PNPトランジスタとNPNトランジスタを交換できますか?


APDahlen Applications Engineer

簡潔な回答

一言で言うと、ノーです。

NPNトランジスタとPNPトランジスタは、電流の流れが反対方向になるため、直接入れ替えることはできません。

例えば、図1に示すONSEMI BD139G(NPN)と BD140G(PNP)デバイスは類似しており、仕様もほぼ同一です。しかしながら、互いに交換はできません。

図1: BD139G(NPN)と BD140G(PNP)のコンプリメンタリトランジスタペアの写真

技術者の回答

もちろん、回路の再設計が自由にできるのであれば、NPNとPNPのトランジスタを互いに交換することは可能です。

一般化された考察

それぞれのトランジスタ回路には、以下のようないくつかの主な考慮事項があります。

  • ドライバ回路
  • 負荷の配置
  • 電源の極性
  • トランジスタのタイプ(NPNまたはPNP)

理論上、他の制約条件も変更可能であれば、技術者はトランジスタのタイプを自由に変更できます。

実際には、現実的な考慮事項が存在します。例えば、

  • ドライバの制約:NPNトランジスタはマイクロコントローラと共通のグランドを使用しているため、マイクロコントローラによる駆動が容易です。この記事では、3.3V DCのマイクロコントローラが BDX33 NPNダーリントンペアトランジスタを直接駆動する方法について説明しています。

  • 出力の制約:この記事で説明しているように、産業用負荷の駆動にはPNPトランジスタが好まれることがよくあります。

  • 電源および総コストの制約:簡素で信頼性が高く、低コストな回路設計に努めるべきです。通常、NPNトランジスタとPNPトランジスタのどちらが好まれるかは明らかです。

トランジスタに合わせて回路を選ぶのではなく、回路に合わせてトランジスタを選んでください。

しかしながら、このエンジニアリングの原則に反する実用的な理由や歴史的な理由が存在します。以下の2つの事例研究では、従来のNPNトランジスタとPNPトランジスタの配置を意図的に入れ替える例外的なケースを示しています。シクライペア(Sziklai pair)はNPN ↔ PNP置換を可能にした現代の発明であり、準コンプリメンタリペアはコンプリメンタリペアの欠如に対する歴史的な代替手段です。

シクライペアのケーススタディ

NPN/PNPトランジスタの交換で最も有名な例は、オーディオアンプに使用されるシクライペアです。

  • PNPトランジスタとNPNトランジスタの従来の位置が入れ替わります。

  • 実際には、見かけ上のトランジスタタイプを変えるには、補助的なドライバトランジスタが必要となるため、これは直接的な入れ換えではありません。フィードバック接続のドライバトランジスタにより、一方のトランジスタをもう一方のトランジスタのように見せることができるのです。

  • 作業台でブレッドボード上に構築できる例については、動画1をご覧ください。

  • シクライペアの詳細な説明は、本記事の範囲を超えています。しかしながら、現時点では、忠実度と熱的安定性の点から、従来の回路よりも優れた性能を発揮する可能性を秘めていることを認識しておきましょう。

準コンプリメンタリペアのケーススタディ

かつては、互いに相補的なNPNトランジスタとPNPトランジスタのペアが入手困難な時代がありました。一方のトランジスタは入手できても、もう一方のトランジスタは入手できない状況でした。技術者たちはこの問題を軽減するために、動画2で示されている変圧器結合や、準コンプリメンタリペアと呼ばれる手法など、さまざまな方法を採用しました。

準コンプリメンタリペアの回避策とは?

準コンプリメンタリペアとは、シクライペアの半分と考えることができます。

  • シクライペア回路では、PNPトランジスタとNPNトランジスタの両方を使用し、関連するドライバ回路によって、NPNトランジスタをPNPトランジスタのように、またその逆のように見せることを効果的に実現していることを思い出してください。

  • 準コンプリメンタリ回路は非対称構成を用いています。例えば、2つのNPNトランジスタを使用する場合があります。ただし、一方のNPNトランジスタをPNPトランジスタのように動作させるために、補助的なトランジスタが使用されます。

  • 1967年2月号の「Popular Electronics」誌に掲載されたBrute-70は、人気のアンプでした。これは図2に示すように、テクニカルシリーズSC-12マニュアルに掲載されたRCAのアプリケーションノートに基づいて設計されたものです。

動画1: アンプの出力段にシクライペアを用いた著者のブレッドボードデモ

動画2: 第1世代ゲルマニウムトランジスタを使用したトランジスタ結合方式オーディオアンプの著者による分解と分析

図2: RCAのSC-12トランジスタマニュアルの著者用コピーと「Popular Electronics」誌(1967年2月号)に掲載されたBrute-70オーディオアンプの一部回路図

おわりに

図2の色褪せたコピー回路図については、1980年代初頭に初めて電子工作に興味を持った頃から所持しています。当初より、クラシックなオーディオアンプに魅了されてきました。動画2をご覧いただければ、おそらくお分かりいただけるかと思います。

ご健闘をお祈りします。

Aaron

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著者について

Aaron Dahlen氏、LCDR USCG(退役)は、DigiKeyでアプリケーションエンジニアを務めています。彼は、技術者およびエンジニアとしての27年間の軍役を通じて構築されたユニークなエレクトロニクスおよびオートメーションのベースを持っており、これは12年間教鞭をとったことによってさらに強化されました(経験と知識の融合)。ミネソタ州立大学Mankato校でMSEEの学位を取得したDahlen氏は、ABET認定EEプログラムで教鞭をとり、EETプログラムのプログラムコーディネーターを務め、軍の電子技術者にコンポーネントレベルの修理を教えてきました。

Dahlen氏は、ミネソタ州北部の故郷に戻り、コンデンサ探しから始まった数十年にわたる旅を終えました。 彼の物語はこちらからお読みください。




オリジナル・ソース(English)