オシロスコープのプローブ補正


APDahlen Applications Engineer

プローブ補正とは?

オシロスコープのプローブ補正は、個々のプローブを個々のオシロスコープのチャンネルに適合するように調整することです。補正プロセスには、矩形波信号発生器、プローブ、オシロスコープ、および調整用のツールが必要です。このプロセスでは、技術者はオシロスコープで矩形波の応答波形をモニタしながら、プローブのトリマコンデンサを調整して、歪みを最小限に抑える必要があります。図1にトリマコンデンサを示し、調整結果を動画1に示します。

この技術概要では、Digilent Analog Discovery Pro (ADP2230)Analog Discovery 3で補正プロセスを実際に行う方法を説明します。一般にこのプロセスは、すべてのオシロスコープに適用できます。しかしながら、従来のオシロスコープに搭載され、前面に出力端子があるプローブ補正信号発生器の代わりに、Discoveryの信号発生器を使用することに重点が置かれています。ファンクションジェネレータやオシロスコープの基本的な使い方や設定など、Digilent製品のある程度の使用経験があることを前提としています。

図1: トリマコンデンサの調整によりDigilent Analog Discovery Pro(ADP2230)のプローブ補正を行います。プローブの切り換えスイッチは10x(10倍)に設定されていることに注意してください。

動画1: プローブを補正しているときの画面キャプチャ。Digilent Waveformオシロスコープの波形は上部フレームに、また1kHzの矩形波発生器の波形は下部に表示されています。

技術的なヒント: 多くのオシロスコープのプローブには、図1に示すような1X(1倍)と10X(10倍)の切り替えスイッチが付いています。補正手順は10Xモードに適用できますが、より低いインピーダンスの1Xモードには適用できません。よくある間違いは、プローブが1Xの位置にあるとき、トリマコンデンサを無闇に動かし、不適切な調整をすることです。

手順

補正プロセスは、以下の簡単なステップで進めます。

  1. プローブを10Xに設定します。これは、それぞれADP2230とAD3の図1と図2に明示されています。

  2. 図1と図2に示すように、プローブを波形発生器に物理的に接続します。バナナコネクタ - BNCバインディングポストの変換アダプタを使用しました。この記事を参照してください。

  3. 1Vの矩形波を生成するようにWaveforms信号発生器を設定します。

  4. Waveformsオシロスコープを設定して、波形をモニタします。図3は、補正が不十分なプローブによる波形です。

  5. 矩形波の歪みが最小になるようにトリマコンデンサを調整します。図4と動画1で、適切に補正されたプローブによる波形を示します。

  6. プローブは決められた接続場所に固定してください。例えば、補正がチャンネル間で異なることがあるため、絶対にプローブを入れ替えないでください。補正調整を何度も繰り返すと、プローブの寿命が短くなることがあります。

技術的なヒント: 10Xという規定を何度も言及しているのは、今もなお起こる重大なユーザーエラーの原因だからです。ことわざにもあるように、プローブが間違って設定されるたびに5セントをもらったら、私も私の生徒たちも億万長者になっていたでしょう。私も私の生徒たちもそのくらいたくさん間違ってきました。この問題は非常に深刻で、一部の計測器メーカーはスイッチそのものを完全に廃止しました。新しいプローブを購入する際、これは考慮すべき点です。また、オシロスコープの中には、プローブの倍率を検出して自動的に対応するように設計されているものもあります。

図2: Digilent Analog Discovery 3プローブの補正セットアップ。プローブは10Xに設定されていることにご注意ください。また、ブレークアウトボードとプローブはAD3 Pro Bundleの一部として提供されていることにもご注意ください。

図3: 補正が不十分なプローブの応答。遷移直後の矩形波の歪みに注目してください。

図4: 適切に補正されたプローブの応答。矩形波に歪みは観られません。

技術的なヒント: トリマコンデンサはデリケートで、簡単に破損します。プローブを長持ちさせるには、特定のプローブを特定のオシロスコープのチャンネルに接続し固定することにより、補正の調整回数を制限することです。プローブが固定されていれば、定期的な確認は必要ですが、補正の調整をする必要はほとんどありません。

おわりに

オシロスコープのプローブ補正は、特定のプローブを特定のオシロスコープチャンネルの特性に適合させるために必要です。適切に補正された場合、10Xプローブは可能な限り信号歪みを小さくすることができます。この手順はすべてのオシロスコープに適用できますが、Digilent Discovery製品との唯一の違いは、内蔵ファンクションジェネレータを矩形波の基準として使用する必要があることです。WaveFormsソフトウェアを使えば、これはとても簡単です。ワークスペースを「compensation(補正)」のような覚えやすい名前で保存しておけば、2回目以降はさらに簡単になります。

Digilentの測定器について何かご質問がありますか?その場合は、コメント欄にご記入ください。

10倍という条件は言いましたっけ?

スイッチの位置を確認してください!

ご健闘をお祈りします。

APDahlen

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著者について

Aaron Dahlen氏、LCDR USCG(退役)は、DigiKeyでアプリケーションエンジニアを務めています。彼は、技術者およびエンジニアとしての27年間の軍役を通じて構築されたユニークなエレクトロニクスおよびオートメーションのベースを持っており、これは12年間教壇に立ったことによってさらに強化されました(経験と知識の融合)。ミネソタ州立大学Mankato校でMSEEの学位を取得したDahlen氏は、ABET認定EEプログラムで教鞭をとり、EETプログラムのプログラムコーディネーターを務め、軍の電子技術者にコンポーネントレベルの修理を教えてきました。彼はミネソタ州北部の自宅に戻り、このような記事のリサーチや執筆を楽しんでいます。




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