安価な3相監視リレーを使用して高価な機械を保護する方法

著者:Art Pini
Digi-Keyの北米担当編集者 の提供
2022年6月21日

暖房、換気および空調(HVAC)システム、水処理、マテリアルハンドリング、工作機械、船舶、航空などの用途で見られる商用および産業用機械の多くは、3相モータで駆動されています。信頼性の高いこれらのデバイスは、さまざまな故障状態によって損傷を受ける可能性があり、迅速に対処しなければ、故障や最低でも動作寿命の短縮につながり、重大なダウンタイムや修理費用が発生する可能性があります。

位相監視リレーを使用すれば、これらの故障を検出し、オペレータに通知し、永久的な損傷が発生する前に機械を停止させることができます。これらのリレーが検出できるのは、3相がすべて存在し、正しい順序を保ち、位相電圧が正しい範囲にあることです。エラーが発生した場合は、リレーが接点を開くことにより、アラーム状態を開始し機械の電源を停止することができます。

電圧、3相構成、エラーのさまざまな状態に対応するために、多種多様な位相検出リレーが用意されています。この記事では、モータの潜在的な故障モードと位相検出リレーの動作について簡単に説明します。その後Carlo Gavazziの実例を用いて、3相監視リレーの選定と応用について考察します。

3相モータの故障モード

さまざまな産業でよく見られる故障の中には、3相電源に直接関係するものと、3相電源がモータに及ぼす影響に関するものがあります。3相のうち1相が失われたり、位相電圧のバランスが崩れたりすると、残りの相からモータへの電流が通常より大きくなり、モータの機械的動力の損失や、過大な機械的振動につながることがあります。同様に、不足電圧や過電圧は、同じ負荷を駆動するためにモータの電流を強制的に増加させるため、モータの寿命を縮める可能性があります。

もう1つの可能性としては、相順が不適切なため、モータが逆回転してしまうことがあります。これは、モータの負荷側に破壊的な結果をもたらす可能性があります。

位相監視リレーの機能

位相監視リレーは、3相電源の状態に関するさまざまな機能を備えています。位相監視リレーは、監視する3相ラインから電力を供給されます。いずれのリレーも、相順と位相電圧の損失を監視します。リレーは、すべての位相が揃い、電源シーケンスが正しいときに通電します。いずれかの位相が失われた場合、または相順が正しくない場合は、リレーが非通電になります。一部の位相監視リレーは、3相すべての電圧レベルも監視します。電圧判定には真の二乗平均平方根(TRMS)測定を使用し、振幅があらかじめ設定した閾値を下回るとリレーが停止します。一部のデバイスは同じ振幅検出機能を提供しますが、ユーザーが調節可能なリミット設定を備えています。さまざまなリレーモデルが位相の非対称性と許容差を監視します。すべてのリレーには、スプリアスによる誤作動を防ぐため、電圧レベルや非対称性の問題で作動する前に遅延が設けられています。一部のモデルでは、遅延のプログラムが可能です。

位相監視リレーのオプション

3線構成向けの位相感知リレーの例として、Carlo Gavazzi Inc.のDPA01CM44が挙げられます(図1)。このシリーズは3相電源で、230、400、600、690VACの各電圧で動作するモデルが用意されています。これらのリレーは、DINレールへの取り付けが想定されており、プラグインタイプも用意されています。リレーの出力構成は、1つの単極双投(SPDT)または2つのSPDT接点のいずれかです。

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1DPA01CM44は、SPDTリレー接点出力を備えた
208480VAC 3相ライン用のDINレールマウント型位相
監視リレーです。(画像提供:Carlo Gavazzi Inc.

通常の電圧条件下では、リレーが作動すると、リレー出力のノーマリオープン(NO)接点が閉じ、ノーマリクローズ(NC)出力接点は開きます。リレー動作は、100ミリ秒以内に発生します。フロントパネルのステータスLEDは、電源のオンとリレーの作動を表示します。

DPA01位相監視リレーは、任意の3相ラインを監視する目的で設置できます(図2の例1)。または、3相モータと関連付けることも可能です(例2)。

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2DPA01シリーズ3相監視リレーのアプリケーション例。
1(左)では、3相ラインを監視する目的で接続されていま
す。例2(右)では、3相モータの監視に使用されています。
(画像提供:Carlo Gavazzi Inc.

いずれのアプリケーションでもエラー状態が発生すると、適切な方法でリレーに接続されたコンタクタが後続の3相回路を開き、監視リレーは電源に接続されたままとなります。モータのない3相ラインを監視するために接続した場合は、欠落した入力のレベルが大幅に低下するため、欠相を検知することに問題はありません。モニタをモータに接続すると、モータの動作は内部誘導結合によって欠相を再生する傾向があります。このリレーは、振幅が公称3相電圧の85%未満であれば欠相を検出するように設定されています。したがって、モータの回生が公称ライン電圧の85%未満であることを確認することが重要です。

過電圧や不足電圧の閾値をカスタムで設定する必要があるアプリケーションでは、Carlo Gavazziの DPB01CM48多機能位相監視リレーを使用することができます。このリレーは、過電圧や不足電圧の状態に加え、欠相や不適切な相順も検出します。過電圧と不足電圧の閾値レベルは、フロントパネルのスイッチでユーザーが調整可能です(図3)。

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3DPB01CM48多機能位相監視リレーは、フロントパ
ネル制御を使用し、位相損失と相順および、選択可能な
過電圧と不足電圧の閾値を監視します。過電圧と不足電
圧に対して作動するための動作遅延は、過渡的な起動を
最小限にするためにユーザーが調節可能です。              
(画像提供:Carlo Gavazzi Inc.

また、このリレーはDINレールマウント型で、デルタトポロジとスター/ワイ3相トポロジの両方に対応します。このリレーは、ユーザーがプログラム可能な電圧範囲を備えており、380、400、415、480VACのライン間電圧および、220、230、240、277VACのライン-ニュートラル間電圧を選択できます。回路トポロジと電圧範囲は、内部のDIPスイッチを使用して設定します。DPB01ファミリの別モデルでは、より低い電圧範囲に対応しています。

リレーのフロントパネルには、3つの制御ノブがあります。上段のノブは低電圧の閾値を公称電圧の-2~-22%の間で設定し、中段のノブは高電圧の閾値を公称電圧の2~22%の間で設定し、下段のノブは動作遅延を10ミリ秒~30秒の間で設定するために使用します。この遅延は、短時間の電圧変動によってリレーが誤ってトリップされることを防止するために使用します。

リレーのフロントパネルには、その状態を示す3つのLEDがあります。緑色のLEDは、電源が入っていることを示します。黄色のLEDは、リレーが通電していることを示します。アラームイベントが発生した場合は、黄色のLEDが消灯し、タイムアウト後にリレーが非通電になり、赤色のLEDが点滅します。エラーが過電圧または不足電圧の状態だった場合は、赤色LEDが2Hzの周波数で点滅し、タイムアウト後にリレーが非通電になります。欠相や不正確な相順が発生した場合は、200ミリ秒以内にリレーが非通電となり、エラー状態の間、赤色LEDが5Hzの周波数で点滅します。

DPC01DM69位相監視リレーは、Carlo Gavazziの最も充実した機能セットを備えています(図4)。このDINレールマウントリレーは、相順と位相損失に加え、不足電圧と過電圧、位相対称性、および許容差も監視します。

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4DPC01DM69DINレールマウント型位相監視リレーで、リレー
の状態(黄色)、アラームの状態(赤色)、電源の状態(緑色)を
示すLEDを左端に搭載しています。制御部では、許容差/非対称性
または過電圧/不足電圧の閾値、およびリレーの遅延を設定します。
(画像提供:Carlo Gavazzi Inc.

DPC01DM69 は、動作電圧範囲と3相トポロジの選択において、DPB01CM48と同様に動作します。また、電源投入時の遅延(1秒または6秒)、出力構成(SPDT接点2組または双極双投(DPDT)接点1組)および、過電圧/不足電圧または非対称性/許容差の監視機能をDIPスイッチで選択できるようになっています。

DPC01CM69は、アラームのタイプによって3つの異なるモードで動作します。位相損失または不正確な相順が発生すると、出力リレー1および2が非通電になります。過電圧または非対称性のイベントが発生すると、事前に設定された遅延1の終了時に出力1リレーが非通電になり、不足電圧または許容範囲外のイベントが発生すると、事前に設定された遅延2の終了時に出力2リレーが非通電になります。この2系統の出力配置により、異なるアラームイベントに対して柔軟に対応できます。

非対称性は電源品質の指標であり、ライン電圧の最大偏差の絶対値を3相システムの公称電圧で割った値として定義されます。許容差は電源品質のもう1つの指標で、ライン電圧の公称電圧からの最大偏差の絶対値を3相システムの公称電圧で割った値として定義されます(図5)。

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53相電源の非対称性と許容差の定義。
(画像提供:Carlo Gavazzi Inc.

一般的に、3相モータの過熱を避けるには、3相ラインの不均衡が2%未満でなくてはなりません。DPC01CM69の非対称性と許容差のスケールは、2~22%の範囲をカバーすることに注意してください。

まとめ

幅広い産業において、3相ACモニタリングは、モータの損傷によるコストの高いダウンタイムを回避するために重要です。これを簡単かつ効果的に実現するために、Carlo Gavazziは、最も高度な測定技術を駆使して設計され、しかもセットアップが簡単な3相監視リレーを幅広く提供しています。それらのリレーは、位相損失と相順を監視する単純なデバイスから、過電圧と不足電圧の状態、さらには位相の非対称性と許容差も感知する複雑なモニタまで多岐にわたります。これらの位相監視リレーは、3相電源の問題で高価な機械設備に損害を与えないことを保証します。

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