フィールドオリエンテッド制御(FOC)アルゴリズムを使用する核心的な価値は、座標変換と非干渉制御によってトルクと磁束の独立した制御を実現することにあります。その具体的な理由は、以下のブロック図中の各モジュールの機能から導き出すことができます。
永久磁石同期モータ(PMSM)用センサレスフィールドオリエンテッド制御(FOC)のコアロジックフレームワーク
(出典:Microchip)
1. 非干渉制御:干渉している三相電流を独立したトルク/磁束成分に変換
FOC制御のブロック線図の核心となるのは、クラーク変換(三相静止座標系→二相静止座標系)とパーク変換(二相静止座標系→二相同期回転座標系)です。これらの2つの変換の本質は、数学的なデカップリングにあります。
- 三相ステータ電流(Ia、Ib、Ic)はクラーク変換により二相静止電流(Iα、Iβ)に変換されます。
- 次に、パーク変換により、同期回転座標系におけるトルク成分Iqと磁束成分Id(ローター磁界の方向と一致)に変換されます。
IqとIdは回転座標系における直流成分であるため、独立したPI制御(DCモータにおけるローター電流とステータ界磁電流の制御と同様)によって独立して調整することができ、三相交流モータにおける「トルクと磁束の干渉項」の問題を完全に解決することができます。.
クラーク変換とパーク変換の原理については、以下の投稿を参照してください。
2. 精密制御:トルクと磁束の独立したPI制御精密制御
ブロック図のIqとIdの独立したPI制御は、正確な制御を実現するためのFOCの鍵です。
- Iqループ(トルクループ): モータの出力トルクを直接制御するため、極めて高速なトルク応答が可能です(例えば、負荷が急変した場合、Iqを10ms以内に目標値に調整可能)。
- Idループ(磁束ループ): ステータ磁界とローター磁界の角度を制御(常に90°を維持)し、磁束飽和を回避しながら「トルク/電流比」(同じ電流でより高い出力トルク)を最大化します。
3. 正弦波出力: デカップリングされたコンポーネントを三相ドライブ信号に変換
PI制御のあと、IqとIdは逆パーク変換によって二相定常座標系(Iα、Iβ)に戻されます。さらに、空間ベクトル変調PWM(SVPWM)によって正弦波三相電圧信号を生成し、インバータを駆動して安定した三相交流を出力します。
- 矩形波制御に比べ、正弦波電流はトルクリップルを抑制し(変動率1%以下)、モータの振動およびノイズを低減します。
- スカラ制御(V/F制御)に比べ、FOCの正弦波出力は全回転域(定格回転数5%~100%) で高効率(効率95%以上)を維持できます。
4. 動的応答とマルチモード適応
FOCのブロック図では、「速度ループ、トルクループ、電流ループ」の3つのループのカスケード制御も実現 しています。
- 最外周の速度ループは、目標速度(ポテンショメータなど)に基づきトルク指令を出力します。
- 中間のトルクループ(Iqループ)は、トルク指令を電流指令に変換します。
- 最内周の電流ループ(Iq、Idループ)は、モータの入力電流を直接制御します。
この構造により、FOCは、トルクモード、速度モード、および位置モードのようなマルチシナリオ要件に対応し、極めて高速でダイナミックな応答(例えば、エレベータ起動時のトルクステップ応答)を実現します。
概要:FOCアルゴリズムの代替不可能性
FOCは、トルクと磁束の分離、高精度PI制御および正弦波出力を実現できる唯一のアルゴリズムであり、性能(トルク精度、速度制御範囲)、効率(省エネ)、および信頼性(低振動、低ノイズ)の点で、従来の制御方法(スカラ制御や矩形波制御など)に対してはるかに優れています。そのため、FOCは中級から高級のPMSM制御のための好適なソリューションとなっています。
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