APDahlen Applications Engineer
短絡電流定格(SCCR:Short Circuit Current Rating)は、電気および火災の安全に関する重要な指標です。SCCRは、ヒューズや回路ブレーカなどの電力部品に関するUL 508A規格で規定されているため、よく知られています。この指標をよりよく理解するために、上流の電力給電線、具体的には変圧器の観点からSCCRについて見てみましょう。
図1に示す変圧器は、小さな木工所に設置されたものです。三相電源が敷地内に隣接していたため、この決断は容易でした。新しい三相システムにより、オペレーターはより小型で効率が高く、かつ安価な三相モータを使用できるようになりました。オーナーは、将来は10~20馬力のモータを追加したいと述べています。
変圧器が設置された際、電気技師はオーナーに「お使いの機器は、新しい変圧器のSCCRに対応していますか?」と尋ねました。
注意: この説明は、大電力電子システムに関連する安全基準について説明しています。本資料は慎重に作成されていますが、意図しない誤りや規格の誤った解釈が含まれている可能性があります。正式なガイダンスについては、DigiKeyの利用規約を参照してください。説明および事実の内容を改善するため、ご意見をお寄せいただければ幸いです。
図1: 三相208Y/120V AC 45kVA変圧器の写真
SCCRが電力給電線と制御盤との関係を示します
概算値の算出には、三相変圧器の故障電流を規定するUL 508A表SB4.4を参照します。この表によると、対象の変圧器は7.44kAの電流を供給可能です。したがって、木工所の電力引き込み口は、機器の制御盤に合わせて、この電流値もしくはそれ以上を満たす必要があります。最悪のケースとして、フォークリフト運転手Elmerが相間短絡を引き起こした、この産業事故を例に考えてみましょう。
UL 508A認定パネルはどのSCCRレベルで設計する必要がありますか?
木工所の設備(壁面ブレーカ制御盤および機器を含む)は、電力給電線の故障電流に対応できるように設計されている必要があります。制御盤が最弱リンクになってはいけません。
たとえば、制御盤には15馬力のモータ用のモータスターターが搭載されている可能性があります。このスターターは、208V ACシステムで75kAのSCCR用に設計された、適合するモータスタータープロテクタ(MSP:Motor Starter Protector)で保護することができます。これにより、その他の機器もUL 508A準拠の75kA SCCR用に設計されていれば、十分な保護レベルを確保できます。
図1に示す変圧器は比較的小さいことを認識しています。100kVA以上の変圧器および大電力負荷センターを含む商業施設に設置した場合、機械の安全マージンは低下します。いずれの場合も、システムは、下流の機器が電力給電線の最大故障電流能力から保護されるように設計されています。
おわりに
UL 508A規格に準拠して設計された産業用制御盤は、驚くほど複雑な環境を体現しています。設計者が、太いワイヤ、細いワイヤ、プログラミング、および規格適合をすべて単一の制御盤で扱える場所は他のどこにあるでしょうか?
ご健闘をお祈りします。
APDahlen
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著者について
Aaron Dahlen氏、LCDR USCG(退役)は、DigiKeyでアプリケーションエンジニアを務めています。彼は、技術者およびエンジニアとしての27年間の軍役を通じて構築されたユニークなエレクトロニクスおよびオートメーションのベースを持っており、これは12年間教壇に立ったことによってさらに強化されました(経験と知識の融合)。ミネソタ州立大学Mankato校でMSEEの学位を取得したDahlen氏は、ABET認定EEプログラムで教鞭をとり、EETプログラムのプログラムコーディネーターを務め、軍の電子技術者にコンポーネントレベルの修理を教えてきました。彼はミネソタ州北部の自宅に戻り、このような記事のリサーチや執筆を楽しんでいます。