シンプルなガジェットがより良い回路設計をサポートする

はじめに

回路設計は、本で読むのと現実とでは大きく異なることがあるため、非常に難しいものです。フィルタや分圧回路など、多くの回路は、抵抗、インダクタ、およびコンデンサ(しばしば「RLC」と略されます)の組み合わせで作られています。これらの回路の機能は一般的な方程式を用いて表現できることが多く、簡単そうに見えますが、実際は回路設計には多くの知識が必要です。当然、回路設計作業をより効率的に完了するために、エンジニアは常に回路設計を練習し、その過程で多くの演習と修正を行う必要があります。DigiKeyのオンライン変換カリキュレータは、PCB設計やコードマークの識別に役立つだけでなく(以前の記事:PCBの初期設計と製造を容易にするために - DigiKeyのオンライン変換カリキュレータをご参照ください)、回路設計にも役立ちます。

図1:DigiKeyのオンライン変換カリキュレータ

ローパス/ハイパスフィルタカリキュレータ

パッシブフィルタは、決められた周波数より上または下の信号を減衰させるために使用されます。このパッシブフィルタカリキュレータでは、回路の構成(RC - 抵抗/コンデンサまたはRL - 抵抗/インダクタ)を選択し、値を入力して-3dBカットオフ周波数を計算することができます。部品の構成によって、ローパスフィルタまたはハイパスフィルタを作ることができます。それぞれの組み合わせタイプに対応する計算方法と回路図がカリキュレータに表示されます。各フィルタタイプの説明を表1にリストで示します。

フィルタタイプ 回路図 説明
RCローパスフィルタ image RCフィルタは最も基本的なフィルタ構成ブロックで、低電力信号
のフィルタリングによく使用されます。負荷はコンデンサと並列
なので、一般に負荷インピーダンスは高く、回路は無負荷とみな
されます。
RCハイパスフィルタ image フィルタリングに使用する抵抗とコンデンサの位置を入れ替える
ことで、ローパスフィルタをハイパスフィルタに変換することが
できます。また、それは高負荷インピーダンス回路として設定す
ることもできます。
RLローパスフィルタ image RLフィルタはもう1つの1次フィルタの組み合わせです。インダク
タンスが含まれるため、位相シフトが発生します。一般にRFアン
プ用のDC電源として使用され、ここでインダクタはDCバイアス
電流を通過させるとともに、RFが電源に戻るのを防ぐために使用
されます。
RLハイパスフィルタ image フィルタリングに使用する抵抗とインダクタの位置を入れ替えることで、ローパスフィルタをハイパスフィルタに変換することができます。

ADIのPulSAR® ADCシリーズ AD7980 はアンチエイリアシングフィルタを使用します。これはアプリケーション回路でADCの前に配置された20Ωの抵抗と2.7nFのコンデンサで構成されます。理想的なアンチエイリアシングフィルタは、通過帯域でユニティゲイン(ゲイン=1)、ゲインのばらつきがない、および回路が単純であるとい う特徴があるので、RCフィルタは良い選択です。図2は AD7980 のアプリケーション回路図です。

図2:AP7980アプリケーション回路(出典: AD7980 データシート、ADI)

このフィルタの-3dBカットオフ周波数を調べるには、ツールで「ローパスフィルタ」と「RC - 抵抗器 & コンデンサ」を選択し、R = 20ΩとC = 2.7nFを入力します。その結果、-3dBカットオフ周波数の2.9473MHzが表示されます。

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図3:「ローパス/ハイパスフィルタカリキュレータ」の計算結果表示

電圧デバイダカリキュレータ

多くのエンジニアにとって、電圧デバイダ(分圧回路)は本の中で勉強する回路に過ぎません。彼らは実際のアプリケーションで使用されることはほとんどないと感じています。上記のフィルタと電圧デバイダを比べて、多くのエンジニアはフィルタが回路において極めて重要であり、これらは2つの別々の回路設計であると考え、そのため分圧回路の原理は無視されます。しかし、よく分析すると、(RC回路を例にとって)フィルタは抵抗器の抵抗値(R)とコンデンサのリアクタンス1/2πfCで行う電圧デバイダのように動作します。

実際、電圧デバイダは現実の回路で多くの用途があり、その応用分野も非常に広範囲です。例えば、ADCのロジックレベル変換、センシングシステムの環境測定および測定器は、すべて電圧デバイダを応用した技術または概念です。したがって、賢明なエンジニアは、当社の電圧デバイダツールに大きな有用性を見出すでしょう。

図4:「電圧デバイダカリキュレータ」の入力インターフェース

分圧回路の典型的なアプリケーションの1つは、保護素子の入力フロントエンドに分圧回路を追加することです。分圧比は回路の絶縁素子の許容入力範囲を調整するために使用されます。図5はBroadcomACPL-C87 を回路絶縁部品として使用したものです。入力端子は分圧回路から設定する必要があり、電圧センサとして使用し、電圧比を利用して光発生を制御し、光アイソレーションアンプを形成します。 ACPL-C87 の入力インピーダンスは非常に高いのですが、高精度の計測器用途で使用する場合、この許容誤差を無視することはできません。 図5では、R1/R2電圧デバイダにおいて、R2とRin(ACPL-C87xの入力抵抗)もシャント(並列)とみなされるため、さらに測定誤差が生じます。このツールを使えば、その負荷での誤差の値がすぐに得られるので、この誤差を考慮して回路を変更したり、抵抗値を調整したりすることができます。

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図5:ACPL-C87X入力段の簡略回路図
(出典: ACPL-C87B、ACPL-C87A、ACPL-C870データシート、Broadcom)

R1 = 598kΩ、R2 = 2kΩ、入力インピーダンス = 1000MΩ@2Vの値は、このデバイスのデータシートからアプリケーション回路に用意されたものです。計算結果を図6に示します。

図6:「電圧デバイダカリキュレータ」の計算結果表示

並列および直列抵抗カリキュレータ

回路設計では、同じ種類の部品を並列および直列で使用することは非常に一般的です。例えば、前述の分圧回路は抵抗の直列接続であり、DACでは抵抗の並列接続です。実際、並列接続や直列接続の用途は、LEDやバッテリなどの非受動部品にも及んでおり、これらの部品の並列接続や直列接続の設計には、回路によっては部品の内部抵抗を特別に考慮する必要があります。計算後に部品の値を調整したり、回路を修正したりする必要がある場合があるため、このツールには時間のかかる再設計を削減し、設計の効率が向上するというメリットがあります。

図7:「並列および直列抵抗カリキュレータ」の入力インターフェース

ここでは、直列抵抗と並列抵抗の合計抵抗値を計算する方法を説明します。1000Ω、470Ω、および680Ωの3つの抵抗から始めることにします。これらを並列に接続すると、ツールに入力された抵抗値により217.4741Ωという結果になります。図8にこの結果を示します。

図8:並列抵抗オプションの計算結果表示

これらが直列であれば、合計抵抗値は2150Ωになります。図9にその結果を示します。

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図9:直列抵抗オプションの計算結果表示

まとめ

良い回路を設計するためには、エンジニアは分析、研究、および実践が必要です。様々な分野で要求される回路や部品が異なっていても、また製品の専門分野が何であっても、いくつかの基本的かつ実用的な回路は避けて通ることはできません。この記事ではローパス/ハイパスフィルタカリキュレータ、電圧デバイダカリキュレータ、そして並列および直列抵抗カリキュレータの3つの実用的で人気のあるオンラインツールを紹介しました。こういったガジェットを上手に活用すれば、とても助かるでしょう!

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周波数フィルタの説明
バッテリーの直列接続と並列接続の概説
オペアンプと分圧器アプリケーションの抵抗ペアの選択方法
DACのバッファ付き出力とバッファなし出力




オリジナル・ソース(English)