モータスターターのソリッドステート過負荷リレーとは何ですか?


APDahlen Applications Engineer

モータスターターは、ヘビーデューティのコンタクタ(通常は三相)と過負荷リレーという2つの重要な部品で構成されています。

  • コンタクタは、モータを確実にオン/オフするための堅牢な接点を備えた多極リレーのようなものです。これらの接点は、モータの起動時のサージ電流に耐えることができます。また、高電圧AC環境での電気接続を切断することもできます。

  • 過負荷リレーは、コンタクタの出力(モータ側)に接続されています。過負荷リレーは、適切に選択および調整されると、モータの状態を反映します。モータが過負荷になった場合、または位相が不平衡になった場合、過負荷リレーがトリップし、モータを保護します。

図1に示すSiemensの14EUE32AGユニットは、代表的なモータスターターです。上部はヘビーデューティのコンタクタで、その下にソリッドステートの過負荷リレーがあります。

図1: ソリッドステート過負荷リレーを搭載したSiemensのハーフサイズモータスターターの画像

コンタクタとモータスターターの関係は?

過負荷リレーは、モータの異常な運転状態が検出されると作動(トリップ)します。図1では、通常閉じている95と96の接点が開きます。赤線がノーマリクローズ接点(95)からコンタクタコイルに接続されていることを確認してください。

これは、モータスターターに関連する最も重要な1本の配線であると言えます

コンタクタのコイルは過負荷リレーと直列に配線されていることにご留意ください。その結果、過負荷トリップが発生すると、コンタクタを介してモータが即座に停止(オフ)します。これは、外部制御ロジックとは独立して動作するフェイルセーフ接続です。

技術的なヒント: プライマリコンタクタの補助接点をモニタするようにPLCを構成できます。PLCは、過負荷リレーのノーマリオープン(97と98)接点をモニタすることもできます。これにより、PLCはコンタクタの異常動作を検出できます。また、PLCがモータの過負荷状態を識別することもできます。

参考までに、プライマリコンタクタの一般的な故障モードは、閉じない、開かない(接点が溶接されている)、閉じろと指令され ているのに一瞬開く(グリッチ)、および通電していないときに強制 されるの4つです。システムの複雑さによっては、各異常を特定してログに記録することをお勧めします。その他の情報については、各故障モードを特定するためのPLCテクニックについて説明したこちらの短い記事を参照してください。

モータスターターのソリッドステート過負荷リレーとは?

コンタクタと過負荷リレーの関係を理解したところで、ソリッドステート過負荷リレーの動作について説明します。

従来のモータ過負荷リレー

  • 従来のモータ過負荷リレー: ソリッドステート式リレーを理解するには、まずSchneiderのDPER06などの従来の過負荷リレーについて調べる必要があります。 こちらの記事で説明したように、従来の過負荷リレーにはバイメタルストリップの上にヒータが設置されています。モータの電流が増加すると、ヒータが発熱してバイメタルストリップが曲がり、最終的に過負荷リレーの機械式トリップ機構に押し付けられます。

図2: 従来の熱動型過負荷リレーの内部構造。ヒータは、バイメタルストリップの上に巻かれ、絶縁された平らなワイヤ(平角線)で構成されています。

技術的なヒント: 従来の過負荷リレーは、冷却に時間がかかります。これは、モータの冷却にも時間がかかるため、良いことです。過熱によりモータのコイルが損傷するおそれがありますので、急がないでください。

起動と停止のサイクルを繰り返すと、熱が蓄積して過負荷リレーが作動する可能性があります。モータが冷却するには時間がかかりますので、急がないでください。誤作動を防ぐため、必ずオペレータにトレーニングを行ってください。

ソリッドステートのモータ過負荷リレー

ソリッドステートリレーは、この機械的なメカニズムをエレクトロニクスに置き換え、追加の(スマートな)保護機能を有します。たとえば、Siemensのカタログでは、このESP200過負荷リレーについて次のように説明しています。

  • 真の位相損失保護、3秒以内にトリップ

  • 位相不平衡保護により、モータの非効率的な運転を防止

  • 地絡トリップ(選択した場合)

  • トリップクラスは5、10、20、あるいは30から選択可能

  • リセットトリップは、自動/手動の再起動から選択可能

  • 選択と使用が簡単で、DIPスイッチで選択可能

  • 過負荷リレーは自己給電式で、外部電源は不要

ソリッドステート過負荷リレーはどのように構成されていますか?

従来の過負荷リレーと同様に、ソリッドステートリレーにもモータの全負荷電流調節機能があります。 図3に示すSiemensのESP200(3UB81334HW2)は、50~200Aの範囲で調整できます。

このソリッドステートリレーには、フロントパネルのDIPスイッチで制御できる以下のような追加設定オプションがあります。

  • トリップクラス(TRIP CLASS)は、リレーがトリップする速度を決定します。トリップ設定が5の場合は速断形ヒューズのように動作し、30の場合はタイムラグ形ヒューズのように動作します。これは、コンベアや無負荷のエアコンプレッサなど、高負荷を始動するモータにとって重要な考慮事項です。

  • 位相不平衡(PHASE UNBAL)の設定をONにすることで、モータの過熱を防止します。小さな相電圧の不平衡でも、大きな電流の不平衡を引き起こすことがあるので注意してください。これにより三相モータの巻線が焼損する可能性があります。

  • 位相損失(PHASE LOSS)の設定は慎重に検討する必要があります。私は電気技師ではありませんが、単相化によってモータが破壊されるのを何度も見てきました。破壊された時は、電気技師の大きな罵声がともなうので、見逃すことはないでしょう。

  • このリレーには、手動(MAN RESET)または自動リセット(Auto RESET)の設定があります。個人的には、特定のフォルト条件によってシステムが無期限に、あるいは少なくともモータが破壊されるまで、どちらが先になるかわかりませんがオンとオフを繰り返す可能性があるため、規律のない自動リセットを使用するのはためらわれます。その代わりに、PLCを使用してシステムを監視し、スマートな故障検出(ロックアウト)メカニズムを組み込むことをお勧めします。例えば、1日に3回過負荷になると、ハードシャットダウンを引き起こします(3ストライクでアウト)。別の例としては、10分間に2回の過負荷でも、同様です。

地絡(GROUND FAULT)検出は非接地システムにも有効です。Siemensはこれを「湿気、結露、絶縁体の損傷、あるいはその他の理由による高抵抗短絡や地絡に対するモータの最適なシステム保護」と説明しています。

図3: SiemensのESP200ソリッドステートのモータ過負荷リレーのクローズアップ画像

技術的なヒント: 私は以前、POLAR STAR、HEALY、EAGLEを含む沿岸警備隊の船舶の船員でした。船舶用アプリケーションには通常、接地されていない三相システムが採用されています。最初の地絡では何も起こりませんでした。ブレーカをトリップさせるのは、2回目の短絡(相間または各相とアース間)でした。

地絡の検出と修復は、配電の完全性の重要な部分です。電線内の電流をあるべき場所に保ちましょう。

おわりに

モータスターターは、産業用オートメーションの基盤となるコンポーネントです。ソリッドステート過負荷リレーは、高価なモータへの投資に対して次世代レベルの保護を提供します。

この重要な技術について、あなたの経験をお聞かせください。

  • 修理技術者へのアドバイスをお願いします。

  • PLCプログラマへのアドバイスをお願いします。

ご健闘をお祈りします。

APDahlen

関連情報

以下のリンクから、関連する有用な情報をご覧ください。

著者について

Aaron Dahlen氏、LCDR USCG(退役)は、DigiKeyでアプリケーションエンジニアを務めています。彼は、技術者およびエンジニアとしての27年間の軍役を通じて構築されたユニークなエレクトロニクスおよびオートメーションのベースを持っており、これは12年間教壇に立ったことによってさらに強化されました(経験と知識の融合)。ミネソタ州立大学Mankato校でMSEEの学位を取得したDahlen氏は、ABET認定EEプログラムで教鞭をとり、EETプログラムのプログラムコーディネーターを務め、軍の電子技術者にコンポーネントレベルの修理を教えてきました。彼はミネソタ州北部の自宅に戻り、このような記事のリサーチや執筆を楽しんでいます。




オリジナル・ソース(English)