多くの場合において、実際のコンデンサは、理想的なコンデンサといくつかの追加コンポーネントからなる、比較的単純な集中定数素子モデルを使用して表現することができます。
ESR
等価直列抵抗(モデルではResrで表される)は、コンデンサを通して電荷を移動させることに伴う損失を表しています。電極やリード材の抵抗も要因の1つですが、誘電体材料自体で発生する損失もあり、多くの場合それが支配的になります。コンデンサの選択におけるESRの留意点は次の2つです:1)コンデンサのACレスポンスに影響を与える、2)熱的制限によりコンデンサに流すことができるAC電流の量に制限を与える。コンデンサのESRに電流が流れると、他の抵抗と同様にI2Rの損失が発生し、コンデンサの内部温度上昇を引き起こし、デバイスの寿命が短くなる原因となります。
ESRはデバイスの種類や構造によって影響を受け、また温度や試験周波数によっても程度の差はありますが影響を受けます。多くの場合、コンデンサのESRはデータシートに直接記載されておらず、Q、DF(散逸率、Dissipation Factor)、Tanδなどのパラメータで示されています。いずれもコンデンサのESRを容量性リアクタンス(XC)で割ったもので、表現が異なります。Tanδと散逸係数はESR/XCで計算され、基本的に同じ数値ですが、散逸率は単純な無次元係数ではなく、通常パーセントで表現されることに注意が必要です。Qは単純にTanδの逆数、つまりXC/ESRのことです。
ESL
等価直列インダクタンス(ESL)は、デバイスリードのパーシャル自己インダクタンスや、回路内のデバイスリードの形状によって形成されるコイルなどから発生します。集中定数モデル近似では、ESLは、デバイスの公称容量値を表す理想的なコンデンサ(Cnom)と直列の理想的なインダクタ(Lesl)で表されます。ESLのコンデンサの選択における留意点は、主にACレスポンスへの影響です。集中定数モデルが示すように、現実のコンデンサは直列接続されたLCR回路のような挙動を示します。印加される交流電圧の周波数が高くなるにつれて、ESLの誘導性リアクタンスはデバイスの容量性リアクタンスと等しくなる時点まで増加し、コンデンサは抵抗として振る舞います。これ以上の周波数では、コンデンサは実質的にインダクタとなります。
リーク電流
リーク電流は、集中定数モデルでは理想的なコンデンサと並列に接続された、比較的大きな値の抵抗としてモデル化されます。これは、コンデンサに使われている誘電体材料が完全な絶縁体ではなく、一定の電圧をかけるとある程度の直流電流が流れることに起因しています。コンデンサの選択におけるリーク電流の重要性はアプリケーションによって異なります。マイクロパワーアプリケーションでは消費電力の問題、精密アナログアプリケーションではエラー源、パワーアプリケーションでは信頼性と熱管理の問題となります。
極性
電解コンデンサは、極性という理想的でない特性がありますが、それは電気化学的な作用によって形成された誘電体に依存しているためです。このようなコンデンサに極性を間違えて電圧をかけると、コンデンサの誘電体層を形成するための電気化学的プロセスが逆転してしまいます。このように誘電体層が電気化学的に破壊される過程で、規定以上のリーク電流が発生し、薄くなった誘電体層が印加電圧のストレスで破壊され始めると、さらに悪化します。
リーク電流は内部発熱を引き起こし、温度上昇によってリーク電流が増加するため、(誤って)印加された電圧のソースインピーダンスが低い場合、カスケード効果が発生し、かなり壊滅的な故障に至る可能性があります。
無極性電解コンデンサ(事実上、背中合わせに配置された2つの有極性コンデンサ)は、印加電圧の極性が不明な場合や、時々反転するような場合に使用することができますが、その使用には注意が必要です。
誘電体吸収
誘電体吸収とは、「ソーケイジ(soakage)」とも呼ばれ、コンデンサの誘電体内に蓄積されたエネルギーが、デバイスの公称静電容量やESRで予測されるよりも長い時間スケールで吸収/放出されることをいいます。集中定数素子モデルでは、抵抗とコンデンサ(または複数の素子)の直列接続と、デバイスの公称静電容量との並列接続として表すことができます。
つまり、直流電位に一定時間保持した後、短時間放電させたコンデンサは、ある程度自己充電されるように見えるということです。別の例では、直流電位にしばらくの間保持されたコンデンサの抵抗器を介した放電は、放電曲線の急変部分においては、通常の指数方程式でうまくモデル化されます。しかし、曲線の「ロングテール」部分では、コンデンサは通常のR-C放電式で予測される電流よりも大きな電流を供給することになります。
この現象は、精密なアナログ回路で問題となりますが、特に力率改善やDCバスフィルタリングなどの高電圧/高容量デバイスでは、致命的な安全上の問題となる可能性があります。このような用途に使われるコンデンサは、現在も昔も誘電体吸収によるエネルギー蓄積を起こしやすいものが多く、以前印加した電圧の5分の1程度まで「自己充電」できるものもあります。大型の機器では、このプロセスによって端子に生じるエネルギーと電圧は、直接的に傷害(火傷や心停止などの可能性がある)を引き起こすか、電気ショックに対する不随意反応の結果として間接的に傷害を引き起こすのに十分である可能性があります。
Dependence of ____ on _____(各種特性の環境依存性)
最初の空欄には、静電容量、ESR、ESL、リーク、寿命など、関心のあるデバイスパラメータを挿入してください。2番目の空欄には、温度、電圧、周波数、時間など、アプリケーションのパラメータを入力してください。両者の間には関係性があり、デバイスの種類や構造によって異なります。中にはそれほど強い関係性はなく、通常は無視できるくらいのものですが、覚醒剤を服用している体重800ポンドのゴリラよりも強力で無視できないものもあります。従って、デバイスを選択する際には、このような関係性の存在と関連性を考慮する必要があります。
経時変化
コンデンサの種類によっては、対象となる電気信号よりもはるかに長い時間スケールで特性が大きく変化するものがあり、まるで揚げたてのKrispy Kreme®ドーナツが油揚器を出てから時間が経つにつれて性質が変化するようなものです。リフロー炉から出したばかりの時は問題なくテストに合格したデバイスも、例えば1週間後には仕様に合わなくなるなど、設計、製造、あるいは校正の観点で問題が生じる可能性があります。
マイクロフォニックス/圧電効果
平行な2枚のプレート間の静電容量の式が、電極の間隔や誘電体の厚さの関数として強く作用することを思い出してください。すなわち、機械的な力を加えるなどしてプレート間の距離を変化させると、静電容量も変化します。静電容量が変化しても蓄積される電荷量が一定であれば、コンデンサの端子間電圧は静電容量の変化に反比例して変化します。
その結果、コンデンサは機械的な領域と電気的な領域の間の変換メカニズムを提供し、一般に、公演ステージや携帯電子機器などで使用されるオーディオマイクロフォンに似ていることからマイクロフォニック効果と呼ばれています。この効果は、このような用途には非常に有効ですが、機械的な信号が電気回路に意図しない形で結合し、ノイズ源となったり、最悪の場合、意図しないフィードバック経路となったりすることもあり、問題になります。
また、その伝達メカニズムは双方向性です。コンデンサの端子に電圧をかけると、電極に機械的な力が加わり、それが周囲の環境に機械的に結合して、例えば、可聴域のノイズとなります。この現象は、静電気力により全てのコンデンサに存在しますが(スタティッククリング現象、静電気付着の原因)、圧電誘電体材料を用いたデバイスで最も顕著に見られます。このような材料は、機械的なひずみによって電荷が発生し、逆に電界をかけると機械的に変形します。圧電効果は、静電気力よりも1ボルトあたりの機械的な力が大きいため、圧電材料を用いたコンデンサでは、電気と機械の間の結合がはるかに強くなります。