッグ)に接続される負荷はシンク構成であり、黒線(グランドリターンへのレッグ)に接続される負荷はソース構成です。

図2: 赤/緑タッチボタンK30ABTRGHQの配線図(デバイスのデータシートより)

動画1: Bannerのタッチボタンの動作。片方のパネルランプがシンク型、もう片方がソース型

わかりやすくするために、回路を図3のように描き直すことができます。この図では、シンク型が左に、ソース型が右に配置されています。これは、関連する回路を通る左から右への電流の流れと連動します。

技術的なヒント: ワイヤの色は、ソース型とシンク型の概念と密接に関連しています。リターンにワイヤで接続されているすべての接続に、白に青のストライプのワイヤが使用されていると仮定しましょう。また、青のワイヤを24V DC電源と同電位の24V DCになる可能性のあるすべてのワイヤに使用します。その結果、ソース型構成の負荷は、負荷のレッグは常にグランド(リターン電位)に固定されているため、青のワイヤと白に青の縞模様のワイヤを1本ずつ持つことになります。シンク型構成の負荷はコントローラの状態に応じて負荷の両側が24V DCで測定される可能性があり、常に2本の青いワイヤがあります。

図3: Bannerのタッチボタンの写真と、2つのパネルランプを示す簡略化した代表的な配線図。ボタンは指定されたコントローラであり、パネルランプは負荷として機能することに注意してください。一方の回路はシンク型で、もう一方はソース型です。

Bannerのタッチボタンは、2つの半独立したコントローラで設計されていることを認識することが重要です。ここでは、負荷の制御を行うスイッチ接点を持つものとして、先ほどのコントローラの定義を使っています。この場合、タッチボタンはDPST(Double Pole Single Throw、2極単投)スイッチとして大幅に簡略化され、ボタンを押した状態に応じて赤または緑になる魔法の内部Xを備えています。

シンク型構成とは何ですか?

定義によれば、シンク型構成は、コントローラの接点が閉じたときに導通し、それによって負荷がグランドリターンに接続されます。図3では、パネルランプ番号1(PL1)がこのシンク型構成の一部であることがわかります。Franklinの従来の電流の流れに従えば、コントローラは負荷電流の「シンク」(グランドリターン)を提供します。

ソース型構成とは何ですか?

定義によれば、ソース型構成は、コントローラの接点が閉じたときに導通し、それによって負荷が電源に接続されます。図3では、PL2はこのソース型構成の一部であることがわかります。ここで、コントローラは電流源として機能します。その後、電流は負荷を通って流れ、グランドリターンを経由して戻ります。

技術的なヒント: 「グランド」と「リターン」という用語には注意が必要です。これらはしばしば同じ意味で使われますが、異なる回路構成を意味します。リターンという用語は一般的にフローティングシステムに関連しますが、グランドは電源のマイナス端子が金属シャーシに接続されているシステムを指します。一般的に、24V DC制御システムはアースに対してフロートします。従って、リターンという用語を使用する方が適切です。一例として、このDelta Electronicsの電源DRC-24V10W1AZを考えてみましょう。データシートによると、二重絶縁のクラス2デバイスで、「アース接続は不要」です。このことは、出力段のガルバニック絶縁を示す電源ブロック図を分析することでさらに裏付けられます。

シンク型回路とソース型回路はどちらが優れていますか?

英語には 「horses for courses(餅は、餅屋) 」という言葉があります。万能のソリューションは存在しません。むしろ、異なる製品ソリューションを必要とする多くの異なる回路構成があると言えます。最良の回路とは、仕事をこなすと同時に、将来の製造者、機器インテグレータ、テクニシャンがシステムを保守・修理するための明確で文書化された方法があるものです。

個人的なレベルでは、私はソース型構成を好みます。その理由はいくつかあります。第1に、私はスイッチを負荷のハイサイドに置くのが好きです。第2に、私たちはすべてのものをグランドを基準とする正論理で考える傾向があります。例えば、私たちは無意識にメータの基準プローブ(黒)をグランドに当てています。第3に、このバイアスは入手可能な製品数に反映されます。たとえば、DigiKeyの近接センサを考えてみましょう。3線と4線のノーマリオープンNPN(シンク型コントローラ)を検索すると、1,788件の結果が得られます。同じようにPNP(ソース型コントローラ)を検索すると、2,713件がヒットします。これはこのバイアスを裏付けるものです。しかしこれはまた、シンク型回路とソース型回路の両方が普及していることを示唆しています。従って、産業用制御機器に携わるすべての担当者は、両方の構成について深く理解しておく必要があります。

技術的なヒント: このタッチボタンのようなBannerの製品は、さまざまな構成で利用可能です。重要な違いは、インジケータランプを誰が、あるいは何がコントロールするかです。注目しているBanner30は、ユーザーが色をコントロールする色コントロールの一端を担っています。一方、BannerのK50などのデバイスでは、Schneider ElectricのModicon TM221CE24TなどのPLCによって色がコントロールされます。このように幅広い製品があるため、用途に応じた製品を注意深く選ぶ必要があります。

おわりに

この概要では、Banner Engineeringのタッチ ボタンを例に、シンク型回路構成とソース型回路構成の概念について説明しました。PLC、リレー、およびPNP(ソース型)出力とNPN(シンク型)出力を持つセンサなどの関連概念の簡単な解説が含まれます。おそらく将来的には、そのようなアプリケーションをさらに探求することができるでしょう。シンク型とソース型のコンセプトは、私たちの技術の多くを支える基本的な構成要素であるため、時間をかけて取り組む価値があると思います。

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ご健闘をお祈りします。

APDahlen

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著者について

Aaron Dahlen 氏、LCDR USCG(退役)は、DigiKeyでアプリケーションエンジニアを務めています。彼は、技術者およびエンジニアとしての27年間の軍役を通じて構築されたユニークなエレクトロニクスおよびオートメーションのベースを持っており、これは12年間教壇に立ったことによってさらに強化されました(経験と知識の融合)。ミネソタ州立大学Mankato校でMSEEの学位を取得したDahlen氏は、ABET認定EEプログラムで教鞭をとり、EETプログラムのプログラムコーディネーターを務め、軍の電子技術者にコンポーネントレベルの修理を教えてきました。彼はミネソタ州北部の自宅に戻り、このような記事のリサーチや執筆を楽しんでいます。

問題

  1. シンク型回路とソース型回路に適用される「コントローラ」と「負荷」という用語を定義してください。

  2. 少なくとも「コントローラ」の例を3つ、「負荷」の例を3つ挙げてください。

  3. 図3について、各ワイヤの色を確認してください。リターンへのワイヤ接続は白に青のストライプ、それ以外はすべて青にしてください。

  4. 正/誤:コントローラとは、回路に流れる電流を開始または制御する回路の部分です。

  5. 図3の配線図で、ワイヤ2と4を誤って入れ替えたとします。その結果を説明してください。

  6. コントローラと負荷の両方について、「電流の流れの観点」から「ソース型」という用語を説明してください。

  7. 「ハイサイド」スイッチとはどういう意味ですか?これはシンク型とソース型のどちらに関連するのでしょうか?

  8. 「グランド」と「リターン」という言葉を区別してください。

  9. あなたはマルチメータを使って回路のトラブルシューティングを行っています。黒い基準プローブが金属シャーシに接続されている場合と、フローティングリターンに関連する端子台に接続されている場合の、メータの読み取り値を比較してください。

  10. PNPトランジスタとNPNトランジスタの構成を調べてください。それぞれのタイプについて、電源、トランジスタ、および負荷を示す回路図を作成してください。固定24V DC電源を想定してください。また、各回路図をシンク型またはソース型と識別してください。

批判的思考を使う問題

  1. リレーベースの制御回路において、リレーがコントローラと負荷の両方になる可能性があることを説明してください。

  2. シンク型回路とソース型回路で、トラブルシューティングの手順がどのように異なるかを説明してください ヒント: コントローラの接点が開いているときと閉じているときのリターンに対する測定電圧を考慮してください。また、メータの基準プローブをどこに接続するかを明確にしてください。

  3. あなたの家のサーキットブレーカがコントローラであると仮定して、あなたのブレーカパネルはシンク型またはソース型構成のどちらの一部ですか?回路の安全性にはどのような配慮が必要ですか? ヒント: コントローラの接点が開いているときと閉じているときのリターンに対する測定電圧を考慮してください。また、メータの基準プローブをどこに接続するかを明確にしてください。

  4. 産業用コントローラの24V DC電源を接地する(マイナス端子をアース基準とする)ことの長所と短所を示してください。

  5. 問題5で述べた、誤って交換されたワイヤに戻ります。ワイヤを正常な構成に戻さずに、2つの大きな抵抗を使って回路を元に戻すにはどうしたらよいでしょうか。 ヒント1: 負荷に対して抵抗の抵抗値は低いと仮定します。ヒント2: PNPセンサとNPNセンサに関する記事、特にPNPをNPNに置き換えるセクションを必ずお読みください。

  6. 「電気は最も抵抗の少ない経路をたどる」というまったくナンセンスなことを時々耳にすることがあるでしょう。この考え方が、導体とアースの間に明らかな接続がないフローティングシステムを含む危険な状況につながる理由を説明してください。




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