セラミックコンデンサの温度係数を理解する

セラミックコンデンサでよくある質問は、温度係数の数字/文字はどういう意味か?です。こういった数値は一般的には温度範囲とその特定の範囲での静電容量の変動に分けられます。まず必要なのは、見ている標準やクラスが何かを理解することです。これらは国際電気標準会議(IEC)規格と電子工業会(EIA)規格に分かれています。

これは、さまざまなクラスと定義に関するチャートです。

IEC/EN 603841 &
IEC/EN 60384-8/9/21/22
EIA RS-198
Class 1 セラミックコンデンサは、共振回路への応用で高い安定性と低損失を提供する Class Iセラミックコンデンサは、共振回路への応用で高い安定性と低損失を提供する
Class 2セラミックコンデンサは、平滑、バイパス、カップリング、およびデカップリングへの応用で高い体積効率を提供する Class II (又はクラス2と表記) セラミックコンデンサは、平滑、バイパス、カップリング、およびデカップリングへの応用で静電容量の変化が-15%から+15%よりも少なく、温度範囲が、-55℃から+125℃よりも広い範囲で、高い体積効率を提供する
Class 3 セラミックコンデンサは、もはや標準化されていないバリア層コンデンサである Class III (又はクラス3と表記) セラミックコンデンサは、EIAクラスⅡよりも高い体積効率と、10℃~55℃のより狭い温度範囲での静電容量の一般的な変化(-22%~+56%)を提供する。EIAクラス2-Y5U/Y5V or Z5U/Z5Vで置き換えることができる。
Class IV (又はクラス4と表記) セラミックコンデンサは、もはや標準化されていないバリア層コンデンサである

クラス定義を理解すると、温度係数がどのように分解されるかを確認できます。

EIA-RS-198によるClass 1

温度係数α
10-6 /K 文字コード
温度係数の乗数
数字コード
温度係数の許容差
文字コード
C: 0.0 0: -1 G: ± 30
B: 0.3 1: -10 H ± 60
L: 0.8 2: −100 J: ±120
A: 0.9 3: −1000 K: ±250
M: 1.0 4: +1 L: ±500
P: 1.5 6: +10 M: ±1000
R: 2.2 7: +100 N: ±2500
S: 3.3 8: +1000
T: 4.7
V: 5.6
U: 7.5

IEC/EN 60384-8/21 , EIA-RS-198 によるClass 1

セラミックの名称 温度係数 α10-6 /K αの許容差 10-6 /K サブクラス IEC/ EN 文字コード EIA 文字コード
P100 100 ±30 1B AG M7G
NP0 0 ±30 1B CG C0G
N33 −33 ±30 1B HG H2G
N75 −75 ±30 1B LG L2G
N150 −150 ±60 1B PH P2H
N220 −220 ±60 1B RH R2H
N330 −330 ±60 1B SH S2H
N470 −470 ±60 1B TH T2H
N750 −750 ±120 1B UJ U2J
N1000 −1000 ±250 1F QK Q3K
N1500 −1500 ±250 1F VK P3K

これらのチャートを見ると、EIAコード"C0G"で"NP0"のコンデンサは0ドリフトで、許容差が±30 ppm/Kになるのに対し、コード"P3K"で"N500"のコンデンサは−1500 ppm/Kのドリフトで、許容値は最大±250 ppm/°C となります。

IEC と EIA のコンデンサ・コードは産業用のコンデンサ・コードで、軍用のコンデンサ・コードと同じではないことに注意してください。

EIA RS-198 によるClass 2

低温を表す文字コード 高温を表す数字コード 温度範囲にわたる静電容量の変化を表す
文字コード
X = −55 °C (−67 °F) 4 = +65 °C (+149 °F) P = ±10%
Y = −30 °C (−22 °F) 5 = +85 °C (+185 °F) R = ±15%
Z = +10 °C (+50 °F) 6 = +105 °C (+221 °F) S = ±22%
7 = +125 °C (+257 °F) T = +22/−33%
8 = +150 °C (+302 °F) U = +22/−56%
9 = +200 °C (+392 °F) V = +22/−82%

例えば、Z5Uコンデンサは+10℃から +85℃ の範囲で動作しますが、その間、静電容量は最大+22%から -56%まで変動します。X7Rコンデンサでは-55℃から +125℃ の範囲で動作しますが、その間、静電容量は最大±15%変動します。

これは、一般的なクラス2の構成です。

  • X8R (−55/+150, ΔC/C0 = ±15%),
  • X7R (−55/+125 °C, ΔC/C0 = ±15%),
  • X6R (−55/+105 °C, ΔC/C0 = ±15%),
  • X5R (−55/+85 °C, ΔC/C0 = ±15%),
  • X7S (−55/+125, ΔC/C0 = ±22%),
  • Z5U (+10/+85 °C, ΔC/C0 = +22/−56%),
  • Y5V (−30/+85 °C, ΔC/C0 = +22/−82%),

IEC/EN 60384-9/22によるClass 2

静電容量変化を表すコードe 静電容量変化の最大値
ΔC/C0 at U = 0
静電容量変化の最大値
change
ΔC/C0 at U = UN
温度範囲を表すコード 温度範囲
2B ±10% +10/−15% 1 −55 … +125 °C
2C ±20% +20/−30% 2 −55 … +85 °C
2D +20/−30% +20/−40% 3 −40 … +85 °C
2E +22/−56% +22/−70% 4 −25 … +85 °C
2F +30/−80% +30/−90% 5 (-10 … +70) °C
2R ±15% 6 +10 … +85 °C
2X ±15% +15/−25% - -

場合によってはEIAコードをIEC/ENコードに変換することができます。わずかな変動があるかもしれませんが、通常は許容できます。

  • X7Rは2X1と相関があります。
  • Z5Uは2E6と相関があります。
  • Y5Vは2F4と類似しており、逸脱点:ΔC/C0 = +30/−82%の代わりに+30/−80%になります。
  • X75は2C1と類似しており、逸脱点:ΔC/C0 = ±22%の代わりに±20%になります。
  • X8RはIEC/ENコードには対応しません。






オリジナル・ソース(英語)

表をどうもありがとう!

2点追加させてください。

  1. 「係数」という用語はふつう、ある種線形的な関係を意味するため、温度「特性」と呼ぶほうがおそらく正しいでしょう。クラス1のデバイス以外では、静電容量と温度の関係はそれほど直線的ではありません。

  1. 「最大の静電容量変化」について言えば、これは非常に特定のテスト条件下で測定された「温度のみ」の影響を指すことに注意してください。他の要因、特にDCバイアス効果とエージング特性による変化は、静電容量に大きな変化を引き起こす可能性があります。

注)「エージング」は通常の経年変化とややニュアンスが異なりますので、経年変化でもよいのですが、注意喚起のために「エージング特性による変化」としました。これは、セラミックコンデンサ特有のもので、1,2年で大きく静電容量が減少します。






オリジナル・ソース(英語)

ヨッシーさんの質問:

私の理解では、TCC(静電容量温度係数)は許容差から独立しています。つまり、最悪の場合の回路解析をするときに、TCCに許容誤差を追加する必要があります。これで正しいでしょうか?

マットさんの回答:

それは正しいでしょう。TCCはコンデンサの材料の関数です。許容誤差は、その部品の公称/理想的な標準と比較した製造で発生する不正確さの関数です。その2つは回路に同様の影響を与えますが、別々に説明しなければならない個別の影響です。