APDahlen Applications Engineer
この資料は、ヒューズに関連する限流波高値に関するよくある質問(FAQ)について説明します。産業用制御および自動化システムに重点を置き、さらにUL 508A規格に重点を置いています。
限流波高値とは何でしょうか?
限流波高値とは、故障を遮断する過程でヒューズまたは回路ブレーカを流れる最大電流のことです。図1は、LittlefuseのFLSR030.TのクラスRK5カートリッジヒューズを使用した代表的な例です。
注意: この記事は、大電力電子システムに関連する安全基準について説明しています。本資料は慎重に作成されていますが、意図しない誤りや規格の誤った解釈が含まれている可能性があります。正式なガイダンスについては、DigiKeyの利用規約を参照してください。説明および事実の内容を改善するため、ご意見をお寄せいただければ幸いです。
図1: 代表的なLittlefuseのRK5ヒューズは、UL 508A SB4.4に準拠した11kAの限流波高値を有しています。
技術的なヒント: UL 508A包括規格表SB4.2は、ヒューズのクラスCC、CF、G、J、CF、L、RK1、RK5、およびTについて、保守的な限流波高値定格を規定しています。この表のデータは、メーカーのデータと異なる場合があります。メーカーが示す試験結果は、図1に示すように、通常はより優れた値となってます。例えば、Littlefuseは定格を4.3kAと定めていますが、ULは11kAと記載しています。パネルショップのメーカー技術担当者(MTR:Manufacturer Technical Representatives)は、一般的に保守的なUL規格に従う必要があります。
限流波高値が重要な理由
限流波高値は、短絡電流定格(SCCR:Short Circuit Current Rating)に関係するため、産業用制御盤を設計する際に重要な考慮事項です。詳細は省略しますが、ヒューズおよび回路ブレーカは、制御盤内のコンポーネントの上流での保護を提供します。たとえば、図2に示すSchneiderのモータスターターは、SCCRに制限があります。上流の保護がない場合、故障時に損傷したり、破壊されるおそれがあります。適切に設置されたヒューズまたは回路ブレーカが、このユニットを保護します。
最大限の保護のため、上流の遮断器の限流波高値は、下流のコンポーネントの許容定格以下でなければなりません。この例では、ヒューズはコンタクタを保護する必要があり、その逆ではありません。大電力回路では、この事実は決して言い過ぎではありません。これにより、大電力による溶融やアークは、ヒューズまたは回路ブレーカの本体内に封じ込められます。これとは対照的に、保護されていないモータスターターは爆発するおそれがあります。また、限流波高値には時間的要素があることに留意してください。上流の保護装置は、故障の間、溶融物質と発熱プラズマを封じ込める必要があります。これは、保守的な値を使用して、慎重すぎるほど慎重に対応することが望ましいです。
図2: Schneiderの可逆モータスターターの写真
技術的なヒント: 限流波高値定格は、制御盤の継続的な安全性と完全性を確保するために不可欠です。継続的な保護のため、UL 508A認定の制御盤のマーキングで示されている正しいタイプのヒューズと交換してください。例えば、限流波高値が7.5kAの30AタイプのTヒューズの場合、11kAのRK5ヒューズを装着すると、制御盤の安全性が損なわれる可能性があります。技術的に言えば、不適切なヒューズは制御盤のSCCRに違反しており、この技術概要で説明されているような極端な故障条件下で爆発を引き起こす可能性があります。
回路ブレーカに大電流が流れたら何が起こるでしょうか?
回路ブレーカとヒューズは類似しています。しかし、多くの場合、規格の適合や制御盤全体のSCCRに関しては、これらは別々に扱われます。ヒューズと同様に、回路ブレーカもSCCRおよび電圧で定格が決められています。たとえば、UL 489認定の回路ブレーカは、400ボルトで7.5kAの定格である場合があります。
回路ブレーカのULリスティング認証の説明
従来の回路ブレーカと限流回路ブレーカの違いを認識しておく必要があります。
特に「限流」と明記されていない限り、ヒューズのような限流波高値は期待できません。特に明記されていない限り、SB4.3.2の変更点は回路ブレーカには適用されません。
完璧を期すために、図3に示すPhoenix Contactの回路ブレーカについて引き続き検討します。ここでも、これは限流遮断器ではないことを認識しておいてください。したがって、図1に示すヒューズとは異なる過負荷時間特性を持ちます。
技術的なヒント: 図3に示すものを含むほとんどの小型回路ブレーカは、分岐回路での電流制限動作の定格は備えていません。ブレーカのデータシート、UL Product IQを確認し、パネルショップのUL検査官と潜在的な解決策を検討してください。
図3: 重要なコンポーネントを識別するためのマーキングが施されたPhoenix Contactの回路ブレーカの分解写真
技術的なヒント: ULの見解では、図3に示すデバイスはUL 1077補助保護装置として分類されます。分岐回路の保護には使用しないでください。UL 1077保護装置とUL 489リステッド認証の回路ブレーカを混同してしまうことは、UL 508Aに関するよくある間違いです。一見、これらは類似していますが、混同すると認証の失効や、多額の費用がかかる手直し作業につながるおそれがあります。
代表的な回路ブレーカの動作
ほとんどの回路ブレーカは、接点ができるだけ早く動くようにスプリング装填式になっています。図3に示すPhoenix Contactの回路ブレーカは、ブレーカの動作を示す代表的な例です。スプリング自体は、右上のメカニズム(黄色のドット)の下に隠れています。
この回路ブレーカは、電磁式と熱式の両方のトリップメカニズムを備えています。赤いドットのソレノイドのプランジャが、機械式のスプリング装填トリップメカニズムを解放します。緑色のドットのヒータは、曲がるバイメタルストリップに巻かれており、曲がることでトリップメカニズムを解放します。ソレノイドは高速の反射メカニズムですが、熱素子は低速のメカニズムと考えることができます。大電流の故障状態では、ヒータの固有の時定数が反応する前に、ソレノイドによって回路ブレーカがトリップします。
迅速なアークの消弧能力を妨げる電気アーク
ヒューズは、故障回路を遮断する際に溶断し、アークを発生します。これは、モータなどの誘導性負荷で特に顕著であり、アークを助長して状況をさらに悪化させます。回路ブレーカは、接点を閉位置から開位置に迅速に移動(スナップ)するように設計されています。
回路の遮断速度と、それに続くアークの消弧速度によって、時間-電流応答特性が決まります。
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ヒューズ: ヒューズエレメントがまず溶融し、その後アークが消弧します。
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回路ブレーカ: スプリング装填メカニズムがトリップし、その後アークを消弧させます。
ここでの目的として、故障遮断メカニズムはデバイスごとに異なることを認識しています。また、TタイプとRK5などの時間遅延などのヒューズクラスによっても複雑になります。回路ブレーカの設計も、時間-電流特性に大きな影響を与える可能性があります。最後に、電圧が上昇するにつれてアークを消弧することがますます困難になることを認識しています。これらの理由から、UL 508 A規格が制定され、各種類の故障電流遮断器ごとに詳細に規定された条項が設けられています。
結論として、回路ブレーカに設置されている大きなアークシュート(赤い稲妻マーク)に注目してください。このアークシュートは、アークを捕捉する役割を担っています。アークを捕捉すると、それを小さな断片に分割してアークシュート全体に分散させます。これにより、エネルギーは重い金属板に放散され、アークが冷却されます。アークシュートのサイズと重量は、故障時に放散されるエネルギーの量に依存します。
おわりに
UL 508A規格を学べば学ぶほど、制御盤設計の驚くべき複雑さに気づかされます。制御盤の安全な製造と設置を確保するため、技術要件を徹底的に検証し続けるメーカー技術担当者(MTR:Manufacturer Technical Representatives)とUL検査官の皆さんに、心から敬意を表します。
ご健闘をお祈りします。
APDahlen
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著者について
Aaron Dahlen氏、LCDR USCG(退役)は、DigiKeyでアプリケーションエンジニアを務めています。彼は、技術者およびエンジニアとしての27年間の軍役を通じて構築されたユニークなエレクトロニクスおよびオートメーションのベースを持っており、これは12年間教壇に立ったことによってさらに強化されました(経験と知識の融合)。ミネソタ州立大学Mankato校でMSEEの学位を取得したDahlen氏は、ABET認定EEプログラムで教鞭をとり、EETプログラムのプログラムコーディネーターを務め、軍の電子技術者にコンポーネントレベルの修理を教えてきました。彼はミネソタ州北部の自宅に戻り、このような記事のリサーチや執筆を楽しんでいます。