ケーブルバンドルに最適なケーブルタイの選び方・付け方

著者:Art Pini
Digi-Keyの北米担当編集者 の提供
2022年10月7日

電気・電子部品/サブシステムがますます使われるようになってきているものの、ケーブルの適切な固定はシステム設計において見過ごされがちな重要な要素です。デバイス内であれ、システム間であれ、ケーブルを安全かつ効率的に配線することは、特に高振動で過酷な環境での用途における設計の成功と長寿命化にとって非常に重要です。

設計者にとっての課題は過剰設計にならず、また、ケーブルの絶縁体や内部構造の堅牢性を損なわずに、用途で求められる引張強度、寿命、柔軟性、化学物質、振動、紫外線(UV)耐性を満たすケーブルタイを見つけることです。

間違ったケーブルタイを買ってしまうと、それよりもさらに多くの費用がかかってしまう可能性があることを念頭においた上で、現在利用可能なさまざまなタイプと材料のケーブルタイを分析・識別する必要があります。

このような懸念を軽減するために、設計者はさまざまなケーブルタイの微妙な違いを理解し、用途の要件に合うケーブルタイを選択する必要があります。本稿では、Panduit Corporationの実例を基に、ケーブルタイの考慮すべき点、各タイプのメリット、効果的な適用方法について説明します。

ケーブルタイの仕様

ケーブルタイは、しばしば結束バンドまたはタイラップと呼ばれ、さまざまな長さ、幅、材料、および色のものが市販されています。タイでケーブルバンドルを結ぶときは、タイのストラップ(テープ部分)でケーブルバンドルを巻き、その端を固定(ロック)用機構に完全に通し、ストラップの固定用のくぼみがかみ合うまでしっかりと締めます(図1)。

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1:典型的なケーブルタイ(ケーブルバンドルを固定するための主な部位を示したもの)
(画像提供:Panduit Corporation

ケーブルタイは、固定用バーブを固定用機構の一部として成形したワンピースとして製造することもできます。これに対し、高品質のタイはツーピース構造を使用しています。ツーピース構造の設計では、耐腐食性のステンレス製バーブをロッキングヘッドに埋め込むことで、比較的滑らかなタイの表面をグリップできます。バーブは固定用のくぼみに嵌まる必要がないため、確実な固定が無段階に調節可能となるように設計されています。

最大の直径仕様は、タイで縛ることのできるケーブルバンドルの最大直径を示します。締めすぎてケーブルの絶縁体が切れてしまったり、摩耗したりしない程度の強さでバンドルを固定する必要があります。ルースエンドを固定用機構に噛み合わせるため、使用するタイの長さは少し余裕を持たせてください。

ラップの強度は、ポンドで測定されるループ引張強度(LTS)で定義されます。LTSは、ルースエンドを固定用機構に噛み合わせた後、加えることができる最大限の力のことです。一般的なタイでは、18ポンド~250ポンドです。

LTSは、タイの寸法や使用材料によって異なります。どのような材料を選択すべきかは、ケーブルタイを使用する環境的な動作条件に大きく影響されます。考慮すべき点は以下の通りです。

  • 屋内用か、屋外用か?
  • 想定される温度範囲は?
  • 水、油、化学物質、または振動にさらされるか?

たとえば、PanduitのPAN-TY@PLTシリーズ ケーブルタイの1つであるPLT1.5M-M10タイを例に考えましょう。このケーブルタイのファミリは、多くの色、材料、および構造タイプを擁する、同社の最大かつ最も包括的な製品です。PLT1.M-M10は、公称長さが5.6インチ、公称最大直径が1.25インチ、引張強度が18ポンドです。タイストラップは、断面積によってサブミニチュア、ミニチュア、それらの中間サイズの等級で分類されます。PLT1.M-M10はミニチュアタイで、ワンピース構造で設計されています。ナイロン6.6で作られており、屋内使用を想定しています。

前述したように、もう1つの一般的なケーブルタイの設計はツーピースで、ワンピース設計の成形ナイロンバーブの代わりにステンレス製バーブを使用しています(図2)。

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2:成形した固定用バーブを用いたワンピース構造(a)と、成形後に挿入する
ステンレス製バーブを用いたツーピース構造(b)を示しています。
(画像提供:Panduit Corporation

図2左のアクアブルーのケーブルタイはPanduitのPLT3S-C76で、PAN-TY@PLTシリーズのバリエーションの1つです。エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)製で、耐薬品性、難燃性、耐放射線性が求められる用途を想定しています。図2右のケーブルタイはPanduitのBT4S-M0です。バーブが別個に製造されるDOME-TOP BARB-TY BTシリーズに属します。さらに、このシリーズのタイは、ケーブル絶縁体の摩耗を最小限に抑えるために、ストラップのエッジとヘッドを丸めてあるのが特長です。ナイロンにカーボンブラックを添加して実現した黒色により、紫外線に対する耐性が向上し、屋外用途で一般的によく使用されています。

ケーブルタイは、想定される用途の環境に応じたさまざまな材料で製造されます。基本的なタイはナイロン6.6で成形されています。ナイロン6.6は、高い機械的強度、剛性、良好な耐熱性、適度な耐薬品性を有しており、中には耐候性、熱安定性、難燃性を持つバリアントもあります。

他にも、特定の耐性を実現するために、さまざまな材料が使用されています。たとえば、DT8EH-Q0は、高い強度に加え、衝撃、薬品、紫外線、天候への耐性を考慮した設計になっています。デルリン(Delrin®)などと同じ材料ファミリであるアセタール(ポリオキシメチレン、POM)を使用しています。長さは2.25フィート(68.6cm)、引張強度は250ポンド(113kg)です。これらのケーブルタイは、電力および通信業界の過酷な屋外用途向けに設計されています。

温度範囲

ケーブルタイが耐えられる温度範囲の主な決定要因は、その構造に使用されている材料です。ナイロン6.6の定格は、-76°F(-60℃)から+185°F(85℃)です。熱安定化ナイロン6.6の温度範囲の上限は212°F(100℃)に向上します。PEEKは最も高い温度耐性を持ち、上限温度は500°F(260℃)です。

特別な機能

Panduit Contour-Tyシリーズの1つであるCBR1M-Mは、ケーブル絶縁体やケーブルジャケットのダメージを防ぐ独自設計により、鋭くとがった部分の露出を抑え、引っかかりを少なくするためにパラレルエントリ方式の薄型ヘッドを採用し、ストラップの外側に固定用のくぼみを設けています(図3)。

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3Contour-Tyシリーズは、ストラップ部分に対して直角に設定された固定用機構
により平行な挿入を行うことができ、また、外側に固定用のくぼみを設ける
ことで絶縁体の破損を防止しています。(画像提供:Panduit Corporation

HV9150-C0インラインケーブルタイは、耐候性のあるナイロン6.6を使用しています。機構的には、永続的固定とフレキシブル固定の両方を可能にするツー・ウェッジ設計の固定用機構を採用しています(図4)。

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4HV9150-C0はインライン設計により固定用機構への平行な挿入を可能にし、
ケーブルバンドルの低背化を実現しています。(画像提供:Panduit Corporation

また、ヘッド部はリリースが可能になっているため、最終的に固定する前に一時的に束ねることも可能です。ストラップの両側にくぼみを成形することで、固定強度を高めるとともに、柔軟性を高めています。長さ1.721フィート(52.46cm)、バンドルの直径5.92インチ(15.04cm)、引張強度160ポンド(73kg)です。

ケーブルタイSST1.51-Mは、長さ5.3インチ(13.5cm)、引張強度40ポンド(18kg)です(図5)。普通に束ねる際、また、パネルに通して使用する際にも対応できるよう、ヘッド高を小さく設計しています。Panduitによると、ツーピース設計により業界最小のねじり力を実現し、また、ワンピース設計のものより14%軽量化されています。さらに、タイは最終的に引っ張って固定するまでは取り外しが可能です。

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5SST1.51-Mのツーピース設計は、浮動するカラーと歯付きウェッジを使用して
    ストラップを固定します。最終的に固定する前であれば、カラーを後ろに引いて
ウェッジをストラップから放れるように曲げることで、タイを取り外すことが
できます。(画像提供:Panduit Corporation

伸縮性の低いケーブルタイが多い中、Panduit ERT2M-C20の本体は柔軟になるよう設計されています(図6)。

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6:エラストマ製ケーブルタイERT2M-C20は、柔軟なストラッ
プを備えており、締め過ぎを防ぐことができます。
(画像提供:Panduit Corporation

このタイプのタイは、ケーブルバンドルや光ケーブルバンドルに合うように設計されており、締め過ぎを防ぐことができます。また、摩擦係数が高く、ケーブルをグリップすることで横方向へのズレを抑えます。このタイは取り外し可能で、長さ8.5インチ(21.6cm)、引張強度18ポンド(8kg)です。また、他のシリーズと同様に難燃性グレードはUL94V-0で(通信機器の厳しい可燃性要件に適合)、ハロゲンフリーで毒性もありません。

SG100M-M0は手荒に扱われることが多いメンテナンス、修理、オーバーホールなどの環境や、建設業界などを想定して設計されています(図7)。

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7SG100M-M0は、低いヘッドの高さ、広がったネック、
ねじ込みやすいテーパ付きの先端が特長です。
(画像提供:Panduit Corporation

耐候性の高いナイロン6.6を使用しており、強い紫外線にさらされる用途に最適です。長さ4.2インチ(10.7cm)、定格引張強度18ポンド(8kg)で、薄く幅広いストラップは、ケーブルバンドルをしっかりグリップし、ケーブルの横方向へのズレを抑えるために柔軟性を重視して設計されています。

まとめ

ケーブルタイは当たり前のように使われていますが、設計者は、用途に応じた最適なタイを使用するために、多くの選択肢を慎重に検討する必要があります。これまで見てきたように、ケーブルタイは数インチ~数フィート(数センチメートル~数メートル)までの長さが用意されており、幅広い環境に対応し、さまざまな用途のニーズに応える多くの特長を備えています。

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