APDahlen Applications Engineer
電子回路保護装置(ECP:Electronic Circuit Protector)は、ソリッドステートの電流遮断装置です。従来の電磁コンタクト機構の代わりに、パワー半導体と電子制御回路を使用して、応答性の高い電流制限および電流遮断機能を提供します。図1に示すE-T-AのESX10-TB-114-DC24V-0.5A-Eは、その代表的な例です。この高機能デバイスは、定格電流0.5Aで、リモートオン/オフ制御と、ステータスを示すPNP出力を備えています。これらの追加機能により、ECPはプログラマブルロジックコントローラ(PLC)と緊密に連携して、オン/オフ制御、監視、およびリセットが可能になります。
図1: E-T-AのESX10-Tシリーズ回路ブレーカの写真。正常状態を示す緑色LEDが点灯しています。
技術的なヒント: 技術的には、このデバイスは電子回路保護装置(ECP)ですが、一般的には電子回路ブレーカ(ECB:Electronic Circuit Breaker)として認識されています。
これらのデバイスは時に、ソリッドステート過電流スイッチと呼ばれることもあります。これは、UL E322549リスティングで、NKCRカテゴリにこのデバイスが掲載されていることを考慮すると当てはまります。
電子回路保護装置の利点は何ですか?
ECPは、リモートステータス監視および制御とともに、制御された電流制限による迅速な応答を提供します。これにより、PLCベースのシステムとの緊密な統合が可能になります。
(制御された)定電流の利点
ECPは、ソリッドステート(ほとんどの場合MOSFET)のパス素子を備えていることを思い出してください。このパワー半導体と電子制御回路は、出力電流を制限するために動作します。例えて言えば、ECPベースのシステムは、ベンチ電源とみなすことができます。
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システムは、ほとんどの場合、定電圧(CV)モードで動作します。
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電流が「トリップ」ポイントに達すると、システムは定電流(CC)モードに移行します。
電源装置とは異なり、ECPは時計のようなメカニズムを備えており、過負荷状態にある時間を計測します。指定された時間が経過すると、ECPはフォールト状態に切り替わります。
ECPトリップ曲線を理解する
ECPシステムのCV(定電圧)モードおよびCC(定電流)モードは、図2(左)に示すトリップ曲線に反映されています。このECPは、公称電流定格の1.8倍(ブレーカとしては 0.9A)に電流が制限されていることにご注目ください。パス素子は直線領域で動作するため、これはまさにCCモードです。
反例として、E-T-AのType 2210-T2などの従来のエレクトロメカニカル回路ブレーカの曲線を考えてみましょう。図2(右)の赤丸で囲んだ部分は、短時間、制御されていない一時的な電流が流れていることを示しています。これは、ブレーカの電流検出ソレノイドが作動するまでの時間を反映しています。ECP(左)には、この制御されていない大電流プラトーは見られません。その代わりに、パス素子および関連電子回路が、電流をブレーカの公称電流定格の1.8倍に抑制しています。
図2: 電子式および熱磁気式回路ブレーカのトリップ曲線の比較
技術的なヒント: パス素子は、リニア領域で動作するときに大量の熱を放散します。過電流の持続時間が短いことで過熱を防ぎます。ただし、データシートの仕様を遵守し、ECPをディレーティングする必要があります。
注: 対流のない状態で並べて取り付けた場合、熱の影響により、デバイスは定格電流の最大80%までしか連続的に流すことができません(100%オンデューティ)。
ECPのリモートコントロールとリセット機能の利点
この回路ブレーカは、リモートのオン/オフ制御機能を備えています。操作(ターンオン)するには、図3および図4に示すように、端子21に24V DCを印加する必要があります。さまざまな電源オプションが利用できます。これは、ブレーカのPLC制御を学ぶ最適な機会です。このアプリケーションでは、ECPは過電流保護装置とSPSTコンタクタ(リレー)の2つの役割を果たします。
ECPは、リモートコントロールラインを介してリセットされる場合がありますのでご注意ください。ラインをローレベルにしてから24V DCを再投入すると、ECPがリセットされます。
図3: E-T-AのESX10-T ECPの側面
図4: E-T-AのESX10-T ECPの上面
ECPヘルスモニタリングの利点
ECPの健全性は、図1に示すように、多色LEDで目立つように表示されます。
- 緑 = オンおよび正常動作
- 橙 = 過負荷
- 赤 = トリップまたはターンオフ
健全性は出力ピン23にも反映されます。これはPNP出力で、ECPの緑色にはアクティブハイ信号が割り当てられています。これにより、PLCとの緊密な結合が再び容易になります。PLCはこのラインを監視して、故障を検出することができます。その後、オペレーターに警告を発したり、バックアップシステムを作動させたり、整然としたシャットダウンを実行したりといった適切な措置を講じることができます。
強化されたECPとPLCの結合の利点
このECPでは紹介されていませんが、E-T-Aは高度なモニタリング機能を提供しています。同社の最上位機種は、ModbusおよびIO-Linkによるネットワーク機能を備えています。これらのデバイスは、PLCがリアルタイムの電流、システム電圧、最小電流、最大電流、ピーク電流などのパラメータを監視することを可能にします。これらのデバイスは、より大規模なSCADAシステムに適切に統合されている場合、技術者に貴重なトラブルシューティング情報を提供します。
パネルサイズの利点
このECPは、同シリーズの他の製品と並べて使用できるように設計されています。これにより、コンパクトなDINレール省スペース構造を実現しています。図1および4では、ECPにつながる配線数を削減するバスバー用スロットを確認できます。
おわりに
この技術概要では、代表的なE-T-Aのデバイスを例に、ECPについて紹介しました。リモートコントロールおよびヘルスステータスにより、PLCとの緊密な統合が可能になります。ModbusおよびIO-Linkによる高度なネットワーク機能およびモニタリング機能に移行することで、パフォーマンスを向上させることができます。
いずれの場合も、パネル設計者は、制御パネルに適切な機能と統合レベルに合った製品を選択する必要があります。
皆様からのご意見をお待ちしております。24V DCの産業用制御電源および配電システムの強化に、ECPをどのように活用されていますか?
ご健闘をお祈りします。
APDahlen
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著者について
Aaron Dahlen氏、LCDR USCG(退役)は、DigiKeyでアプリケーションエンジニアを務めています。彼は、技術者およびエンジニアとしての27年間の軍役を通じて構築されたユニークなエレクトロニクスおよびオートメーションのベースを持っており、これは12年間教壇に立ったことによってさらに強化されました(経験と知識の融合)。ミネソタ州立大学Mankato校でMSEEの学位を取得したDahlen氏は、ABET認定EEプログラムで教鞭をとり、EETプログラムのプログラムコーディネーターを務め、軍の電子技術者にコンポーネントレベルの修理を教えてきました。彼はミネソタ州北部の自宅に戻り、このような記事のリサーチや執筆を楽しんでいます。