アルミ電解コンデンサについてのよくある質問


APDahlen Applications Engineer

この投稿は、アルミ電解コンデンサについての一連のよくある質問(FAQ)を掲載しています。図1に、典型的な面実装型アルミ電解コンデンサの一例を示します。

図1: 面実装型アルミ電解コンデンサの典型的な画像

もっとも重要なコンデンサのパラメータはなんでしょうか?

汎用アプリケーション向けには、コンデンサは無極性だと仮定できます。次に、DC動作電圧、静電容量、および構造(ラジアル型かアキシャル型か面実装型)を選択します。段階を踏むにつれ、温度仕様における寿命が重要になってきます。設計の最終段階では、ESR(等価直列抵抗)、インピーダンス、およびお客様のプロジェクト特有のニーズに適用できる他の仕様に着目します。

なぜ、私のコンデンサは爆発するのでしょうか?逆極性および長期保管の危険性

電解コンデンサには極性依存があります。極性は、コンデンサの電気化学のコア特性であり、1つの端子のみに高静電容量の絶縁酸化被膜を形成する能力です。

電解コンデンサを逆接続した場合、コンデンサが破壊され、周囲の回路に損傷を与えてしまう可能性があります。極端な例では、コンデンサの電解質が沸騰してしまうかもしれません。結果として生じる圧力がコンデンサの防爆弁から放出されたり、コンデンサを爆発させてしまうかもしれません。関連するトレースも蒸発してしまうかもしれません。結果として、高価な修理が必要になったり、もはや修理する価値のない装置になってしまうことがあります。ミスにより装置がスクラップに変わってしまいます。

コンデンサの損傷を防ぐには、コンデンサを注意深く実装することが必要です。データシートを参照して、コンデンサの極性を決定してください。

  • コンデンサの陰極リードはマーキングされていることが多いです。

  • 図2に示したようなラジアル型のコンデンサは、異なる長さのリードを有しており、多くの場合、短い方が陰極リードです。

  • アキシャル型のコンデンサについては、多くの場合、ケースが陰極端子となります。

図2: 陰極マーキングと短い陰極リードとを示すラジアル型のコンデンサ

技術的なヒント: コンデンサを交換するときは気を付けてください。不適切なマーキングがシルクスクリーン印刷されたプリント基板(PCB)が報告されています。古いコンデンサを取り外す前に、写真を撮っておくことをお勧めします。交換部品を元の部品と同じ方向に向けてください。

保管に関連する故障

コンデンサの過熱および爆発について、コンデンサが長期間、保管されていたことにより絶縁酸化被膜が劣化している可能性があります。本記事では、可変周波数ドライブ(VFD)に見られるリンクコンデンサに焦点を当てたケーススタディを基にして、この問題を掘り下げます。

ビンテージのオーディオアンプやギターアンプの交換用コンデンサはどのように選べばよいですか?

良いニュースは、現代のコンデンサがビンテージのコンデンサよりも物理的に小さいということです。これにより、オーディオアンプ、受信機、およびギターアンプ等のビンテージ機器の復元が簡単になります。

以下のようないくつかのパラメータを重視する必要があります。

  • DC定格電圧

  • 静電容量

  • 高さ、直径、そして最も重要なコンデンサの端子間距離を含む物理的な大きさ。言い換えれば、交換用コンデンサが、プリント基板に適合し、カバーが実装できないほど高さが大きくないことを確認してください。

以下のような動画が選択プロセスに役立つでしょう。

アルミ電解コンデンサの保存期間とは何でしょうか?どうすれば保存期間を延長できるのでしょうか?

この質問に対しては、2つの要素があります。

  • 酸化被膜の自然劣化: アルミニウム電解コンデンサの動作は、薄い酸化被膜の形成に依存しています。この被膜は、DC電圧が印加されると形成/再形成されます。コンデンサを長期間、保管すると被膜が劣化します。

  • はんだ付け性: コンデンサの端子が酸化すると、製造上の欠陥につながる可能性があります。したがって、部品の保存期間は、その部品が保管される環境条件によって決まります。安全策として、多くのサプライヤは2年の保存期間を推奨しています。メーカーのデータシートをご参照ください。こちらの記事にも興味を持たれるかもしれません。

私の機器のコンデンサの寿命はどのくらいですか?

コンデンサの寿命は動作条件や温度によって決まるので、この質問に対する明確な答えはありません。一般論として、コンデンサは、温度が10°C下がるごとに寿命が2倍になるという10°C2倍則に従います。

アルミ電解コンデンサを修復するにはどうすればよいですか?

アルミ電解コンデンサは、制御された電圧をゆっくりと印加することで修復されます。数時間にわたって処理することにより、最良の結果が得られます。推奨値については、メーカーの資料を参照してください。

簡単な手順としては、RC回路の時定数が15~60分の高抵抗値の直列抵抗を使用します。このプロセスは、可変DC電源を用いて手動で行うこともできます。時々、直列に接続された電球と可変変圧器(variac)とを用いてゆっくりと電圧を上げる人を見かけます。

アルミ電解コンデンサの不利な点は何でしょうか?

アルミ電解コンデンサを金属膜、マイカ、および油浸紙コンデンサ等の他の技術と比較することにより、この質問に対する最も良い答えが得られます。比べてみると、電解コンデンサは比較的、寿命が短く、温度に敏感であり、許容差が緩いです。しかしながら、これらの欠点にもかかわらず、アルミ電解コンデンサは安価です。そのため、アルミ電解コンデンサは、20世紀に製造されたほぼすべての電子機器に搭載されている一般的な部品です。

有極性電解コンデンサと無極性電解コンデンサとの違いは何ですか?

大半のアルミ電解コンデンサは有極性であり、逆に実装すると直ちに破損します。これは、コンデンサが単一のDC動作電圧仕様であることに反映されています。モータ始動用コンデンサ等の両極性のコンデンサには、AC動作電圧のものも含まれます。一般的な単相始動用コンデンサには、定格電圧がAC125、165、250、および330Vのものがあります。

アルミ電解コンデンサにおける漏れとは何ですか?

電解コンデンサにおける漏れには2つの意味があります。

  • 物理的な意味: 電解コンデンサは多くの場合、湿式電解液で構成されています。損傷または欠陥のあるコンデンサでは、電解液が漏れることがあります。古くて故障したコンデンサは、膨らんで電解液が漏れることがよくあります。このような状態のコンデンサは、機器への損傷を防ぐために、直ちに交換する必要があります。

  • 電気的な意味: DC電流が印加されると、漏れ電流が発生します。これは、コンデンサの端子に並列に高抵抗器が実装されたようなものです。漏れ電流のパラメータは、典型的には、静電容量、DC動作電圧、および関連する時間的な制約で規定されます。例えば、2分後の漏れが0.01CV未満、のように規定されます。詳細な情報については、データシートを参照してください。

関連情報

関連情報および役立つ情報については、以下のリンクをご参照ください。

著者について

Aaron Dahlen氏、LCDR USCG(退役)は、DigiKeyでアプリケーションエンジニアを務めています。彼は、技術者およびエンジニアとしての27年間の軍役を通じて構築されたユニークなエレクトロニクスおよびオートメーションのベースを持っており、これは12年間教壇に立ったことによってさらに強化されました(経験と知識の融合)。ミネソタ州立大学Mankato校でMSEEの学位を取得したDahlen氏は、ABET認定EEプログラムで教鞭をとり、EETプログラムのプログラムコーディネーターを務め、軍の電子技術者にコンポーネントレベルの修理を教えてきました。彼はミネソタ州北部の自宅に戻り、このような記事のリサーチや執筆を楽しんでいます。




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