トランスと電力送電網、それは見た目以上のもの

トランス(「トランスフォーマー」シリーズに登場するオートボットやディセプティコンの類ではありません)は、電力送電網の中心的な存在です。トランスは、電力を効率的、且つ比較的安全に長距離送電するために使用されています。トランスの仕組みを理解するには、まず電力とは何かを知らなければなりません。電力とは、電圧(ボルト)と電流(アンペア)の積です。簡単な例を挙げると、100ボルトで2アンペアの場合、電力は200ワットです。電圧を400ボルトに上げ、アンペアを0.5アンペアに下げても、電力は200ワットになります。トランスは2つもしくはそれ以上のインダクタで構成されています。インダクタとは、交流電流が流れた時に交番磁束を発生するコイル(巻き線)のことです。1次側のインダクタに発生した交番磁束は、2次側のインダクタに電磁誘導を起こします。この2次側を家庭内の電気機器に接続すると、トランス内で1次側と2次側との間の電磁誘導により、家庭内の電気機器に電力が供給されます。

トランスにおいては、電圧と電流とは逆比例の関係にあります。一方が増加すれば、もう一方は減少します。電力送電網は、長距離にわたって高電圧を伝送するためにトランスを使用しています。しかし、なぜ大電流を送らないのでしょうか?これは送電効率に起因します。電線を通して電流を送ると、エネルギーの一部が熱として失われます。これはいわゆる電力損失です。大電流を送電することは可能ですが、そのためには現在使用している電線よりも太くて、絶縁された電線が必要になります。そこでトランスが用いられます。先に述べたとおり、トランスでは電圧と電流は逆比例の関係にありますので、トランスを使えば、大電流の送電よりも損失の少ない高電圧の送電を行うことができます。トランスで昇圧された電圧で送電され、家の近くの電柱のトランスで降圧されます。

例えば、200ボルト、10アンペアからなる2kWを送電するとします。これを単純な数字で確認するために理想的な送電、つまり線路の電力損失がないと仮定しましょう。まず送電側では、20:1の昇圧トランスを使って200ボルトから4000ボルトに上げると、電流が0.5アンペアに下がります。受電側近くでは、1:20の降圧トランスを使って4000ボルトから200ボルトに下げると、電流は10アンペアまで上がります。それでも、テレビと冷蔵庫に必要な2kWの電力が得られるので、土曜日の朝のアニメを見ながら美味しいシリアルを食べることができます。



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