概要
本稿執筆時点で、Digi-Key に在庫されているコンデンサ のメーカー品番は、控えめに見積もっても37,000以上(すべてのパッケージオプションを含めると11万4千以上)あります。このようなSKU数(最小在庫管理単位)を維持するだけでも、膨大な事務処理、フォークリフトの走行距離、そして現物在庫を持つ資金が必要となります。注文に応じてそれらの製品を再梱包し、注文を受け取ってからわずか15分以内に出荷準備を整え、商品を発送センターに用意することが可能でしょうか?これは、現代の産業における小さな奇跡と言えるでしょう。
なぜ、単純な2端子部品にこれほどまでに手間をかけるのでしょうか?定格電圧と定格電流の組み合わせが要因であることは間違いありませんが、より微妙な理由は、コンデンサが実際にはそれほど単純ではないからです。私たちがコンデンサを表現するために使っている回路図記号は、便宜上省略して多くの場合、a) むしろ重要なことが不明瞭になっており、b)学術的にあまり正当に取り扱われていません。例えば、中には怒りっぽいコンデンサがいて、挑発すると家に火をつけたり毒を盛ったりします。また、無職であることに安住してしまい、突然再就職の要請があっても、すぐに癇癪を起こして止めてしまうコンデンサもいます。金星から来たコンデンサは、環境やアプリケーションの変化によって大きなパラメータの変動を示しますが、そんなことはおかまいなしの火星から来たコンデンサもあります。
このような様々な性質を良く理解し、考慮した上で設計を行うことが重要です。この進行中の作業の目的は、(願わくば)眠くならない処方で飲み込みやすいカプセルに入れたコンデンサ技術のガイドを読者に提供することです。
コンデンサは、電気エネルギーを電界の形で蓄えるデバイスです。このプロセスは、機械ばねが弾性体の変形という形でエネルギーを蓄積するのとよく似ており、両者を記述する数学は、使用する変数を除けば非常によく似ています。電気工学や機械工学の学生が、それぞれ相手の研究が難解で理解しがたいと思うのは、「v」は電気工学にとっては「電圧」ですが、機械工学にとっては「速度」、電気工学にとってはバネがむしろインダクタに見える、など、実はこの類似性が一因かもしれません。
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機械工学の皆さん、注目。
一般に、実用的なコンデンサの構造は、平行平板コンデンサを起点に説明されることが多くあります。2つの導電性電極を互いに平行に配置し、絶縁体(通常はポリマー、セラミック材料、金属酸化物、空気、場合によっては真空など)で分離したものです。
このようなコンデンサの値(本質的には機械的な考え方の「バネ定数」)は、板と板の間の距離が面積に対して小さい場合、次の式で近似されます。機械的なバネ定数とコンデンサの値は、慣習的に次元が逆数の関係で表現されることに注意する必要があります。機械的なバネ定数は単位変位…
多くの場合において、実際のコンデンサは、理想的なコンデンサといくつかの追加コンポーネントからなる、比較的単純な集中定数素子モデルを使用して表現することができます。
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ESR
等価直列抵抗(モデルではResrで表される)は、コンデンサを通して電荷を移動させることに伴う損失を表しています。電極やリード材の抵抗も要因の1つですが、誘電体材料自体で発生する損失もあり、多くの場合それが支配的になります。コンデンサの選択におけるESRの留意点は次の2つです:1)コンデンサのACレスポンスに影響を与える、2)熱的制限によりコンデンサに流すことができるAC電流の量に制限を与える。コンデンサのESRに電流が流れると、他の抵抗と同様にI2Rの損失が発生し、コンデンサの内部温度上昇を引き起こし、デバイスの寿命が短くなる原因となります。
ESRはデバイスの種類や構造によって影響を受け、また温度や試験周波数によっても程度の差はありますが影響を受けます。多くの場合、コンデンサのESRはデータシートに直接記載されておらず、Q、DF(散逸率、Dissipation Factor)…
コンデンサは、人間が作り出した他のすべてのものと同様に、いずれはパラメトリックに、あるいは壊滅的に故障します。パラメトリック故障とは、デバイスの機能は維持されているが、徐々に劣化が進み、性能仕様を満たせなくなる故障のことです。一方、壊滅的な故障は、デバイスの特性が突然劇的に変化し、自己分解、燃焼、白熱などを含む規格外の動作になることが特徴です。
絶縁破壊
絶縁破壊による故障は、誘電体材料の絶縁特性が、漏れ電流を特定のレベル以下に維持することができない電気的な状態です。絶縁破壊による故障は、デバイスの定格を超える電圧の印加や、指定された温度範囲外の動作によって生じることが多く、自己増殖型の低インピーダンス(短絡)故障になる傾向があります。このため、コンデンサの種類によっては軽度の絶縁破壊に耐えるものもありますが、多くの場合劇的な変化を起こします。絶縁破壊と熱破壊は、どちらか一方が原因であることもあればもう一方が原因であることもあり、故障の分類が難しい場合があります。
熱的故障
熱的故障とは、デバイスの過剰な温度によって発生する故障のことです。過剰な温度によって絶縁破壊現象が発生する状…
定格電圧
コンデンサの定格電圧は、そのデバイスに印加される最大電圧の目安です。定格の背景には大きな意味があります。場合によっては、最大安全使用電圧を示すことがあり、また、半導体の「絶対最大定格」のように、適切なディレーティング係数を適用すべき場合もあります。
許容差
コンデンサの許容差は、特定の試験条件、特にAC試験電圧と周波数の下でデバイスが示すと予想される公称静電容量値からの偏差の限界を示しています。引用される許容差の数値には、製造上のばらつきによる公称値からの定常的な偏差が含まれ、また、稀に動作温度範囲における温度による静電容量値の変化を含む場合があります。なお、試験条件(温度、周波数、交流電圧、試験電圧のDCバイアス値など)は、観測されるデバイスパラメータに強い影響を与えることが多いので、注意が必要です。
安全性評価
故障が人や財産の安全を脅かす可能性のある用途(通常はACライン電圧を伴う用途)に使用されるコンデンサには、規制基準に従ってX1、X2、Y1、Y2などの英数字の安全規格が指定されています。「X 」定格のデバイスは、「ライン・ツー・ライン」アプリケーションのように…
アルミコンデンサ
アルミコンデンサは、「電解コンデンサ」に分類されるデバイスの一種です。そのため、小さなパッケージで大きい静電容量値を比較的安価に実現することができます。これらの望ましい特性と引き換えに、電気的特性や寿命は比較的劣る傾向にあります。信号系には不向きですが、直流電源系では定番のアルミコンデンサです。一般的なアルミ電界コンデンサ、バイポーラ(両極性)型、および導電性高分子電極を用いた新しいタイプの3種類があります。「アルミ電解コンデンサ」ではなく「アルミコンデンサ」と表記したのは、従来の液体電解質を使用しない導電性高分子電極タイプに敬意を表しているためです。
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デバイスの構成
一般的なアルミ電解コンデンサは、2枚の高純度アルミ箔の間に、電解液で飽和させた紙などのスペーサ材を挟み込み、仕切られたものです。これらの箔には、通常、微細なエッチングが施され、有効表面積が平滑な箔の数百倍にもなっています。
一般的なアルミ電解コンデンサでは箔の一方に、酸素を含む電解液を介して箔に電圧をかけ、コンデンサの誘電体となる酸化アルミニウムの層を形成します。これにより、電…
https://forum.digikey.com/t/topic/31281
セラミックコンデンサ
セラミックコンデンサは、チタン酸バリウム(BaTiO3)を主成分とする各種セラミック誘電体材料を使用した静電デバイスです。無極性で、量と質のスペクトル(quantity-quality spectrum)の多くの範囲をカバーする特性を持っていますが、やや質に偏っているのかもしれません。セラミックコンデンサは、用途に応じて構造や誘電体特性のバリエーションが豊富で、この広い応用性とともに比較的安価な構造であることから、販売個数ベースで、現在最も普及しているコンデンサです。
デバイスの構造
初期のデバイスは、2つの金属電極の間に単層のセラミック誘電体(通常、円形)を挟んだ構造になっていました。金属電極にリード線を取り付け、その組み立て品をセラミックやエポキシなどの絶縁材料で封止しています。この構造は、ACラインや高電圧用途のデバイスではまだ見られるものの、この構造を採用したデバイスで面実装に適したものはほとんどなく、多くのアプリケーションでその魅力が限定されています。
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現在では、電極と誘電体材料を交互に薄く積層し、小さなパッケージ容…
電気二重層コンデンサ、スーパーキャパシタ:
デバイスの構造と特徴
電気二重層コンデンサ(EDLC)やスーパーキャパシタは、体積あたりの静電容量が極めて大きく、通常数ボルト以下の低い定格電圧を特徴とする電解コンデンサ類似のデバイスの一群です。これらのデバイスの構造や動作原理はそれぞれ異なり、現在も研究開発が進められていますが、体積あたりの表面積が非常に大きい電極材料(活性炭、エアロゲルなど)を使用し、従来の固体誘電体を使用しないことが共通点として挙げられます。EDLC、スーパーキャパシタ、およびその他の名称で呼ばれる類似デバイスは、他のタイプのコンデンサに見られるような従来のセラミック、ポリマー、金属酸化物の誘電体の代わりに、電荷分離距離を極めて小さくする様々な電気化学的、静電的、電荷移動効果に依存しています。コンデンサの「プレート 」間の距離は、一般的にナノメートルの単位で表されます。
EDLCやスーパーキャパシタなど異なる名前のデバイスは、実用上、従来のコンデンサと二次電池(充電式)の中間的な位置づけにあると見なすことができます。従来のコンデンサよりも高いが化学電池よりも低い…
デバイスの構造
フィルムコンデンサは、紙や各種ポリマー(高分子)などの誘電体材料を薄いシート状すなわち「フィルム」状にし、電極材料を交互に挟み込んでコンデンサを形成した静電容量タイプのデバイスです。「フィルムコンデンサ」とは、このようなプロセスで作られたデバイスの総称で、その「フィルム」は誘電体材料の本体を表します。「メタルフィルム」や「メタライズドフィルム」のように「フィルム」の修飾語として「メタル」が使われる場合、それはフィルムコンデンサのサブタイプのうち、具体的には電極が支持基板上に非常に薄い(10数ナノメートル)層で構築されていて、通常は真空蒸着プロセスによって構築されているものを示しています。また、基板はコンデンサの誘電体材料として使用されることが多いのですが、必ずしもそうとは限りません。一方、「箔(ホイル)」電極コンデンサは、家庭用のアルミホイルに類似した電極材料で、機械的に自立できる程度の厚さ(マイクロメートルのオーダー)です。
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メタルフィルム電極を用いたフィルムコンデンサは、自己修復性という利点があります。誘電…
デバイスの構造
マイカは天然に産出される鉱物で、平らな薄膜に容易に分割できる特徴があり、コンデンサ用には「白雲母」と呼ばれる種類のマイカが好んで使用されます。誘電体としてのマイカは、時間や印加電圧に対する優れた安定性、低い温度係数、高い温度耐性、非常に優れた絶縁耐力、広い周波数範囲での低損失特性を持っています。優れた誘電材料であることを除けば、マイカ(天然に存在する鉱物)はPTFE(合成フルオロポリマー)とほとんど共通点がありませんが、一部の静電容量値にマイカの代わりにPTFEを使用するコンデンサ製品シリーズが少なくとも1つ市場に出回っているため、両方の材料が見出しに記載されています…
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マイカコンデンサは用途によって構造が異なりますが、セラミックタイプやフィルムタイプと類似している部分があります。マイカは、原料の塊から切り出したモノリシックシートでも、小さなフレークをたくさん集めた「紙」でも、電極・端子取り付け層(通常は銀)を両面に蒸着し、(単層セラミックデバイスのようなものを)1つひとつMLCCのように重ねて、あるいはフィルムコンデンサのように巻いて使用します。メ…
デバイスの構造と特徴
タンタルコンデンサは、主に、比較的安定したパラメータを備えたコンパクトで耐久性のあるデバイスが必要とされ、静電容量と電圧定格がそう大きくなくても十分な場合に使用される電解デバイスです。従来、タンタルはアルミ電解に比べて、体積あたりの容量、温度に対するパラメータ安定性、寿命の点で優れており、一般にタンタルは長期間の放電状態保管によるドライアップや誘電体劣化の問題がありません。しかし、タンタルは一般に高価で、使用できる容量や電圧の範囲が狭く、希少な材料で作られているため供給不足になりやすく、また、いくつかのサブタイプは大きな発熱により不具合となる傾向があるため、設計に特別な注意を要する場合があります。
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下図は、執筆時点でDigi-Keyで販売されているさまざまな種類のタンタルコンデンサの電圧と電流の定格の組み合わせを示したものです。タンタルコンデンサの陽極は、いずれのタイプも同様の構造をしています;高純度の金属タンタルの微粉末を成形し、高温で焼結して個々の金属粉末を融かし、体積の割に内部表面積が非常に大きい「スラグ」と呼ばれる多孔質の塊にしています…
デバイスの構造と特徴
酸化ニオブコンデンサは、タンタル/二酸化マンガン(Ta/MnO2)デバイスと同様の構造で、陽極材料としてタンタル金属の代わりに酸化ニオブ(NbO)を焼結したものを使用しています。Ta/MnO2コンデンサの代替品として主にAVXが生産しており、故障時に爆発炎上する心配がなく、原材料供給ロジスティックスの改善も期待できる酸化ニオブコンデンサは、様々なアプリケーションでタンタルポリマーデバイスと競合しています。
酸化ニオブコンデンサの構造は、Ta/MnO2デバイスの構造と似ています。陽極材料は、多孔質でスポンジ状の一酸化ニオブ(NbO)の塊の上に、五酸化ニオブ(Nb2O5)の誘電体層が設けられ、その周りに二酸化マンガンの対極が形成されており、一般のTa/MnO2デバイスと同様の構成になっています。(酸化物のNbOではなく)ニオブ金属と高分子電解質技術に基づくコンデンサも開発されていますが、本執筆時点では大量に生産されていません。
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なぜニオブ?
2000年代に入り、タンタルの需要増に伴う供給不足で、一時期タンタルコンデンサが希少でコスト高になったこと…
デバイスの構造と特徴
シリコンコンデンサと薄膜コンデンサは、半導体産業から導入したツール、方法、材料で製造された比較的新しいデバイスです。これらの技術により、構造および材料を正確に制御することで、優れたパラメータ安定性、最小のESRとESL、広い使用温度範囲、そして最も直接的に競合するクラスIセラミックタイプのデバイスと比較して体積あたり同等以上の容量を持つ、ほぼ理想的なコンデンサの製造が可能になります。その主な欠点としてはコストが高く、関連する問題として、使用できる静電容量値の範囲が比較的限られているということがあります。
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通常、シリコン酸化物/窒化物誘電体をベースとした「薄膜」コンデンサと「シリコン」コンデンサの区別はマーケティング上の譲歩のようなものですが、目的とする用途によって両者の間に大きな違いがあります。RFチューニングおよびマッチングアプリケーションを対象とするデバイスは、パラメータの安定性と一貫性を最適化した低容量の単層デバイスが多く、標準のJEDECパッケージサイズで提供されているのが一般的です。一方、電源デカップリングや広帯域DCブロッキングな…
デバイスの構造と特徴
トリマと可変コンデンサ(バリコン)は、ある範囲内で静電容量を変化させるデバイスで、この2つの用語の違いは、ほとんどが設計意図によるものです。「トリマ」コンデンサは、通常、耐用年数の間に数回しか調整しないことを想定していますが、「可変」コンデンサは、定常的に調整することを想定しています。コンデンサにはさまざまなタイプがありますが、例外なく静電容量方式で、電極間の有効表面積、電極間の距離、あるいはその両方を変えることで調整できるようになっています。
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一般的な設計としては、共通の軸に2つの小さなホイールを乗せ、それぞれに半円形(またはそれに近い形)の電極材料をメッキしたようなものです。2つの「ホイール」の相対的な回転角を変えることで、2つの「ホイール」の間の実効的な静電容量を変化させることができます。 さらに、各「ホイール」の電極の形状を変えることで、用途に応じて回転調整角度と静電容量の関係を変化させることができます。この方法のバリエーションとして、デバイスの変化範囲内でより高い調整分解能を得るために、ウォームギアなどの機械的な装置を利用して…
オリジナル・ソース(English)