アルミコンデンサ

アルミコンデンサ

アルミコンデンサは、「電解コンデンサ」に分類されるデバイスの一種です。そのため、小さなパッケージで大きい静電容量値を比較的安価に実現することができます。これらの望ましい特性と引き換えに、電気的特性や寿命は比較的劣る傾向にあります。信号系には不向きですが、直流電源系では定番のアルミコンデンサです。一般的なアルミ電界コンデンサ、バイポーラ(両極性)型、および導電性高分子電極を用いた新しいタイプの3種類があります。「アルミ電解コンデンサ」ではなく「アルミコンデンサ」と表記したのは、従来の液体電解質を使用しない導電性高分子電極タイプに敬意を表しているためです。

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デバイスの構成

一般的なアルミ電解コンデンサは、2枚の高純度アルミ箔の間に、電解液で飽和させた紙などのスペーサ材を挟み込み、仕切られたものです。これらの箔には、通常、微細なエッチングが施され、有効表面積が平滑な箔の数百倍にもなっています。

一般的なアルミ電解コンデンサでは箔の一方に、酸素を含む電解液を介して箔に電圧をかけ、コンデンサの誘電体となる酸化アルミニウムの層を形成します。これにより、電解液中の酸素がアルミニウム箔の表面に結合し、形成プロセス中に印加された電圧に応じた厚さの酸化皮膜が形成され、その膜厚は、製造されるコンデンサの定格となる動作電圧によって決定されます。この酸化膜の厚さは、通常、1マイクロメートル(0.00004インチ)のオーダーです。

酸化膜の下にある酸化していない金属は、アルミ電解コンデンサの電極の片方を形成しています。もう一方の電極は、2枚目の箔ではなく、電解質溶液です。一般的なアルミ電解コンデンサでは、2枚目の箔には意図的に酸化膜を形成せず、単に電解液と電気的に接触させるために使用しています。なぜなら、液体を回路基板にはんだ付けするのはちょっと難しいからです…。両極性コンデンサは、両方のアルミニウム板に酸化膜を形成することで、2つのコンデンサを電極を逆向きに直列に接続したようなデバイスになります。

電解液は流体であるため(導電性高分子材料を使用するアルミポリマーコンデンサを除く)、エッチングされ酸化された箔シートの微細構造により、コンデンサの両電極間に大きな面積を確保することができます。誘電体(酸化アルミニウム)が非常に薄いため、最終的に大きい値のコンデンサとなります。コンデンサの基本式にあるように、電極面積に比例して容量が増加し、電極間距離/誘電体厚さに反比例して容量が増加します。箔シートにリード線を取り付け、巻いたり折ったりして容器(通常はアルミ製)に収め、その組み立て品をゴム栓で封をします。

故障すると内圧が上昇するため、ほとんどのアルミ電解コンデンサには、比較的安全な方法で内圧を逃がす機構が備わっています。通常、大型の装置ではこの目的のために専用のメカニズムが使用されますが、小型の装置では、ゴム栓の慎重な設計や容器の刻み目(圧力弁)によって保護通気機能が実現され、過剰な内圧が発生した場合に容器が比較的制御された方法で破裂します。

使用可能な容量と電圧の範囲

以下のチャートは、執筆時点でDigi-Keyが提供可能なアルミコンデンサの電圧/静電容量定格の範囲を示しています。標準タイプ、両極性タイプ、および高分子タイプがこれに含まれます。

アプリケーションの長所と短所

アルミコンデンサの最大の強みは、小さなパッケージで大きな容量値を確保し、しかも比較的安価に提供できることです。さらに、自己修復性も高い傾向にあります。酸化アルミニウム誘電体層に局所的な弱点が生じた場合、その弱点部を流れるリーク電流の増加により、誘電体層の初期形成時と同様の化学反応が起こり、弱点部で誘電体が厚くなり、その結果、リーク電流が減少することになります。

アルミコンデンサの欠点は、(a)使用材料の化学反応性、(b)電解液の導電性、(c)電解液の揮発性、に大きく関連しています。

アルミコンデンサに使用されている材料は化学反応性があるため、誘電体層の安定性とデバイスの長期的な機械的堅牢性の2つの点で問題があります。これらのデバイスの酸化アルミニウム誘電体層は電気化学プロセスで形成されているため、印加電圧を反転させるだけで電気化学プロセスによって侵食されることにもなります。このため、アルミコンデンサには極性があり、極性を間違えて電圧をかけると、誘電体が急速に侵食され、薄くなり、大きい漏れ電流と過剰な内部発熱が発生します。

機械的堅牢性の観点から、反応性の高い金属(アルミニウム)と腐食性の高い電解液の混在は微妙な問題で、電解液の組成に誤りがあると、2000年代初めの「不良電解コンデンサ問題」に見られるように、早期の故障につながる可能性があります。

また、アルミ電解コンデンサのもう1つの欠点は、電解液の伝導が電子伝導ではなくイオン伝導であるため、電解液の伝導があまり効率的でないという事実です。イオン(電子の過不足により電荷を持つ原子またはその小集団)は、電荷の担い手である原子間を移動する自由電子の代わりに、溶液中を移動しています。イオンは電子よりもかさばるため、簡単には動かず、そのためイオン伝導は一般に電子伝導よりも高抵抗になりがちです。その程度は、温度によって大きく影響されます。温度が低いほど、電解質溶液中のイオンは溶液中を移動しにくくなり、抵抗が高くなります。そのため、電解コンデンサは比較的ESRが高く、温度と強い逆相関の特性を示します。

アルミコンデンサ(固体高分子型以外)の第3の欠点は、電解液が経時的に蒸発しやすく、ゴム栓からの拡散や安全弁構造からの漏れなどにより、最終的に大気中に放出されることです。

一般的な使用方法とアプリケーション

アルミコンデンサは、主に直流電源用途で比較的大容量かつ低コストのコンデンサを必要とし、交流性能と経時安定性が特に重要でない場合に使用されます。その用途は、電源の整流ACライン電圧のバルクフィルタリング、低周波スイッチング電源の出力フィルタリングなどです。アルミコンデンサは、比較的高いESRと大きな公称静電容量からなる時定数により、リップル周波数が約100kHzに近づくと急速にその魅力を失う傾向があります。しかし、デバイスの用途に応じた最適化は様々で、デバイスの有用な周波数の限界は、数kHzから1MHz程度と広い範囲になります。

アルミ電解コンデンサは、一般に、アナログ信号経路のように、損失が大きく、環境条件や動作条件によってデバイスパラメータが大きく変動することが好ましくない用途には適していません。

一般的な故障メカニズム/重要な設計上の考慮点

電解液の喪失

ほとんどのアルミコンデンサは、経年変化により電解液が蒸発し、その結果ESRが上昇し静電容量が低下します。これは、アルミ電解コンデンサの寿命を決定する典型的な摩耗メカニズムです。時計の針が動く速度は、アプリケーションや保存状態に影響されますが、デバイスの製造時にすぐに始まり、止まることはありません。

電解液の損失速度を決定する主な要因は温度であり、温度が10°C変化するごとに化学反応速度がおよそ2倍変化するアレニウスの式でよく表されています。別の言い方をすれば、電解コンデンサの温度を10°C下げると、他の条件が同じであれば、寿命は約2倍になります。

また、電解液の損失は気圧の影響を受け、気圧が低いと電解液の損失が加速されます。極端な低圧環境の場合、そのような環境用に設計されていないデバイスでは、ケースの破裂や安全弁の開放が起こり、高い周囲圧力で発生するよりもはるかに早く故障する可能性があります。

コンデンサの寿命をアレニウスの関係とメーカー提示の寿命規格に基づいて推定する場合、リップル電流による自己発熱を考慮する必要があります。単にアプリケーションの周囲温度だけではなく、コンデンサの内部温度も気をつけるべきです。

標高の高い場所または低圧で使用する場合は、寿命のディレーティングが必要ですのでメーカーの仕様書を参照して下さい。電解液の蒸気圧と外気圧の差によりコンデンサの安全弁が開くような場合は、記載寿命をゼロまでディレーティングする必要があります。一般に蒸気圧は温度とともに上昇するため、動作温度と最大許容動作標高の間でトレードオフの関係にあることに注意してください。

電解液の不具合

電解液の配合が不適切な場合、アルミコンデンサの内部部品の腐食やガス圧の上昇を早め、故障の原因となることがあります。このメカニズムにより、2000年代前半に多くの民生用電子機器に搭載されていたアルミ電解コンデンサに早期故障が多発したと言われています。
独立した試験や評価を行わない場合、この問題(多くの企業にとって非常に高価についたことが証明されています)を避けるための最善の方法は、信頼できるメーカーから直接またはメーカー公認の代理店を通じてのみ製品を購入することです。疑わしい供給元から安価な電子部品を購入することは、午前2時に治安の悪い街角で見知らぬ人からビニール袋に入った医薬品を購入するようなものです… そんなことはしないでください。

電圧のオーバーストレス

アルミ電解コンデンサにかかる電圧が所定の値を超えると、誘電体材料の薄い部分から酸化アルミニウムの誘電体層を流れる漏れ電流が急激に増加します。このリーク電流の増加により、デバイス内の局所的な発熱が増加します。漏れ電流が制限されないと、局所的な発熱の増大により誘電体層がさらに損傷し、誘電体材料のカスケード故障が起こり、コンデンサが破壊される可能性があります。

電流のオーバーストレス

アルミ電解コンデンサは、電解液の抵抗率により、比較的大きなESR値を持つものが多くあります。この抵抗に交流電流が流れるとオーミック発熱が起こり、電解液を損失したり絶縁破壊する危険性が高まります。なお、アルミ電解コンデンサの見かけ上の静電容量は、周波数に依存することに注意が必要です。従って、メーカーが提示するリップル電流の仕様は、アプリケーションに存在するリップル周波数に照らし合わせて解釈する必要があります。アルミ電解コンデンサの最大リップル電流値は120Hzと100kHzが一般的であり、デバイスの選定にあたっては、導出されたリップル電流値だけでなく、その数値が導出される試験周波数にも注意する必要があります。

経年劣化による電圧のオーバーストレス

誘電体形成プロセスの電気化学的性質から、ゼロ印加電圧で長時間保存すると、酸化アルミニウムの誘電体層が劣化します。誘電体が弱くなると、印加電圧がデバイスの定格内であっても、電圧オーバーストレス状態が発生することがあります。軽度の場合、デバイスが自己回復するまで、リーク電流の増加やデバイス温度の上昇が一時的に見られるだけかもしれません。誘電体の劣化が激しく、低インピーダンス状態で最大定格電圧が印加された場合、デバイスが短絡して見事に破裂することがあります。この問題に対処するため、電解液の処方が開発されていますが、製品によって保存安定性に大きな差があり、放電状態で1~3年保存しただけで劣化が確認されるものもあります。

長時間休止するようなアプリケーションを設計する場合は、この影響に対する安全マージンを向上させるために、デバイスの電圧定格を適度に下げることが推奨されます。 また、保存中の劣化に強いように特別に設計された製品の使用も推奨されます。
劣化したアルミ電解コンデンサを修理・改造する場合、一般的には4~8時間かけて徐々にシステム電圧を印加していく方法がとられています。その前に、仕様以下の電源電圧で長時間動作させても機器が壊れないことを確認してください。

デバイスの特長、オプション、およびターゲットとするアプリケーション

オーディオ用

オーディオ用として販売されているアルミ電解コンデンサは低ESRタイプが多く、サイズやコストを犠牲にして電気性能やパラメータの安定性を優先した設計になっている場合があります。

しかし、オーディオの世界は主観主義と、人をだますようなマーケティングが蔓延し、その影響は部品レベルまで及んでいることに留意してください。コンデンサAの方がラベルがきれいで、コンデンサBの10倍の値段なら、コンデンサAの方がいいに決まっていますよね?いえ、必ずしもそうとは限りません。仕様を確認し、どの仕様がアプリケーションにとって重要かを知ったうえで、アプリケーションの要件に最も適したデバイスを選択してください。指向性スピーカケーブルに何百ドルも何千ドルも費やすような人に売るためのものを作っているなら話は別で、その場合は、値段を気にせず最も魅力的なものを選べばいいのですが…。

車載用

車載用として販売されているデバイスは、一般的に長寿命で、少なくとも105°Cまでの広い温度範囲で動作するように設計されています。ほとんどがAEC(Automotive Electronics Council)規格に適合しています。

バイポーラ(両極性)

両極性電解コンデンサは、一般的なアルミ電解コンデンサで使用される箔の片方だけではなく、両方に酸化皮膜を形成することで、極性が変化する電圧でも破損しないように設計されたコンデンサです。このようなデバイスはESRが高いため、一般に連続的に印加される交流電圧での動作には適さないと考えられており、その点を強調して「無極性直流コンデンサ」と呼ばれることがあります。一般的には、極性が不確実で、過渡的に反転する可能性があるDCアプリケーションや、デバイスに流れる電流を過剰な自己発熱をもたらさない値に制限できる場合に限定して使用されます。

汎用

「汎用」とは、特定のアプリケーションカテゴリに対応するために特別には設計されておらず、構造上大きな特徴のないデバイスの総称です。

高温リフロー用

「高温リフロー用」デバイスは、鉛フリー/RoHS対応リフローはんだ付け工程で見られるような、製造時に高いプロセス温度が発生するアプリケーション用に設計され、認定されています。

モータ運転用

この呼称の付いたアルミ電解コンデンサは、可変速モータドライブやインバータアプリケーションなどの連続使用、高リップルアプリケーション用に設計されています。

モータ起動用

この呼称のついたアルミ電解コンデンサは、一般にACモータ起動用に設計されています。一般的には両極性で、数百ボルトに対応し、数十から数千uFの容量値を持ちます。

ポリマー(高分子材料)

この呼称は、電解質として液体ではなく、固体導電性高分子を使用したアルミ電解コンデンサに付けられます。一般に、液体電解質デバイスに比べて安定性が高く、ESR が低く、高温での寿命が長くなります。しかし、比較的低い静電容量と電圧定格に制限され、所定の静電容量と電圧定格のデバイスのコストは、同様の液体電解質タイプよりも大幅に高くなります。

ステンレススチール製ケース

この呼称のデバイスは、コンデンサの内部と外部の間の通常よりも高い圧力差に耐えることができるステンレス製の堅牢なケースで設計されています。これにより、他の多くのデバイスよりも低い大気圧での動作が可能となり、電解液の損失を軽減することができるため、より長い期待寿命が得られます。また、一般的にこれらのデバイスはかなり高価になります。





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使用していないために起こる電解コンデンサの不具合のリスクを無くしたいです。電解コンデンサが使われている機器はCRTテレビ、スーパーファミコン、メガドライブ、PS2スリムなどで(90年代初期に生産され、各種ブランドの電解コンデンサが電子機器内に実装されています)、リスク無く使用を停止しておける最大の間隔はどのくらいでしょうか。

私の住んでいるところでは、気温は32~35°Cの間で変化します。



オリジナル・ソース(English)